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1F下請け作業員がまた被ばく:今度はアルファ線の内部被ばくか?

福島第一原発(1F)の作業員が被ばくする事件がまた起きた。


12月11日の日報で明らかにされたが、以下の通り、分かることは多くない。

東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー 
2023年12月11日 日報

筆者はこの日、会見に参加できず、何が起きたのかよくわからなかったので、会見動画を見た。すると今回も10月25日に洗浄廃液で作業員が被ばくした時と同様、情報は小出し。何人もの記者が質問をし続けて分かったことは以下のとおり。

時系列は?

11時3分(会見中に11時5分と訂正)、2号機使用済み燃料プール周辺のフェンスを解体した物品の除染作業を行なった作業員1名が、11時40分頃に作業を完了。
14時27分頃、作業終了後に入退域管理棟に戻った際に、顔面に汚染を確認。
14時42分頃、鼻腔内の汚染検査(鼻腔スミア)で約1,000cpm(ベータ線)の汚染(バックグラウンド約60cpm)が確認された。「内部取り込み(内部被ばく)の可能性がある」という。
16時28分、被ばくした作業員の除染が”完了”。管理区域から退域した。

装備は?

作業を行なっていたエリアは「レッドアルファ(α)ゾーン」。アノラック上下、カバーオール、全面マスク、手袋を装着。作業員は2名、放管が1名、東電社員はいなかった。元請は東京パワーテクノロジー。被ばくした作業員は1次請所属。20代男性。1Fでの作業経験は1年5ヶ月だという。退域基準(βとγ線で4ベクレル/cm2)を下回っているので、病院にはいかず退域したと東電は説明。

全面マスク」となっているのに、なぜ、鼻から取り込むことになったのかという質問を通信社記者が行い、東電広報が確認中だ。

また、おしどりマコ記者が、レッドαゾーンであり、α線の退域基準は一桁厳しいはずだと、α線の退域基準と作業員のα線測定結果を求めた。

公表されていない「レッドαゾーン」

気になったのは東電がさらりと言っておしどり記者がこだわった「レッドαゾーン」という用語。1F構内は、今日までに汚染度に応じて「レッドゾーン」、「イエローゾーン」、「グリーンゾーン」が設定され、装備が決まっている。が、「レッドαゾーン」という名称は、はじめて聞いた。

「『レッドαゾーン』が『レッドゾーン』のどこにあるか一覧できるサイトを教えてください」と今日、電話取材をすると「公表していない」という。

「レッドゾーン」、「イエローゾーン」、「グリーンゾーン」は、中長期ロードマップの労働環境改善の資料(たとえば、2023年11月30日資料3-7)などで公表しているが、「レッドαゾーン」は公表していないというのだ。

東電「福島第一原子力発電所の作業環境」サイトにALPSなど必要事項を筆者加筆

α線の退域基準と測定結果が重要なわけ

ちなみに、「レッドβゾーン、レッドγゾーンはないですよね? レッドαゾーンだけがあるのは、α線を取り込んだ(内部被ばくした)時に影響が大きいから?」と聞くと、「そうです」と広報は答える。

つまり、今回の「レッドαゾーン」で起きた内部取り込み事件では、おしどりマコさんが公開を求めたα線の退域基準と作業員のα線測定結果が重要なわけだ。広報がそこを即答できなかったことは、東電がそこを重視していないこと、そして、もしかすると、α線の取り込み(内部被ばく)を確認せずに退域させてしまったかもしれないことを示す。

ALPSは「イエローゾーン」

さて、ちょっと話がズレるが、改めて、「レッド」、「イエロ」、「グリーン」のゾーンを見ると、今回の事件は「2号機」周辺の「レッドゾーン」で起きたことがわかる。一方で、前回の被ばく事件が起きた増設ALPSの位置を見て、そこが「イエローゾーン」に位置付けられていることに、今更ながら気づいた。

「イエローゾーン」はカッパは不要

さらに各ゾーンの装備を確認してひっくり返りそうになった。ALPSのある「イエローゾーン」では、カッパ(アノラック)を着用しないのが標準装備だ。東電広報は、ゾーンごとで一律ではなく「作業ごとに異なり、作業指示書で決める」という。しかし、それならまず厳しめに書いて、指示書で緩めるべきものではないのか? 最初から緩く書いておけば、危機感そのものが緩む。

福島第一原子力発電所の作業環境 各zoneの装備より

同じ日に、規制委員長らは柏崎刈羽原発を調査

この事件(3ヶ月で2件目の被ばく事件)が1Fで起きた同じ12月11日に、原子力規制委員会の山中委員長と伴委員は柏崎刈羽を訪れ、事実上運転禁止命令の解除の「可否を年内にも判断する方針」だと、報じられている。

柏崎刈羽原発の保安規定2条で、1Fの廃炉をやり遂げると書いたことを誠実に実行させることが先決だと思うのだが、岸田政権下で始まったGX基本方針に沿って、原子力規制委員会は、再稼働への動きを加速させているように思う。

【タイトル写真】

東電「福島第一原子力発電所の作業環境」サイトにALPSなど必要事項を筆者加筆

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