見出し画像

高校球児と丸刈り。

2023年夏の甲子園、高校野球も終了。
#高校野球を語ろう  にいつ参加するか、何を語ろうか、
考えていたら大会終了二週間を過ぎていた。

でも語ろう。

慶應高校が勝ち進むにつれ、世の中の注目は選手が長髪であること、慶應OBの応援のすごさ、清原氏の息子さんの出場、どのルートが高校野球をする上でメリットがあるかなど、試合内容を楽しむこと以外のゴシップに注目が集まった。

一方、慶應高校の選手は、外野の声をよそに見事な勝ちっぷりで、全てを味方につけることができる天賦の才を十分に発揮していたと思う。

僕自身は、野球をしていたわけでもなく、熱心な高校野球ファンとは言えない立場なので、極々私的な経験しか語ることは出来ないが、今年だから書けそうなことがある。

僕の父は高校教師で、高校野球の監督・顧問を教師の仕事を退くまで40年以上続けていた。永年の監督生活の中で、進学校勤務が長かったせいもあり、甲子園の土を踏むことは叶わなかった。
夏の大会の予選でベスト16かベスト8までが最高の戦績であったと思う。

その進学校では近年稀に見る選手が揃っていると言われた当時、僕は小学4年生ごろだったと思う。
土曜日の午後や日曜日、夏休み期間中など、父に連れられて練習の間、父の勤務校で時間を過ごすことが多かった。
用務員室で学校の宿題をしたり、昼寝をしたり、溝でカメを探したり、「高校の校内で小学生がうろちょろとしてて大丈夫なん?」と今なら咎められることにもおおらかな時代であった。

僕の楽しみは、練習終了後のある行事。

父が、「バリカン取ってきて」と僕に言う。
その一言で高校生の生徒たちは、ニヤニヤと笑い、キョロキョロと周囲を見回す。
父は、「〇〇、〇〇、〇〇・・・」と何名かの生徒を指名、指名された生徒たちは、「ハイ!」と野球部らしい返事と共に体育館の入り口のひさしの下に移動する。
そこに職員室の父の引き出しからバリカンを取り出し、用務員室で新聞紙をもらった僕がひょこひょこと現れる。
そう、父は丸刈りの少し伸びた生徒の頭を、練習終了後バリカンで丸刈りにしていたのである。
3人くらいの時もあれば、5人くらいの時もある。人数が少なそうな時は、
「お前もするか」と僕も刈られる。
ちなみに電動のバリカンではなく手動である。
ただ、何百人の頭を刈ってきた父の腕前はなかなかで、手際よく2枚刈りに揃えられていく様子は見ていて心地よいものがあった。
散髪を終了した生徒は近くの水道で頭を洗い一丁上がり。
ハードな練習の終わりの和やかなひと時であった。

あとで聞いたが、生徒の多くは、家に帰って「散髪をした」と親御さんに散髪代をもらっていたそうだ。
ちなみに我が家も丸刈りで、父親カットが条件で、散髪代の代わりに500円もらえる仕組みがあった。次の日プラモデル代に速攻消えていたが。

そんな経験もあり、“高校野球と丸刈り“にはイデオロギーや管理教育の是非とは別次元の体験を持つ僕である。

高校野球には高校野球にしか語れないことが多くあり、それが高校野球の魅力となっているのであれば、ある地方の高校の、夏の大会前の牧歌的なエピソードもそこに添えたいと思い書いてみました。

ちなみに慶應高校と仙台育英高校の決勝戦のNHK中継の解説は、父の監督時代に1番強かった世代の選手のひとり、廣岡資生氏でした。



この記事が参加している募集

夏の思い出

高校野球を語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?