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敬語は上下でなく内外3

敬語は上下でなく内外、の続きを述べます。
前回、前々回と基礎基本にして最重要事項を必ず述べています。
敬語は内外こそが基礎基本。上下は二の次です。

弊社の社長が仰いました?

揃っていない

「弊社の社長が仰いました」というのはよくある単純ミスですね。
弊社が謙譲語で、仰いましたが尊敬語ですから。
これがよくある単純ミスなこと、それ自体こそが敬語の基礎基本を欠く、と私は思います。

敬語の基礎基本は内外であるため、弊社と言うのならば、内側だと思っていることを示します。
にもかかわらず、社長が失礼だとか言い出したらどうしよう、という怯えや恐怖が混ざってしまうため、仰いましたと口が滑る。
ゆえに、謙譲語と尊敬語の揃わないミスが生じているということになります。
「弊社社長の何々が申し上げました」が本来あるべき正しい敬語ということになります。

老害リスク

但し、「弊社社長の何々が申し上げました」には老害リスクが生じます。
自分のところの社長に敬語も使えんのか、という愚かなジジイが出てくるリスクです。
敬語は上下だ、と思う愚かなジジイからすれば、間違いに聞こえるのでしょうね。

「弊社の社長が仰いました」それ自体は単純ミスに過ぎないですが、老害リスクを考慮した上で、敢えて間違えた人々もいるかもしれません。

「申されますと」と違って、絶対に認めていないミスでは無いため、即座に指摘するかどうかは、迷ってしまいます。

「当課の課長」だったら?

これが「当課の課長」だったらどうでしょうか。
社外なら「当課課長の何々が申し上げた」です。
社内でも「何々課長が言った」で十分です。
「何々課長が仰いました」は過剰です。
敬語は内外で決まるものです。

社内で「貴社」や「御社」のように「貴課」や「御課」とは言わないですからね。
「貴課の何々課長が仰る」という職場の人なら、社外に向けて発するように、「当課課長の何々が申し上げた」にすれば良い、となります。

敬語は内外で決まる

悪用に気をつける

一番気をつけないといけないのは、平社員による単純ミスでは無いのです。
平社員でなく上層部が悪用してしまうこと。
これこそに気をつけないといけません。

取締役や部長級が、下の課長や課員を内側として謙譲語をつけるのは間違いではありません。
けれども、正しい謙譲語はパワハラの正当化にも悪用できるのです。
謙譲語は内側を下げて、外側を上げる敬語です。
自分の内側を下げて何が悪いのか、と開き直ってしまえるということです。
間違いではないから指摘し難いですが、嫌な気分だけが残るので、悪用は良くないです。
何故そこまで下げるのか、と思わせるだけです。

正しいけれど正しくない

家族で例えると、理解が進むと思います。

愚弟や愚息という語彙は正しい謙譲語です。
けれども私は用いません。
愚弟や愚息を用いる人に良い印象を持ちません。
内側をそんなにも下げないといけない状態なのかと思うからです。

家父長制の名残りだからではありません。
愚夫や愚婦、或いは、愚父や愚母でも同様です。
内側をそんなにも下げる必要性を感じません。

謙譲語には正しいけれど正しくないということがあるのです。
だからこそ、お前は内側だから下げないとな、と思うパワハラジジイ如き愚物が賢しらぶったら、嫌な気分になるだけなのです。

勿論、敬語を内外ではなく上下で捉え、下の者は下げる、という愚物は、嫌な気分になるどころの話ではありません。
そいつの人生を疑うだけになります。

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