あの苦しみは、自分にしか分からない

僕は未経験から入った体育会系SIerを1年半で辞めた。

辞めてみると、1年半って短いとか、
続けてる同期との感覚のズレとか、
大学の友達との会話に入っていけなかったり、
勝手に後ろめたさを感じたりもした。

喉元過ぎれば熱さを忘れる。
今は、思い出そうとしなければ当時の感覚は思い出せない。

でも、何がそんなに辛かったのか、
それは自分にしか分からないから、思い出してみようと思う。

まず、毎日7:30に起きて、8:40までに会社に行くこと。
朝が弱い僕は毎日朝起きるのが辛かった。
というか、病んでくると夜眠れなくなってきて、早朝覚醒も毎日のようにあったから、
睡眠不足できつかった。

新人は毎朝、オフィスの掃除をさせられる。
僕の次の年の新人が少なく、2年目になってもずっと掃除をしていた。

また、新人は電話対応もするから、1日に何件もかかってくるとかなり仕事の手が止まる。その他庶務系で様々な仕事があり、仕事量が増える原因になっていた。

朝9:00から12:00まで午前の仕事をする。
上司のタイミングを見計らって、相談や確認をする。
1の質問に対して10の詰めが返ってきて、時間が無くなる。
メンタルと体力を削りながら、なんとか昼まで仕事をする。

昼休みは睡眠不足の自分にとって、絶対に仮眠したい時間だった。
ただ、ミーティングが長引くと昼休みは潰れ、その後休みを取れるような雰囲気では無くなり、結局仕事をする。

チームのミーティングでは議事録を取る。
エクセルで、かなりきっちりと取り、見た目や内容をチェックされ、修正に時間がかかることもある。

へとへとのまま、PJの成果物のレビューを上司に頼み、
詰めを受け続ける1.2時間。

その後、無心でエクセルを叩いてなんとか修正して上がったら大体21:00。

帰っても、疲れと昼間受け続けたストレスで落ち着かない。

飯食って、風呂入ったらもう寝る時間で、
今日受けたストレスを制御しつつ、寝る体制に入る。

残業が多いと回復時間が減ってきつい。

ただ、それだけならまだいい。
上司につねに詰められたり、
しんどいのに気持ちを制御して成果物作成に集中しようとしたり、
ことあるごとに会社の人たちからの心無い対応を受けたりしてると、
本当にエネルギーが無くなってくる。

それでも、まだ仕事が進めばまだいい。

ちゃんとやろうとしているのに、毎度心を折られるような対応をされるから、疲弊する。

まず、業務指示を受けた時に、
分からないことがたくさんある。
でも、もしかしたらこうかな?と考えられる部分はある。

そういう指示を受けた時は、
どういうスピード感で、どういうコミュニケーションをとりながら、期日と質を明確にして取り組むための情報を確認する必要がある。
とりあえず進めます!できませんでした、
となった時にブチギレられたことがたくさんあるからこっちも確認に必死だ。

だけど、質問や確認をしていても、
よく分からない返しをされる。
不安点は解消されない。
果ては、「何でもかんでも聞かないと出来ないのか!」と怒られる。
僕はここで、どこまで聞いてどこまで聞かないか、という綱渡りのような感覚を強いられる。
もちろん、調べれば分かるようなことをいちいち聞いてくる人にイラつく感覚はわかる。
だけど僕の場合、質問しないと分からないまま進んでしまう、という焦りの中で質問しているわけで、それを怒られてしまうと、どうすればベストなんだろう、という気持ちになる。

何度かこういうやりとりを繰り返してると、
正直分からないけど、まあやりながらなんとか調べるか、とか、
この上司以外に聞ける人に聞くか、みたいな算段を立て始める。

上司はいつまでにできるのか、と聞いてくる。
分からないことが多いのにいつまでにできるなんて分かるはずが無い。
ただ、無制限に作業できるわけではないから、期日を切る必要性は理解している。

しかし、これでまず明日までに終わりますと言ったとする。
すると、今日の時点で半分までは終わっている必要がある。
そしてそのチェックポイントの時点で進みが悪いと、どうリカバリするのか、と詰められる。
期日ギリギリに間に合わないです、と伝えると怒られるから、
間に合うかあやしいな、という時には中間地点で相談するけど、
相談しても詰められるばかりで時間と体力とメンタルが無駄になるから、間に合いそうになくても相談しないようになる。
どうせ相談して2回怒られるくらいなら、間に合わずに1回怒られるほうがマシだと思うようになる。

