Masaki U

23歳

Masaki U

23歳

最近の記事

話すこと

大学四年生の秋学期、最後の学生期間に「手話」の講義をとっていた。卒業に必要な単位は既に取り終えていたから(なんならオーバーしていた)卒業要件なんて気にせずに好きな科目をとることができた。 大学の履修登録は抽選制になっている。各学期の始まる前に1週間ほどの登録期間が設けられ、その間に次の学期に受けたい科目の抽選に申し込む。数日後に届くメールで当選していればその科目を履修することができ、運悪く落選した場合は定員割れしている科目から選び直さなければいけない。「遅寝遅起き」がキャッチ

    • ペルー旅行記①

      Capitulo1 ペルー行き決定 2022年10月初頭 いつも通りのステーキと茹でたブロッコリーが山盛りのディナーを日本人留学生の友達と一緒に食べて食堂を後にした。年中夏日のフロリダ州だけど、10月の夜は昼間の蒸し暑さを忘れるくらい気持ちのいい夜風が吹いている。毎日降るスコールと皮膚を突き刺すような日光のおかげで青々と育った草木が揺れる音が心地いい。突然、後ろで雄たけびのような声が聞こえて振り返ると、さっき僕たちが出てきた扉の前でアスリート学科の学生達が輪になっているのが

      • やさしさクライシス

        昔々あるところに一人の青年がいました。彼は自分が嫌っていた人を皆がやさしい人だと褒めているのを聞き驚きました。友達と話している時、彼らの先輩や先生のやさしいエピソードに共感できなかった彼は友達に「それの何がやさしいの?」と聞きたかったのですが、結局口を閉じてしまいました。そのやさしさがわからないのは君がやさしくないからだと言われることが怖かったのです。 月日が経って、彼は大人になりました。やさしさが何なのかはまだわからないままだけど、やさしさというものは受け取った人がどう感じ

        • いわゆるガクチカ

          パソコンのデータを整理していたら、就活の時に書いた大学生活の振り返り(いわゆるガクチカ)が出てきた。改めて読み返してみるとぼく的に結構うまく書けてる気がしたから保存しておく意味でもnoteにコピペしておくことにした。(これを企業に丸々送ったことは無かったけど一回言葉にしたことで面接の時などでスラスラ話せるようになったから一応書いた意味はあったかな、、。) ですます調の文章はどうしても硬くなってしまうから苦手です。 敬語自体があまり好きじゃないのは壁を感じるからだと思っていま

        話すこと

          贈る言葉あるいは選手宣誓

          残りの学生生活も1か月を切った。卒業旅行も終わってしまい、卒業式も目前に迫っている。ぼくは昔から式典とかセレモニーみたいな催し物に興味がなく、なんなら嫌いだった。中学生の頃は卒業式の練習を何度もさせられることに辟易としていたし、今でも式典というものが必要だとは思っていない。校長や市長、PTAや学年代表のお言葉は”お約束”のオンパレードで、その嘘臭さにうんざりだった。(式以外、例えば写真撮影、寄せ書き、最後のホームルームは大好きな時間だった) けれど格式ばった式典というイベント

          贈る言葉あるいは選手宣誓

          隠し味

          *続き 一人でごはんを食べることが好きではない。 味は相対的なものだ。鼻を押さえて食べると料理の味が変わるように、空腹時は食べ慣れたものがいつも以上に美味しく感じるように、味は様々な要素が組み合わさってできている。嗅覚、空腹具合、体調、気温、盛り付け、周囲の清潔さ、昨日食べたものなど、味に影響を与える要素を挙げていくときりがないことが分かる。しかしそんな複雑な味を決定する無数の要素の中でもぼくは「一緒に食べること」が一際重要な役割を果たしていると感じている。 Netfl

          夜のすきまで

          *2020年コロナ禍、大学には一度も登校できず時間だけが有り余っていた時に書いた小説。疲れや怒り、失望や希望などの混ざり合った様々な感情をそれぞれの短編に分解することで整理したかったのかもしれないと今思う。 1 いつになったら朝が来るの? 何気なく発したその言葉はだれに届くでもなく狭い部屋の中で力なく消えていった。 あの時からずっと朝が来ない。寝ると朝が来るなんて恐竜の時代からの常識だと思っていた。夜は皆が聞き耳を立てている。暗く静かな夜は音が良く響く。半分空いた窓か

          夜のすきまで

          怒りは正直者

          怒りは人間関係においてあまり歓迎されることではない。怒っている人を見ることはしんどいし、怒るにはたくさんのエネルギーがいる。怒りはそんなマイナスの要素をふんだんに持った感情で、付き合うことは大変だ。アンガーマネジメントという言葉はあってもハッピーマネジメントは聞いたことが無いのもそんな理由からだろう。キリスト教では”憤怒”が「七つの大罪」の一つとされているように怒りは普遍的な人間の感情の一つではあるけれど、もちろん人によって程度の差があり中には怒らない人もいる。そんな人は実際

          怒りは正直者

          おいしいって何?

