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各駅停車で旅をする

東京から各停で旅をすると見えてくるものがある。

建物が低くなる。
建物の横幅が広くなる。
住宅地がぎゅうぎゅうだったのから余白が生まれる。
遠くに山が見え始める。

制服姿の学生たちが増えはじめる。

だんだんと垢抜けない人たちが増え、量販店の靴を履いた人が増える。
庭に柿の木がなった住宅。
幅100mの河川。
雑木林。
電車内からは笹や竹で車道が見えない。
ボタン開閉式の列車。

木工所。
鉄工所。
石材店。
トタン屋根。
錆びついたオロナミンCの看板。

駅前で新築住宅を建てる工事。
防風林。
電波塔。
河川の看板。
朱色の古くさい橋。
イントネーションの違う標準語。
貨物列車。
福山通運のロゴ。
錆びついた事務所。

おれはそんな風景を愛している。

東京にいると忘れてしまうこと。
日本のふつう。

1県に栄える街はせいぜい1つか2つ。
あとは山林と田畑と一軒家。
それが日本のふつう。

育った街ではない街。
どこか育った街の面影がある街。

発車メロディのない駅。
次の電車まで30分。

やがて別の栄えた街に着く。

広い車道。
広い空。
少ない歩行者。
ゆったりした歩道。
のんびり歩く人々。
古びた商店街。
シャッター街。
古民家を改装したモダンなお店。
故郷を盛り上げようと店を開く若者。
尖ったセレクトの個人店。

人の営みがあり。
人が主役の街がある。

そしてまた、真っ暗になった空のもと電車に乗り込む。

少しずつ高くなる建物。
おしゃれになっていく人々。
減っていく学生。
細く狭くなる道。
ぎゅうぎゅうになっていく住宅街。
狭い空。
息苦しい街。

人が主役の街から。
街が主役の街へと。

ギラギラと光るアメヤ横丁の看板が迎える。

はたしてどちらから旅立って、どちらへ帰って来たのだろう?

行った先に何かを求めるのが旅行。
道中に見出すのが旅。

人生は旅だと言うなら、目的は道中だ。

在来線の旅はそんなことを教えてくれる。


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