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地球に住めなくなる日

気候変動の実態は、思っているよりもはるかに深刻だ。

現状のままでは、2050年までに100都市以上が浸水し、数億人が貧困にあえぐことになる。温暖化がもたらすのは海面の上昇だけではない。殺人的な熱波、大洪水、大気汚染、経済破綻などさまざまな影響を与え、壊滅的な機器へと向かわせるのだ。

今何が起きているか、気候変動により生活はどうかわるのか?近い将来に訪れる衝撃の世界をリアルにあぶりだす、話題騒然の警告の書。

著者[デイビッド・ウォレスト・ウェルズ]


■わずか75年で壊滅寸前となった地球

私達は、2100年までに平均気温が4℃以上上昇する未来に向かって突進中だ。そうなるとアフリカ大陸、オーストラリアとアメリカ、南米のパタゴニアより北、アジアのシベリアより南は、高温と砂漠化、洪水で住めなくなるという予測もある。これ以上の地域も含めて、生活環境が厳しくなることは間違いない。それが未来の基本路線だ。たった1世代で気候変動が起きようとしているのだから、次の世代でそれを食い止めなくては。次の世代、、、それは私達である。


■隠されてきた「最悪のシナリオ」

私達は変化の勢いに気づくのが遅く、エリート層やその組織のやることを信じてきた。あるいは、温暖化はアル・ゴアが環境問題を訴えるドキュメンタリー映画(不都合な真実)ぐらいから出てきた新しい話で、そんな短期間に事態が悪化するはずがないとたかをくくっているのだろう。

自動車に乗り、牛肉を食べる暮らしは変えたくない。あるいは「脱工業化」の概念が浸透するあまり、今だって化石燃料を燃やす生産活動に支えられていることを忘れているのか。私たちは悪い話をいつのまにか「ふつう」に薄めてしまうのが以上にうまい。窓の外を眺めていつもと変わりなければ、まだ大丈夫と思い込む。似たような話を繰り返し書いたり読んだりするのもうんざりだろう。気候は地球全体の問題だから、政治家の対応もいまひとつの本気度が足りない。温暖化が日々の生活を破壊する威力を、本当には理解できていないのだ。

自分勝手と言われようが、よその国の人間や、これから生まれる世代のことはどうでもいい。目的論的な歴史観に染まりすぎていて、人間の進歩は環境を守る方向にいずれは向かうという考えをすんなり受け入れてしまう。


■気温が2度上昇すると何が起きるか

地球の気温が2度上昇すると、いったいどういうことになるのか。

・地表部を覆う氷床の消失が始まる。
・4億人が水不足に見舞わられる。
・赤道帯に位置する大都市は移住に適さなくなる。
・北半球でも夏の熱波で数千人単位の死者が出る。
・インドでは熱波の発生率が32倍になり、居座る期間も5倍に伸びて、影響を受ける人の数が93倍に増える。

これでも最良のシナリオなのだ。

では3℃上昇したらどうなる?

・南ヨーロッパで早魃が慢性化し、中央アフリカ、カリブ海では早魃がそれぞれ平均1年7か月、1年9か月も続く。アメリカ北部にいたっては5年だ。

・森林火災で焼失する面積は地中海で2倍、アメリカでも6倍以上になる。

4℃では?

・デング熱感染者がラテンアメリカだけで800万人になる。
・地球規模の食糧危機が毎年起こる。
・残暑関連の死者が9%以上占める様になる。
・河川の氾濫被害がインドで20倍、バングラディシュで30倍、イギリスで60倍に増える。
・複数の気候災害が1か所で同時発生することが増え、損害は世界全体で600超ドルに達する。今世界に存在する富の2倍以上だ。戦争や紛争も倍増するだろう。

とはいえ8℃も気温上昇はさすがにないだろう。最近の研究では、地球の気候は私たちが思うより温室効果ガスの影響を受けず、たとえ何も手を打たなくても上昇幅は最大5℃、実際には4℃ぐらいでおさまると予測している。だが5℃でもかなりの数字だし、4℃だって安心はできない。世界は慢性的な食糧不足に陥り、アルプスはアトラス山脈並みに乾燥する。

そんなシナリオと、今の世界のあいだに横たわるもの、それは私たちがどう反応するかという問いかけだ。さらなる気温上昇の一部は、地球が温室効果ガスに遅れて応答する過程のせいで、すでに織り込み済みだ。今後の気温上昇曲線が2℃でおさまるのか、それとも8℃までいってしまうのかは、私たちの選択にかかっている。4℃の上昇を食い止めるには、方向転換するしかない。この本ではそのやりかたを示していこうと思う。


■グローバルな気候変動の連鎖

気候崩壊の連鎖反応は地球レベルで起こるだろう。その規模はあまりに大きく、手品のように目にもとまらぬ速さで進む。地球が温暖化すると北極の氷が融ける。氷が融けると太陽光線が反射されずにそのまま吸収されるため、温暖化が加速する。海水温が上がれば、海水の二酸化炭素吸収量が減って、温暖化はさらに進む。