          これまで食べたものの中で一番おいしかったものを聞かれたら何と答えるだろうか。 一番高かったもの?部活終わりの空腹でかきこんだラーメン?留学から帰ってきて久しぶりに食べた日本食?夜中に友達と買い食いしたアイスクリーム?沢山のフルーツで飾られた10歳の誕生日ケーキ?大学受験勉強の息抜きに食べたマクドナルドのポテト?母が早起きして作ってくれた運動会のお弁当?バレンタインでもらった手作りのチョコレートクッキー?高熱の時に父が走って買ってきてくれたグレープフルーツゼリー?スキー場で飲ん

          おいしいって何?

          マイスモールランド

          *アメリカで書いていた文章に加筆修正した 今、アメリカでこの映画を観てよかった。留学前ではこの映画に対して抱く感想は違うものだっただろう。生まれた土地と異なる場所でマイノリティーとして生活するという経験は、(日本という帰る場所があり、帰る時期が明確に決まっている時点で彼らの立場とは似ても似つかないけれど、)この映画での彼らの行動や心情の解像度を間違いなく高めている。 自分は「クルド」について何も知らなかった。そして”難民”として(日本では法的に難民だと認められた例は無いに

          マイスモールランド

          ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

          「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」という映画を見た。父が原作小説を持っていて本棚に置いてあるのを見ていたから題名は昔から知っていたけど読んだことはなく内容は知らなかった。印象に残るタイトルだけれど、どういう意味かはよくわからない。だから予告編も観ずに再生してこんな話だったんだとびっくりした。 (Netflixだと前情報一切無しで観たり出来るのが楽しい。家から少し距離がある本屋さんに、文庫本に黒色のカバーが付けられなんの本かわからない状態で買う「秘密文庫」というものが

          ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

          止まない雨が無いように

          京都の実家から大阪にある大学に通っている。家から駅まで30分歩き、電車に30分乗った後、学校まで坂道を30分かけて歩く。片道計1時間半の通学。つまり学校がある日は往復3時間を移動に費やしていることになる。2時間歩いて、1時間は電車の中。計算すると長い印象を受けるけれど、実際は電車に乗っている時は座れても座れなくても本を読んでいて、歩いているときもAir Podsで音楽かポッドキャストを聴いているから体感的にはそれほど長くは感じない。散歩が好きだということも大きく関係しているだ

          止まない雨が無いように

          風邪の功名

          *アメリカ留学中に書いていた文章を加筆修正した。 日本から飛行機でほぼ一日の遠く離れた異国で微熱を覚えながらこの文章を書いている。朝起きた時には何ともなかったのだけれど昼ご飯を食堂で食べたあたりから悪寒がして、その一時間後には早くもバファリンを飲んでベットで寝転がっていた。普段、昼寝をしないのと火照る体で寝付けなかったけれどバファリンを飲んで4時間ほどたった今、パソコンをできるくらいには回復してきた。 思えば自分の体調が悪い時に傍に心配してくれる人がいないのは初めてのこと

          風邪の功名

          涙の流れたそのわけは

          「最近泣いたのはいつ?」という質問は気軽にしていい類の質問だろうか?それとも「あなたが人生で一番大切にしているのは何?」というような相当関係性がある相手(もしくは初対面でこれっきりの相手)にしか聞くことが許されない相手の深い部分にまで届いてしまうようなデリケートに扱われるべき質問だろうか? 僕は感情に強弱があると思う。 コントロールできる「弱い」感情と、コントロールできない「強い」感情。 そのように感情を分類したときに涙は「強い」方の箱に入る気がしている。 そもそも涙が生

          涙の流れたそのわけは

          永遠になりたいのか僕は

          生き物の中で唯一「死」を知っているのが人間らしい。 いやもしかしたら「死」を知っている生き物のことを人間と呼んでいるのかも。 遥か昔、最古の芸術と言われているラスコー洞窟の壁画が描かれた20,000年前から、人は自らの命がいつかは終わるものであるということを認識していた。生まれ落ちたこの世界にいつまでも留まることはできない有限な存在である自分。それに気づいた最初の人は、岩を砕いてつくった塗料と自らの体を使い洞窟の壁に絵を描いた。儚い自らの存在を、自分よりもはるかに長く存在で

          永遠になりたいのか僕は

          終わりを意識する

          *アメリカに留学していた時に書いていたノートを見つけて加筆修正した カレンダーを見るとアメリカに来て23日が経とうとしている。初めての海外に一人暮らし、言語の伝わらない相手とのコミュニケーションなど新しいことに忙殺される毎日だったけど、先週から自由に使える時間が増えてきた。だからここに気付いたことを書こうと思う。 ここ3日の間で急速にルームメイト達と話すようになってきた。 けれど自分の中に親密度別マップがあるとすれば彼らは「友達」という範囲からはまだ遠い場所にいる。なぜか

          終わりを意識する