羊と雲の丘眺望羊群れ2

受け取る

私の生まれ育ったまち、浦和は
まわりのまちと合併してさいたま市になり、
122万人のまちになった。

士別の人口は2万人強(※1014年当時)。
面積はなんと、東京23区の約2倍もある。

必然的にひとつひとつのコミュニティは
ちいさいものいなる。

そんな暮らしの中、
今私は「受け取る」練習を
しているのかもしれないと
感じることがあるのだ。

こちらに来てから
「遠慮しないでもらっておきな」
と言われることが増えた。

お菓子
(特急スーパーカムイでたまたまとなりに座った
占いの館の社長さんがくれた、
黄金の龍付き開運おせんべいを含む。)

漬物各種
(酢や麹で漬けられたものを、
農作業のない冬場にたくさんいただく。を含む。)

家具
(近所で納屋を壊すと聞きつけ
ハルエちゃんがゲットしてきた
明治時代の渋いたんすを含む。)

七輪
(ジンギスカン用の肉を買いに行ったお肉屋さんに
突如としていただいたカッパの顔がついたもの。)

その他、きのこ、笹寿司、いももち、
かぼちゃだんご、でんぷんだんご、
イクラ、サンマ、お皿、ソリ…。
そして、さまざまな野菜をとにかくたっぷり。
いただきもののバラエティは実に多岐に渡る。

なにかをいただくたび
私の口から出てきたのは、
「いやいや、そんなもったいない!」ということば。
私の今まで暮らしていたまちではだいたい
誰かにあげるものはわざわざ買いにいかないと
いけなかったからだと思う。

あるとき、まちのお母さんが
使わなくなったお菓子づくりの道具を手渡してくれた。
時々ケーキを焼くと言った私のはなしを
覚えていてくれたのだ。

それでもなんだか申し訳なくて遠慮していると、
「もらってあげて。あなたにあげたいんだから。」
と言ってくれた人がいた。

私はハッとした。

何かをあげたい。
分かち合いたい。と思ってくれる人は、
相手が喜んでもらってくれるのを願ってる。
そんな簡単なことを、私はすっかり忘れていた。

思いをありがたくいただくことで
「よい気持ち」を分かち合う。
すると、なんだかいい感じの循環が生まれる。
それは本当に豊かなことなのだと、
私はまちのお母さんに教えてもらった。

きちんと相手の気持ちを受け取るには、
自分を肯定できていないといけない。
「私なんかがもらっていいのかな?」
とか思わずに、
自分には受け取る価値があると認める。

お返しは、
心からの笑顔とともに
「ありがとう」と伝えたらそれでいい。

そのうちその道具でケーキを焼いて、
お母さんと一緒にお茶をできればなおいい。

受け取る力を発揮することは、
私たちに惜しみなく
エネルギーを分けてくれる人たちの
輝く場面をつくることにもなる。

受け取る練習は、自分に自信を持つ練習。
相手を輝かせる練習なのだ。

そうしているうちに
自分のまわりがきらきらと輝く場所になる。
「受け取る」にはそんな魔法がある。


◎鯨井啓子 info

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