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流儀【エッセイ】一〇〇〇字

 調理中、洗い物を溜めるお方がいらっしゃるが、ワタクシには絶対、ムリ。外食産業にいた20代のころ叩き込まれた、イロハである。調理終了時、シンクは空でなければならない。使った道具は、すぐに使えるようにしておく。時短である。だから引退したいまも、用を足す間にプリントをするようなことを行う。出てきたら、刷り上がっているというわけだ。ところが、プリントが出終わるまでプリンターの出口をジーっと見つめているお方もいらっしゃるが、その時間の無駄が耐えられない。現役の時は、仕事を片つけて早く呑みに出かけたいので、夕方になるとより効率さが増す。店のメニューが浮かび、オーダーする品まで決まっている。
 この時短の手法は、ケネディ大統領から工期短縮を命じられたアポロ計画で生まれた、パートと言われる技術。一緒にできる作業は、同時に。例えば、歯を磨く、新聞を読む、用を足す。各々単独では足し算で、その分時間がかかるが、同時だと、用足しの時間分の二倍、節約できる。

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 40数年経た今も並行して、その都度洗う。煮ている間、オーブンやレンジの最中に、洗う。これだけ洗えば〇分かかるとの、私なりの経験値がありタイマー代わりになる。洗い終わった時、火を止めるとか、チンが鳴るとか。
 食事の時もその習性からか、空いた食器をその都度、洗ってしまう。ひとりのときはもちろん、相手がいても。私の落ち着きない仕草に、お相手さんは、食欲も恋心も萎えてしまうかもしれないが・・・。

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 自宅で、ポットラックパーティなるものをやることがある(あった)。参加者が料理を持ち寄って開く食事会。そのときは、なおさらだ。洗う量が半端じゃない。しかし自分が欠けても、場が白けなく済むので、まだいい。余裕をもって、食器を洗い食器棚に格納する。
 肉体的事情かもしれないが、懸命に食べるので、疲れる。疲れたところで動きたくない。食べ終えたら洗い物がない綺麗な状態で、しばらく何もせずに、余韻に浸り、ゆっくりしたいのだ。ブランデーでも呑みながら。
 しかし、店ではその性癖はむろん、出ない。優雅に食べる。食器が空いたら、おもわず腰が浮きそうになることもあるが。まさか、皿をそそくさと片付け、洗い場の勇ましい姿を、お見せする訳にはいかないから・・・ガマン、である。

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お得意の「茹で牛タン」と大根!(おでんかよ)

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