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トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル デッドレコ二ング PART ONE』

 今やトム・クルーズの代名詞のひとつとなった『ミッション:インポッシブル』シリーズ。1966年~1973年に初代スティーヴン・ヒルを主役にした第1シーズン、二代目ピーター・グレイヴスを主役にした第2シーズン~第7シーズンまで作られた『スパイ大作戦』、1988年~1990年にグレイヴス以外のメンバーを一新して(前シリーズのキャストであるグレッグ・モリスがゲストで出る回もあり)2シーズン作られた『新スパイ大作戦』というテレビシリーズが原点だ。1996年にクルーズ自らプロデューサーを務めて映画化したのがブライアン・デ・パルマ監督の第1作『ミッション:インポッシブル』だが、クルーズは自分だけのシリーズにしたかったのだろう。基本的なところは残しつつ(ブルース・ゲラーの名前、ラロ・シフリンの音楽ほか)、テレビシリーズの印象を排除してしまおうという行動に出てしまった。テレビシリーズが大好きな筆者としては初めて観たとき、あまりのことに腹立たしさしかなかった。なんてことをしてくれたんだ、と、未だに第1作だけは許せないでいる。とはいえ、クルーズがジョン・ウー映画のアクションをやりたかったんだろうと推測できる2000年の第2作『M:I-2』、チームによる作戦遂行という原点回帰をねらった2006年のJ・J・エイブラムス監督の第3作『M:ⅰ-Ⅲ』、2011年のブラッド・バード監督の第4作『~/ゴースト・プロトコル』までは監督や作風をその都度変えてきた。2015年、今やクルーズのお抱えとなってしまった感のあるクリストファー・マッカリー監督の第5作『~/ローグ・ネイション』からは世界観が統一され、物語も連続性が重視されるようになった。そして、クルーズが危険なアクションに自ら挑戦するというのが売りになり、アクションばかりが前面に出てくるということにもなってしまった。果たしてそれがいいかどうか? だが、齢60歳を過ぎても果敢にアクションに挑戦し続けるクルーズには脱帽するしかない。
 そして、2023年7月に公開されたのがシリーズ第7作の『~デッドレコ二ング PART ONE』だ。筆者はPART ONEを公開初日に立川シネマシティシネマツー・b-studioの極上爆音上映で観てきた。ロシアの潜水艦がAIの暴走によって沈没させられるという事件が起きる。その事件を解くきっかけとなる2本の鍵を奪還する命令を受けたクルーズ演じるイーサンは、ヴィング・レイムス演じるルーサー、サイモン・ペッグ演じるベンジーら仲間と共に動き出す。だが、イーサンの前に、IMFに入る以前に因縁のあったイーサイ・モラレス演じる宿敵ガブリエルが立ちはだかるというのが簡単なあらすじだ。このシリーズの最大の見どころはクルーズが体を張って挑むアクションの数々だ。空港での逃走劇、ローマでのフィアットを使ったカーアクション(宮﨑駿監督のあの作品を思い出した方も多いだろう)、予告編などでよく見かけたバイクに乗って疾走してからの高い崖からのダイブ、オリエント急行を使った列車アクションなど、クルーズはどこまでアクションを極めたら気が済むんだというくらいの、気合十分のアクションシーンを見せる。そんなバカな、とツッコミを入れつつ、齢60歳を過ぎたクルーズのアクションは大したものだなぁ、と改めて思う。そして、この映画のもうひとつの魅力と言えるのが、クルーズにも負けず劣らずの女優陣だ。第5作から登場したレベッカ・ファーガソン演じる元MI6のイルサ・ファウスト、今作から登場のヘイリー・アトウェル演じるスリのグレース、ポム・クレメンティエフ演じる悪役のパリス、前作から引き続きとなるヴァネッサ・カービー演じるホワイト・ウィドウだ。ファーガソンもアトウェルも活躍を見せるが、特にクレメンティエフはちょっと含みを持たせた扱いになっているので、もしかしたら……という個人的な期待も高まる。
 今作の上映時間は約2時間43分(エンドロールが長いので本編的には2時間35分くらいか)。アクションシーンがかなり長めに描写されているので、それだけの時間になったのかと思う。とはいえ、PART TWOの撮影は中断している。2024年公開予定のようだが、それもどうなるか今のところはわからない。いいところでPART ONEが終了しているので、とりあえずは後編を待つしかない。できれば後編の上映時間2時間少々越えか2時間以内にしてほしいものだ。

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