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まごころ【エッセイ・意見文】八〇〇字

 「ガースー」氏の会見。原稿に目を落とし話す姿が、頼りない。目をあげたかと思いきや、官房長官時代からのお得意の台詞。「仮定の質問には答えません」。コロナ対策担当大臣は、「八時以降だけ自粛して、昼は感染しないという意味ではない。誤解だ」と、きた。
 当初もあった、「国民の誤解」。何をいまさら、と思う。ワタクシは、ハナから信じていないので、昼も夜も自粛。(馴染みの店に悪いから)テイクアウトだけにしているよ。
 そんな政権不信のワタクシが、接触確認アプリ・ココアを、いち早く入れた。ブラック・ジャック風の髪型で銀髪に染めた、慶大医学部の宮田教授の説明に納得したので(カッコよかったし)。間髪入れずに、ラインの登録アカウントが出てきて、シェアを要求する。迷ったけれども、国民の六〇%が参加して初めて効力あるということなので、シャアした。すると、「これ大丈夫? スパム?」と、親族、友人、知人から、怒涛の返信の嵐・・・。
 案の定、不具合も見つかり、普及率が二〇%もいかない。政府の信頼度を示している。
 「モリカケ・サクラ・学術会議」などの問題。説明が不十分どころか、公文書を改ざん、隠蔽、廃棄する。強く、しつこく追及すべきだ。しかし、「いつまで続けている。他の問題があるだろう」と、政権を擁護するような発言をするメディアや政治家があった。コロナのような有事。指導者への信頼感が、一致して戦う原動力になると思うが、真逆だ。
 メルケルさんや、ニュージーランドのアーダーン首相、台湾の蔡英文総統の指導力が注目される。共通するのは女性ということと、迅速な対応、危機に際して国民の不安に寄り添い、安心感を与える「丁寧な」説明と姿勢だ。彼らの演説を見て思うのは、政治家に必要な資質は、「まごころ」と、強く思う。
 わが国リーダーに、申し上げる。「『仮定』のことを想定して、プランA、B、Cへと準備しておくのが、政治の役目でしょう」、と。

画・寺門孝之 2020年4月14日 朝日新聞朝刊から
多和田葉子の寄稿文「多和田葉子のベルリン通信」「理性へ、彼女は静かに訴える」

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