気温が上がって北極圏の永久凍土が融けると、内部に閉じ込められていた1兆8千億トンもの二酸化炭素が放出される。今の大気中に存在する二酸化炭素の2倍以上だ。一部はメタンとして蒸発する可能性もある。メタンの温室効果は二酸化炭素の34倍。これは100年の長期で比較した数字で、20年間では実に86倍になる。

暑さは植物にも悪影響を及ぼし、樹木の立ち枯れが起こる。一つの国が丸ごと入るほどのジャングルが縮小し、何キロメートルにも渡って続く森林が、そこに息づく民族文化とともに消えていく。樹木が減れば、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する仕組みも機能しなくなり、ますます気温が上昇し、樹木が立ち枯れするという悪循環だ。

気温が上がれば山火事も増え、樹木による二酸化炭素の吸収も減って、地球はますます暑くなる。気温の上昇は水の蒸発を促すが、水蒸気もまた温室効果ガスの一つなのだ。海水温が上がると熱を吸収できなくなり、酸素濃度が落ちる。そうなると、森と同じように二酸化炭素を食べて酸素を出してくれる植物プランクトンはいきていけない。こうして二酸化炭素はどんどん積み上がり、地球はますます暑くなっていく。


■気候カースト

気候変動の鉄槌は、対策もとれなければ復興もおぼつかない街にも振り下ろされるだろう。それが「環境正義」という問題だ。身も蓋もない言い方をすれば、「気候カースト」である。どんなに豊かな国でも、貧しい人達が暮らすのは湿地や沼地、氾濫原などで、社会基盤の整備も進んでない場所だ。

まさに環境アパルヘイトである。例えばテキサス州では、50万人の貧しいラテン系住民が「コロニアス」と呼ばれる地区に住んでいる。そこには下水道がないため、浸水になるとお手上げだ。

世界に目を向けると、この格差はさらに広がる。この先、暑くなる一方の地球で被害をこうむるのは貧しい国々だし、暑くなるのもそうした低GDP国だ。ただし、いままでさんざん大気を汚してきたのは、地球の北側である。

これは気候変動の歴史的皮肉の一つだが、苦難をこうむる側からすれば暴虐と呼んでもいいくらいだ。ただ、持たざる側に過剰に負担が行くとはいえ、気候崩壊の影響を発展途上国にだけ隔離することはできない。北半球はひそかにそれを望むだろうが、気候崩壊は北も南も差別しないのである。


■未来は変えられる

気候変動は、あと数十年すれば深刻なことになる。それでも諦めたり、屈したりすることが正しいとは思わない。戦わずして負けると決めつけて、無自覚な連中がもたらすみじめな未来を粛々と受け入れる前に、尊厳と繁栄が享受できる世界を実現するためにできることをやる。

私達はまだ負けていない。というより、人間が絶滅しない限り敗北はあり得ない。どんなに地球が暑くなり、困難が増えたとしても、それで人間が絶滅してしまうことはないはず。だから正直なところ、私は楽しみでさえある。

自分の子供やその兄弟姉妹たちは、その目で何を見て、どこに注目し、どんな行動をとるのか。自分の子供が子供を産む年齢に2050年前後、世界の気候難民は数千万人になっているかもしれない。彼らが高齢者となる21世紀末ごろには、温暖化のあらゆる予測に答えが出ているはずだ。

その間世界は存在の危機と戦い、子供の世代の人間は未来を作りながら、次の世代を送りだすだろう。前例のない壮大な物語を、子供たちはただ眺めるのではなく、自ら生きていく。物語がハッピーエンドになることを願ってやまない。


■経済生産性に最適な気温は13℃

欧米の豊かな国々では、それが適切かどうかはともかくとして、経済成長が社会の健全さを測る物差しになっている。そうだとすれば、気候変動で発生する山火事、旱魃、飢餓がもたらす損失は莫大なものだ。地球の平均気温が3.7℃高くなった場合の損失は551兆ドルとも言われている。いま世界にある富の2倍近くだ。だが温暖化はその程度では終わらない。

ここ数十年の気候変動への対応は、直接の影響がなかったり、経済的に飛躍できる機会がある場合に限られてきた。ただそうした市場の論理は、往々にして短絡的だ。それでも数年前からグリーンエネルギーへの転換コストが大幅に下がったこともあり、いま大胆な対策を実施するほうが、手をこまねいているよりよほど安上がりだとわかってきた。2018年のある研究報告では、エネルギー転換を急いで2030年までに実現するコストは26兆ドルとはじきだされている。

見方を変えれば、たった十数年のあいだにそれだけの金が動くということだ。重い腰をあげないでいると、コストは雪だるま式に増えていく。ショーン、バーク、ミゲルがはじきだした数字は、気候変動が経済成長を頭打ちにする最悪のシナリオだ。


■国際的な枠組みの急務

きれいなエネルギー源に移行することが最終目的ではないと主張するのは、未来派の活動家アレックス・ステッフェンだ。そんなのは手が届く低い枝の果実だと。次はさらに汚れているガスエンジンを標的にして「動力を使うものすべて電化」するのが宿題だという。さらにはエネルギー需要を減らし、モノやサービスの提供方法を刷新する課題も片付けなければならない。

