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オムツのはなし

「オムツを履きたがらないけれど、何度も失敗してしまって後始末が大変・・・」

介護をしていて大変なことのひとつに、排泄の問題があります。
ご家族からしたら、「だからオムツを履いてって言ってるのに・・・」と怒りたくなってしまうときもありますよね。

布の下着からオムツに変えるとき。
パッドを追加で重ねるとき。
厚手のオムツに変えるとき。
どのタイミングでも、どうしても違和感や不快感を感じてしまい、慣れるまで身につけるのを嫌がられることがあります。
中には「なんで私がオムツを履かなければいけないの」と怒る方もいます。
いくら今どきのオムツがよくできているとは言っても、布の下着に比べたらガサガサして動きにくいのは仕方ないですよね。

そもそも、トイレに間に合わなくて失敗してしまうということ自体、ご本人にとってはショックで情けないことだと思います。
それに輪をかけてご家族から「オムツを履いてほしい」と言われることで、プライドがより傷ついてしまいます。
ご本人の気持ちを考えたとしても改善できることではありませんが、そういった葛藤があることだけはわかってあげてほしいです。

自宅で失敗することが何回か続いたら、まずは外出するときだけオムツを履くのを進めてみてはどうでしょうか。
外出先など人前で失敗してしまうと、オムツを履く以上に恥ずかしい思いをしてしまうことになりますし、外出自体を嫌がるようになってしまうこともあります。

そうしてオムツを履く回数をだんだん増やしていって、自宅でも毎日履いてもらうようになるのが理想です。
はじめは文句を言われたり嫌がられたりするかもしれませんが、「履いていてよかった」と思う出来事があったり、オムツを履くことに慣れてくると、だんだん何も言わずに履いてくれるようになるはずです。

また、失敗したくないからと水分をとらなくなってしまう方もよくいます。
水分をとらないことで、脱水や発熱など体調を崩してしまうこともあります。
そうならないように、ご家族の負担にならない程度に水分を勧めたり、食事のあとなどにトイレに促してみるのもひとつです。

オムツやパッドを使い始めると、新たな問題が出てきます。

利用者の方がパッドをトイレに流してしまい、トイレが詰まって大変なことになるということが、施設では定期的にありました。
また、脱いだオムツを洗濯機に入れていたのを知らずに洗濯機を回してしまったという話も、ご家族から何度も聞きました。
そうなってしまうと、後始末がもっと大変になり、繰り返されるとストレスになってしまいますよね。

「トイレに流さないでって言ったのに」
「洗濯機に入れないでって言ったのに」
そう言いたくなる気持ち、痛いくらいわかります。
しかし、残念ながら認知症の方に「言ったのに」は通用しません。
逆に、ご本人が「そんなことをした記憶がないのに怒られてしまった・・・」と落ち込んでしまい、お互いにつらくなってしまいます。
そのときは頑張ってこらえて、あとで話を聞いてくれる人にぶちまけましょう。

親がオムツを履くことにショックを受けたり、オムツを履くのがかわいそうだと思ってしまうご家族もいます。
どうしようもないことだと頭ではわかっていても、つい頭に血が上って怒ってしまい、後悔してしまうという話もたくさん聞いてきました。
排泄のように避けられない問題にストレスを感じてしまったら、定期的に距離を置いて解放される時間を作ってみてはどうでしょうか。
週に何度かデイサービスを利用したり、月に何度かショートステイを利用したりするだけで、気持ちが全然違ってくると思います。

介護生活は、一緒にいる時間の『長さ』よりも『質』なのではないかなと思います。
毎日一緒にいてイライラしたり、怒ってしまって後悔しながら過ごすより、たまに離れて気分転換をしながら仲良く過ごせた方がいいですよね。

大変なことの方が圧倒的に多い介護生活ですが、少しでも気楽に考えられるようになるお手伝いができたら嬉しいです。



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