沖縄でも進む “日本埼玉化計画” について考える。【映画 『翔んで埼玉 2019』】
昨年末に、続編となる映画「翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜」が公開されて話題になりましたが、2019年に公開された前作も好きなストーリーです。
ディスりに対峙する、郷土愛
本作は、「現代パート」と「伝説パート」2つの場面で進んでいきます。現代パートでは、埼玉出身で東京に憧れる菅原愛海(島崎遥香)の両親が夫婦喧嘩をするシーン。
千葉出身の母親と埼玉出身の父親の口喧嘩は、分かる人にはウケるんだろうなと思いながら、沖縄出身の僕は少しぽかんとしていました。
昔話として語られる「伝説パート」では、埼玉解放戦線の中で大宮と浦和で対立するシーンがあります。しかし、そこが同じ「目的(通行手形撤廃)」を向いたときに、地域の垣根を越えて、彼らは団結する道を選びました。
よく「沖縄の人は、郷土愛があるね」と言われることも多いですが、「郷土=沖縄」というのはスケールが大きい。それより、それぞれの地元(住んでいた・いる場所)に誇りを持っている人が多い気がする。私の場合は地元を聞かれると、那覇市よりも首里をイメージする。
ちなみに、前作のW主演であるGACKTさんと二階堂ふみさんは共に沖縄出身です。そんな彼らも地元に対して、インタビューでこう答えている。
平成の市町村合併によって地元と捉える範囲が広がった気もするが、間違いなく愛を持っている故郷の範囲は思っているより、狭いかもしれない。
だからこそ対立することもあるが、埼玉解放戦線のメンバーが地域の垣根を超えて団結したように、力を合わせられる目標は今の沖縄にあるのか?と、考えている…
大谷翔平の上司は、沖縄出身
これは続編の映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』でも出てきたシーン。世代によってピンとこないところもあるが、きっと親近感の湧くお笑いシーンだろう。
埼玉と千葉の県民がお互いの有名人で競い合うシーンもあるが、沖縄にもたくさん有名なタレントがいます。
最近でいえば大谷翔平が入団したロサンゼルス・ドジャースの監督が、沖縄県出身というニュースが流れてきました。もし沖縄が映画の舞台となれば「大谷翔平の上司は沖縄出身!」というカードが出せるかもしれないですね。笑
考えさせられるキャスティング
そして、この映画でいちばんのメッセージ性を感じたのは、キャスティング。先ほども書きましたが、W主演の二階堂ふみ、GACKTは沖縄県出身。
埼玉解放戦線は、最終的に通行手形の撤廃を叶え、ハッピーエンドの雰囲気で映画は終わるのだが、ラスト5分間で私は震えた。
埼玉解放戦線が通行手形撤廃を達成した次の目標は、「日本埼玉化計画」だった。埼玉県は個性こそないが東京のベッドタウンとして住みたい街ランキングでも上位にランクインするようになった。また、多くのチェーン店の発祥であり、ショッピングモールも多く、何もないけどとても便利というのが埼玉だと本作では紹介される。
そんな無個性だけど住みやすい街を日本全国で広げていこうというのが「日本埼玉化計画」なのです。
映画の中ではもちろん作り話として話されているのだが、これは本当に映画の世界の話だろうか。実際に起きていることではないか。
私は、県外から来た友だちと沖縄ドライブすることがあるのだが、沖縄らしさを求めに来た友だちがふと「うちの地元と似ている」と言う景色がある。
うるま市海中道路から那覇に戻る県道33号沿いや、北谷町の国道58号線沿いなどにみられるロードサイドの景色だ。同じようなチェーン店やショッピングモールばかりが並んで、どこにでもあるような景色が見える。
もちろん、沖縄に住む人たちにとっては便利なチェーン店が増えることは、住みやすさに直結してくるが、”埼玉化”する未来についてはもう少し考える必要があるかもしれない。
何度もいうが、この映画のW主演は沖縄出身のお二人であることを考えると、沖縄がこれからどうするか問われる映画のように感じてしまった。
最後に、主演を務めた二階堂ふみの言葉を載せる。