世界のサプライチューンは汚れたインフラで成り立っていて、労働市場にも汚れたエネルギーが使われているのだ。森林伐採、農業、畜産、埋め立てなどからの排出もゼロにしなくはならない。同時に、自然災害や極端な気象から人間社会のあらゆるシステムを守る必要もある。それを進めていく世界政府のような組織、少なくとも国際協力の枠組みも確立しなくてはならない。その先に一番大変な宿題が待っているとステッフェンは強調する。

それは「活力にあふれ、持続可能な繁栄する未来をともに思い描き、それを漠然と期待するのではなく、積極的に実現しようと文化的な潮流をつくること」だ。

ただ最後だけは違和感がある。ステッフェンほどの知見がなくても、思い描くことなら誰でもできる。というより、私達はすでに解決策は思い描けているし、それどころか現実化もしている。少なくともグリーンエネルギーはそうだ。まだ見つかっていないのは、解決策をあてはめ、実行に持っていくだけの政治のやる気、経済の腕力、文化の柔軟性だ。

なにしろ世界のエネルギーシステム、輸送網、インフラ、工業、農業、さらに私たちの食生活や投資欲まで徹底的にオーバーホールしなければならないのだ。


■行動を決めるのは自分自身

気候変動の脅威は、原子爆弾よりも全面的であり、徹底的だ。2018年、世界各国の42名の科学者が警告を発した。現状のままのシナリオでは、地球上の生態系は一つの例外もなく劇的な変化を余儀なくされる。100年や200年といった長さではおさまらない、地球の歴史上最も激しい変容の時代が幕を開ける。

すでにグレート・バリア・リーフは半分が死滅した。北極圏の永久凍土層は融けてメタンを放出し、もう二度と凍結することはないだろう。平均気温が4℃上昇すれば、穀物の収穫量は半減する。これが悲劇だと感じたならば、食い止める手段を持っているのが自分たちであることを思い出してほしい。

税制を使って化石燃料を急いで廃止する。農業のやり方を変え、牛肉や乳製品に偏った食生活から脱する。グリーンエネルギーと二酸化炭素回収への公共投資に力を入れるなど、やれることはたくさんある。

明白で実現可能な解決案があっても、問題が途方もなく大きいことに変わりはない。これからの地球温暖化が進むにつれて、災害や社会不安、人道危機はますます増えるだろう。化石資本主義とそれを支える政治への怒りは燃え上がり、短慮で過剰な消費行動への非難も過熱していく。

もちろん不屈の戦いを続ける活動家もいて、国を訴えたり、法律規定を働きかけたり、パイプラインの新設に反対したりするだろう。市民権を守り抜くための、非暴力の戦いだ。そうかと思えば出口のない絶望に沈む者、環境破壊に対応する方法はひとつしかないと息巻く者もいる。

この気候の万華鏡にはもう一つ意味がある。地球という星はすべての人のふるさとであり、そこに選択の余地はない。しかし地球を何にたとえて、そこからどんな行動を起こすかはあなた次第なのである。

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気候変動の問題は子供のころから言われ続けていて、さまざまな取り組みが行われてきた。

国際的にも日本政府としても、企業または個人レベルのものまで実に多様な政策、取り組みを行ってきたが、現状の地球環境は悪化し続けている。

また、色々なとこで経済格差が言われているが、気候変動による格差、つまり「気候カースト」が起きていること。

経済、教育だけでなく環境にまでも格差が広がっている。

私も自然に囲まれて生活し、緑に関する仕事をしているので、特に環境変化の影響が大きい人の一人であり、地球環境や気候変動は特に関心のある問題である。

これからの第一次産業などの仕事は気候変動の問題は死活問題なのは当然だが、その恩恵を受けている多くの人々も他人事ではない。

しかし、環境保護の思想は経済的には不利だと考えてる人が多いのも事実だ。

これまでの「環境を配慮してビジネスすると利益がでない」という考えはもはや昔の話しだと思っていて、SDGsやESG投資という考え方がスタンダード化し、持続可能な社会貢献度の高い活動やビジネスこそ多くの人から支持され、経済や教育、環境問題までも変える力を持っていると思う。

私の場合、学校教育などでは「明日からあなたができる環境保護活動」みたいなことを教えられた記憶がある。

たしかに、一人ひとりが環境に対しての行動することは正しいし、問題の解決に前進していると思うが、それは微々たる変化でしかない。

「一人の力」では大きな変化は生まれない。

環境問題に限らず、本当になにか変えたいと思うなら多くの人を巻き込むような、そして相互利益が生まれるようなシステム構築が必要だと考えている。

今の私にとっては「明日からあなたができる環境保護活動」がそのシステムを考えることなのかもしれない。

それは当然、微々たる変化でしかない。

でも、もし「一人の力」だけではなくなったのなら、なにか変わるのかもしれないと勝手に思っている。

私の情報が少なからず皆さんのお役に立てればと思います。
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