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『なんとなく』

『富士山登ってみたいな〜』
多分小学生ぐらいから【なんとなく】思ってる事。
40歳を超えると【なんとなく】のやってみたいは何も実現しない事が【なんとなく】分かってきた。
現にまだ俺は富士山に登った事がない。

4月20日から4月22日の3日間、富士山の麓で過ごした。
富士山に登った訳ではない。
【ULTRA-TRAIL Mt.FUJI】という大会にスタッフとして参加する為だ。

HP見ても馴染みのない人からしたらよく分からないと思うので、簡単に説明すると【山を160km走る】大会です。
正確には『FUJI』の165kmと『KAI』の69kmの2つのレースがある。
今回はSNSの担当(写真含む)で仕事の話を頂いた。
この記事で初めましての人もいるかもしれないので書いておきます。普段は柔道整復師として大阪の整骨院に勤務していて、カメラマンじゃないし写真は好きやけどカメラを持っている訳でもない。
日常的によくスマホで写真を撮ってSNSにアップしている事からカメラマンでもない俺にこんな仕事が舞い込んできた。遊びが仕事に繋がった瞬間。

レーススタート前日の20日に会場入りし、出店ブースや受付けしに来ていたランナーのスナップなど初日から動き回った。運営本部のある場所からも富士山が見えて自然と写真を撮る枚数も増えた。

運営本部から見えた富士山

受付け終了と同時に出店ブースも閉店し、翌日のレース本番に向けて作戦会議が始まった。
160km以上を走る長い大会。撮影組は車で移動してスポットでランナーを待ち構えたりエイドへ先回りしたりする。『こんな写真がほしい』に対して場所の振り分けからタイムテーブルまでイメージしながら表を作成していく。

地図を見ながら作戦会議

この数年間は『地図』=『Googleマップ』であり、紙の地図を広げて話するだけでワクワクした。
レース当日はスタート地点のこどもの国まで車で40分かけて移動。この日から2日間はプライベートでも仲良くさせてもらっているカメラマンのJONさんと行動を共にする。

カメラマンのJONさん

会場に着くとレーススタートの2時間前にも関わらず凄い人が集まってきていた。昨日に引き続きレースに出場する人のスナップからスタート。
公式インスタのストーリーまとめでスナップした写真が見れるので是非。

スタート地点からの富士山

とにかく色んな人に声を掛けまくる。
苦手な人からしたら苦痛だろうが、自分は全く人見知りないのでここは問題なし。ただバズーカーみたいなカメラを持ったカメラマンが沢山いる中、1人スマホで写真を撮らないといけない。
いくらオフィシャルのビブスを着ていても怪しい。
そこで声の掛け方を色々試してみた。そこで1番ベストだったのが『すいません、オフィシャルのインスタなんですけどお写真いいですか?』だ。
この魔法の言葉を手にしたら鬼に金棒、時間ギリギリまで色んな人を撮らせてもらった。

スタート20分ぐらい前に先に走って撮影ポイントまで移動。【体力がある】という事も今回抜擢された理由の一つだと思っている。そこからはスマホでひたすらランナーを撮影した。
『ここら辺まで』と言われていたポイントまで移動して撮影し、また同じ道を戻る。帰り道はランナーと逆走になるので慎重に。すれ違う度に『ファイト!』と声を掛けた。
おそらく全盛期の中島みゆきより『ファイト!』と言ったと思う。笑

約160kmの道のりに【9ヶ所】エイドという休憩ポイントがある。JONさんと共にF2という2番目のポイントへ向かった。
エイドには水やコーヒーの飲み物、バナナにドーナツ、場所によっては焼きそばや豚汁などその土地の名産が食べれたりもする。場所によっては仮眠するスペースも用意されていた。
そしてエイドと同じスペースに『サポーター』のエリアがあって、奥さんや友人達がその人に合った料理や補給食、着替えを用意したり、椅子を用意してマッサージしたりする姿も見られた。
食べ物を受付けず嘔吐している人もいた。その反面、食べてすぐ走り出す人も沢山いて『この人達本当にどうかしてる』と思った。

宿に戻り仮眠し4時過ぎから行動開始。
『眠い』より『楽しい』が勝っていた。

朝5時の山中湖

ただ予定は未定、ランナーが都合よく時間通りに来る訳ではない。運営本部と連絡取り合いながら臨機応変にスケジュールを変えて行動した。
普通ならストレスになる事も『非日常感』がこんなシーンも楽しませてくれた。
そして何より【頑張って走り続けている人達】からパワーをもらっていた。
AM11:00からKAIのスタートもあるのでまた移動してスナップとスタートの写真を撮る。そしてカメラマンから届く写真をピックしてリアルタイムでSNSに投稿していく。
そしてなんとKAIのスタート前にFUJIの一位の選手が戻ってきた!寝ずに走り続けて19時間半でゴールした。
『凄い!』という感情より『信じられない』の方がしっくりくる。
会場のボルテージも上がり切ったところでKAIがスタート。KAIの選手もトップランナーはその日の夕方にゴールするらしい…。

この日大阪に戻らないといけなかったので次がラストポイント。ここでもエイドには沢山のボランティアの人達がいてフル稼働していた。そしてランナーにとってもラストのエイドということでボランティアさんの声援も一際大きく感じた。
俺も自然とファイトの声が大きくなった。

『沿道の声援が力になる』
よく見る言葉やけど
一度でもマラソンやレースに出た人なら分かると思う。
本当に力になるんです。

そして何よりビックリしたのが150km走ってきて満身創痍の状態なのに『ファイト!』という掛け声に対して殆ど人が【お疲れ様です!】と声を掛けてくれた事。
嬉しかった。ランナーに比べたら俺らの疲れなんて大したことないけど、それでも心に沁みた。

大阪に戻る最中にもどんどん写真が送られてきて、カメラマンの写真を見ているだけで涙が出てきた。
会場にいたら嗚咽するぐらい泣いてたんちゃうかな?
もし来年またこのレースに携わる事ができるなら嗚咽してもいいから最後のゴールを見届けたい。

そして今回の経験を経て思った。
『俺もトレイルのレースに出たい!』

この気持ちは【なんとなく】じゃない。

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