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手紙【エッセイ】八〇〇字

 オープンカレッジの「エッセイ教室」が、コロナ禍で早々に閉じられた。なんせ高齢者が多いので、リスクが大きすぎる。レベルの高いひとが多かっただけに残念。学生もいまも通学できないのだから、仕方ない—————。
 そこで、同じ講師の通信講座が「朝カル」にあるので受け始めた。期間は六か月。月一の課題をテーマに作成し、毎月十日までに投函する。二週間前後で添削が戻ってくる。赤字がどう入ってくるのかを、楽しみに、待つ。
 通信教育は、これで三度目。高校三年のとき、月刊誌「大学への数学」の「学コン」の添削問題を送っていた(最終的に文系になるが、数学が好きだった)。雑誌の最終頁の答案用紙を切り取りとり添削料とともに郵送する形式。かなりの難問で有名だった。翌々月の雑誌には模範解答とともに成績優秀者の名前が掲載され、年間を通した優秀者には、万年筆などの記念品が贈られた(記念品はなかったけども、名前が掲載されたことがある。一度だけど)。あと一回は、大学のとき。なぜか「広告ディレクター講座」だった。目指していた演劇に挫折し、広告制作に興味があった。
 パソコンや携帯電話が普及したころから、手紙は、年賀状ぐらい。しかし、通信教育の添削の封書は、忘れたていた手紙を思い起こさせてくれる。とにかく楽しみで、返却日近くになると、日に何回も郵便受けを、覗く。
 (何を隠そう)四〇年前、翻訳家養成の教育会社で通信教育部門を担当していた。当時、大学通信教育は別にして、民間の講座の信頼度は今一の時代。だけど、英語好きな二十代の女性を中心に多くのかたに受けていただいた。いま六〇歳以上のひとは、一度は目にしたことがあると思うのだけど、簡単な英文を新聞や雑誌に掲載し、無料で添削し、あなたの翻訳力を診断します、なんていう広告を作っていた(ここで、通信講座が役立った)。
 添削の返却郵便を日々待ってくれたであろう当時の受講生の心持を、いま体験している。

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