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高性能ALPSをなぜ使わないか

3週間して初登場の東芝作業員4人と被ばく事故の発端:福島第一のあらすじと続き。


あらすじ

私がこの間、質問してきたのは、作業員の被ばくリスクをどうやったら下げることができるのかという観点からの問いだ。ALPSの前処理で配管に溜まった炭酸塩を硝酸で洗い流すような作業を、粗末な仮設施設でやらずに済むことはできないのか、だ。

当初は(ヒモの)固縛位置を確定して、カッパを着るという、当たり前でしかない対策を東電が示していた。

それが、11月16日になると、東芝は、洗浄廃液を飛散させないための抜本的な設備改善を検討する、その対策が整うまでは、ホースの固縛位置を確定する(ヒモだったがボルトで止めると会見では答えている)、洗浄廃液が飛散しても汚染が拡大しないようにハウスで区画する(報告書P1)と報告し、東電はそれを妥当とした。

しかし、洗浄作業の「抜本的な設備改善」をしても、東電はそれを原子炉等規制法に基づく実施計画には位置付けないつもり、であることがわかった。洗浄作業はあくまでメンテナンス作業であり、そのようなものは位置付けないのだと。ALPSそのものは実施計画に位置付けているからそれでいいのだ、という考えだった。

さて、ここからが今日の本題。

福島第一原発の実施計画(事故処理を災害防止をしながら進めるための計画)には、3種類のALPSが位置付けられている。汚染水処理の要だ。

この間の取材で、「洗浄作業」が必要なのは、最も古い「既設ALPS」3系統(A、B、C)と、次に作った「増設ALPS」3系統(A、B、C)で、「高性能ALPS」は「洗浄作業」が要らないとわかった。

これは、後に「要らない」というより「しない」と言った方がより適切だとわかったのだが、洗浄作業が要らない高性能ALPSで代替していけば、洗浄作業で被ばくするリスクがなくなるではないかと思って、根掘り葉掘り、聞いていくと、思いもしないことがわかった。(そして、被ばくリスクを下げたいという思いとは関係ない方向に知らなかったことを知ることになった)

高性能ALPSをなぜ使わないか

結論の一つを先に言うと、実は既設・増設ALPSを代替していくどころか、高性能ALPSを現在、使っていない。

理由を突き詰めると、前処理をしない(=洗浄作業が要らない)高性能ALPSは、その分、吸着塔に負担がかかり、吸着塔丸ごとを交換する頻度が高くなってしまうから使いたくないのだ、ということなのだ。

しかし、質問攻めしてそうと解るまでは、そんなことを思いもかけなかったので、11月20日は会見中に、洗浄作業が要らない高性能ALPSをなぜ使わないのかと尋ねた。

すると、「適材適所」「得意分野」があるので、と東電が答える。

そこで、「適材適所」とはなんなのだと聞くと、東電は「既設と増設ALPS各3系統は、処理量が250m3なので、使いやすい。高性能ALPSの1系統の処理能力は500m3で、今、汚染水発生が少なくなっているから、既設増設がいいんだ」という。

ちなみに、汚染水の発生量は2014年には1日450m3、現在は1日90m3。そして、実はすでに、高性能ALPSの処理能力は当初は500m3だったのを大き過ぎるからと処理能力を400m3に落としている(参考)。

素人的には大は小を兼ねるで、高性能ALPSを使えばいいじゃないか、とか、新たに発生する90 m3で処理能力に余裕があるなら、約1000基のうち未処理の7割の高濃度汚染水の2回目、3回目の処理を並行して行えばよいではないか?と色々聞いた。

しかし、2回目、3回目については「それは放出計画を立ててから」とお茶を濁す。

そして、結局分かったのは、既設と増設ALPSを使えば、結果的に高濃度の汚泥(スラリー)に汚染されたフィルターがたくさん発生して、それをHICに詰めて保管し、その保管場所が逼迫するというデメリットがある、ということ。

それにも関わらず、なぜかはわからないが、既設と増設ALPSの方が使いやすから、既設と増設ALPSを使うと決めている。高性能ALPSは使っていないのだ。

そしてさらに聞くと、今回、被ばく事故が起きたのは「増設ALPS」3系統のうちB系で、それは現在止まっており、A系とC系は改善策を実施中。結局、今使っているのは、「既設ALPS」3系統(A、B、C)の一つ一つだという。

処理量を聞くと会見後に、ドタバタと探して、ここに載っていると示してくれた。なるほど、言っていることは数字で裏付けられたが、妙な気持ちだ。

出典:2023年10月26日 中長期ロードマップ会見 資料  【
資料1】プラントの状況 → 6ページ

飛行機の搭乗時間が来てしまったので、急ぎ、ここまで。

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