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調律師のOさん

5年ぶりにピアノの調律をしてもらった。
中がカビていたらどうしようと思ったけれど、大丈夫だった。
想定内やねと言われ、ほっとしながら今回はずっと隣に立って調律を見せてもらった。
わたしのことを「まーちゃん」と呼ぶ人はわたしを小さいころから知っている人だ。調律師のOさんもそのひとりだけれど、年に一度の発表会では顔を合わすものの、ゆっくり話している時間はないので、調律に来てもらったときに話せるのを楽しみにしている。
音楽の話はもちろん、演奏家の裏話も聞けるのが楽しい。
音を聴いて、話を聞いて、また音を聴いて。今どきはさぁ、みたいな話もしながらたっぷり3時間ほどピアノのある和室で調律を見せてもらった。
Oさんは昔は猫を飼っていたらしく、うちのクゥちゃんもすぐにすりすりしに行っていた。
ピアノの音がきれいになった。まるで違うピアノみたいに。
板を外した状態で弾かせてもらったら、ふわっと音が前にとんできて、なんて心地いいんだろうと思った。これといった曲が弾けないのでコードばかり適当に押さえてそれでも幸せだった。
こんな調律をしてもらって、ろくに弾いてあげられないのはいかんなと思った。もったいなすぎる。誇張ではなくて、Oさんは世界一の調律師なのではないかと思うから。誰よりもピアノを大切に思っている気がするから。
弾きたくなる衝動を与えられる。かきたてられる。
Oさんはそんな調律師なのだ。


○写真はみんなのフォトギャラリーからお借りしました

#エッセイ #ピアノ #調律 #調律師 #音

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