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ベンチで寝転んじゃ込駄目!?東京駅八重洲口側の理不尽グランドレベルを歩く。そうか!「営み」とは、人々の能動的な行動が折り重なる風景なのだ。

死んだまちになるか、生きたまちになるか、そのポイントはグランドレベルっていうことで、この日は、神田から日本橋、東京駅を通り、銀座まで歩きました。とにかくとにかく、この日は最高の天気で!

まずは日本橋。日常的に通るのですが、晴れてるとこんな感じ。高速が上を飛んでいても、違和感なく気持ちいい。行き交う人も、首都高のことなんて何も気にしていません。地下化を唱えている人もいるけど、日本橋は決して劣悪な環境に置かれているのではないのです。日光が川面に反射して首都高に写るキラキラも綺麗で、思わず写真を撮るひともちらほら。

東京駅、八重洲側のグランルーフ前へ。はっきり言って、座るところが少なすぎるのです。みんな立ち尽くしてるでしょう?奥にベンチが設けられているのですが、目に付くところほとんどがカウンターテーブルの高さ。しかも雨水の流れを植栽側に持っていこうとしてるのか、テーブルに傾斜がついていてとにかく使いにくい。人よりもエコのためってところでしょうか。ん?やっぱりおかしいですよね。

大丸前もこんな感じ。携帯で話すサラリーマンも本当は座りたい。けど、この設えでは座れないし、鞄すら置けない。だから地面に鞄を置いて、立って話すしかない。最初から座らせる気が無いこのデザインは、日本の至るところで見られます。とにかく言い訳は“浮浪者対策”ですが、いかなる理由であれ、間違いは間違いです。日本の首都の東京駅の駅前に、これはクレイジー。

実際に線を引いているゼネコンや組織設計の人たちは、本当に真剣に考えるべきです。60点のグランドレベルは、結果的に都市を、まちを疲弊させます。だからこそ、グランドレベルを人のためにどうつくるべきかの理想を、しっかりと突き詰めていくべきかと。

一見、ベンチあるやん!となりますよね。木も生い茂って良い感じと思う。けど、これがまた殺人的にいらつくデザイン。まずベンチ座面の高さが微妙に高い。そしてお尻側が植栽側へ向けて斜めに落ちている。だから、背の低い人や高齢者が座ると、かかとが上がってしまいます。もっと心地よく座らせてよって。で、オチとしては、手前に浮浪者の方が写っているのですが... 彼は座面が斜めにカットされていることで、座面と植栽が織りなす緩やかなV字スペースにすっぽりと収まり、心地よさそうに寝ていたのでした。。

ここしかないので、ギュウギュウに座っているのだけど、みんなすごく居心地悪そう。さらに、斜めに大きく伸びる柱のまわりには、安全確保目的でなのか、謎の手摺も登場。座れるわけでもなく、鞄を置けるわけでもなく、しっかりと歩行者を邪魔しています。この謎の手摺があるのと無いのと、どちらが心地よく歩行できるでしょうか?タイルの色も、右と中央でちぐはぐになっているのも許せません。

バスの発着ゾーンを抜けたところ。こちらは右側に座っているが、けどこれは座ることを意図したデザインではなく、たまたま座ってるパターン。この場合、座ることがデザインされていないので、植栽が大きくなってくると、もちろん人は座れなくなるんですよね。とにかくとにかく座るところがない。

サウスタワー前までくると植栽がきちんとしていて、これはいいなぁと思っていたのですが、次の瞬間、右に写るサラリーマンの動きが止まりました! 男性は、このビルで次の用事があるようで、買ってきたコンビニおにぎりをその前に食べようと考えていたようで。立ち止まり、キョロキョロしはじめるのだけど、どこにも座るところが見当たらない。立ち尽くす男性。これこそ、死のグランドレベルを持つ、まさに死のビル。けど、日本にはこういうオフィスビルがとにかく多い。

もう少し歩くと、フォーシーズンズホテルの前。ここは、本当に気持ちのいいグランドレベルです。けど、さっきの男性もここにこんなスペースがあるなんて思わないですもんね。ベンチもたくさんあって、けっこうここで過ごすの好きだったりします。

広い場所もあれば、こうして籠もれる場所もある。気持ちえぇなぁと歩いていた矢先、事件が目の前で発生!

「あっ、、、駄目ですか?」

この日は、仕事したくなくなるほどの陽気。お昼ご飯食べたらちょっと横になりたくなりますよね。おじさんがごろんとしようとした瞬間、警備員がスッと寄ってきてこの光景です。寝転がることが、誰の迷惑になるというのでしょうか。こんな気持ちの良いグランドレベルをつくておいて、寝てはいけない。まさに世界的に見てもクレイジーな状況です。寝てはいけないというルール。一体、誰に、どこに決定権があるのでしょう?そのあと振り返ったら、恥ずかしそうに寂しそうに、おじさん座ってたなぁ。。

国際フォーラム側に線路をくぐると現れる、サンドイッチカフェ「KOKO 丸ノ内南口店」。この設えは、保存級の名グランドスケープ。最高です。

そして、こちらも名グランドレベルの東京国際フォーラム。この中庭空間は、丸の内と有楽町をつなぐ大きな通りであり、かついろんなところに座れる場所があります。さらにフォーラム内とこの中庭は人々の意識の中ではシームレスに、隔たりなくつながっているんですよね。

その建物やエリアの価値をたかめる名グランドレベルというのは、人がいてもいなくても、そこに人の「営み」を感じる空間なんですよ。でも、「営み」ってもう少し突き詰めると何なんだろうと、ここ最近ずっと考えていました。そして、この光景を見てひとつの結論が出たのです。

まず、「営み」っていうのは、「能動性を持つ人の行動の折り重なり」ってこと。それもイベントのような非日常ではなく、日常の中にさりげなく。たとえば単純な動作である「座る」にも、「歩く」にも、「受動的」か「能動的」かに分けるられます。上の写真に写る人々は、「座る」「歩く」は、ほとんどが能動的な(ポジティブな選択としての)ものなのです。(さらに突き詰めると「能動性の質」の話があるのだけど、そいつはまた今度)

もうひとつは、その折り重なる人々の行動が多様であること。国際フォーラムの中庭だと、本を読む人がいれば、お弁当を食べている人がいて、何やら楽器を取り出す人もいえれば、おばちゃん同士で話し込んでいる人がいる。みんながみんな自分がやりたいことをやっている。それらが目に入るだけで、幸せになるものです。

そういうわけで、最後に今日のまとめはコレ! 

グランドレベルにあるべき「営み」とは、
「能動性を持つ人々の多様な行動の折り重なり」! 

おおにし・まさき
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