あとは、進めていく途中に分からないことなどを確認すると、最初に聞いた時より質のハードルを上げられたり、何故か新たなタスクが増えてしまうことがあるから、
本当に重要なこと以外は聞かない。

そんな感じだから、
成果物のレビューで上がってくるものは、
上司の意図とある程度ズレたものになる。

聞けないから、決め打ちでやっている所があり、
時間が無いから、調べきれずにある程度で埋めてる所もあるからだ。

なんでここをこうしたんだ、と聞かれて、
意図を答える。
そしてスタンスやらなんやらを散々詰められる。

ここをこうしてくれ、という指示ではなく、
外堀からたくさん質問を受け、揚げ足を取られる。
どう答えればこの時間が早く終わるのかだけを考えて答える。

全然ダメだと怒られる。
そしていつまでにできるのか聞かれる。
残業して明日までには、と答えて、
また残業するのかと怒られる。
そして、段取りについて、確認不足について、また説教が始まり、
使える作業時間が削られていく。

これが、自分にやる気がなくて発生していることならしょうがない。
だけど、自分が真剣にやろうと行動している中で、キレられるとやる気も無くなる。

辞める直前にこんな出来事があった。
構築作業のリハーサルをする予定だったが、成果物の修正が嵩み、本番までにリハーサルの時間を取るのが難しくなっていた。

僕は残業してやりますと言うと、安易に残業するなと怒られ続けていた。
残業をしたいと言うと上司から仕事の進め方について説教され、うんざりしていた。

だから、定時内でなんとか終わらせるために、作業内容に優先順位をつけて、
リハーサルを削る方法を提案した。
前に、リハーサルは出来たらでいいという上司の言葉を踏まえ、現実的に期限内に終わらせるための提案だった。

「ふざけんなよ!」とキレられた。

怒りに震えた表情の上司が僕を睨みつけていた。
僕はなんでこんなに怒られるのかわからなかった。
じゃあ、どうしたらいいんだろう?
上司から言われた色んなルールを守るために、必死になって提案してもこんなにキレられるなら、
最初から適当にやっていれば良かった。
自分、馬鹿みたいだなと思った。

これまでも、本番作業中に一日中叱責を受けたり、
残業申請に対してめっちゃキレてきたり、
しんどいことが続いていたが、
自分が頑張ろうとしていることに対してもこんな仕打ちをするのか、と思うと
全てのやる気が無くなっていった。

残業を続けて、なんとかPJを収めた。
その次の日、上司との振り返りを実施した。
上司は僕を、全然一人前の働きができていない、なぜできないのかを考えるべきだ、と説教した。

僕は1週間後に上司に辞めることを告げた。

上司は、ネットで見たあらゆる引き止めを言ってきた。
まだ何もできてないくせに辞めるな、
転職したとしても変わらない、
上司が嫌なら配置変えする、
部署異動してもいい、

僕は、こんな引き止めまでベストを尽くすなよ、と呆れた。
上司は働きすぎだし、頑張りすぎだ。

結局、僕だって加害者だと思う。
経験が無い中で、たくさんの迷惑をかけてきたと思う。
上司の視点から見れば僕は、
何考えているか分からなくて、ミスもするし、自分が色々と教え込まないと一人前にならない、という事だったんだろう。

上司を恨むと言うより、会社の風土自体がやばかったし、
環境とか、仕事量とか、責任とか、色々あったんだと思う。
事実、若手は3年以内にほぼ全員辞めてしまっていて、中堅層がぽっかり抜けていることが明らかに問題なのに、
それが真面目に話し合われていない時点で、
上司だってこのしんどい中でベストを尽くした結果だったのかもしれない。

ただ、僕はしんどかった。
自尊心が削られ、生きていくエネルギーが無くなっていく感覚だった。
僕が繊細で打たれ弱いタイプだったから、
もっと体力がある人なら適応できたのかもしれない。
ただ、僕にとってはつらい環境だった。

僕は最近転職をした。
環境が違うと、全然生きやすさが違うのだなと身に沁みている。
かといって、前職が悪というよりは、合わない人には合わないというだけなんだろう。

結局の所、事実として残ったのは会社を1年半で辞めたということだけだ。

それを肯定しようと、否定しようと、
事実は変わらない。
転職もまあまあ大変だったし、「会社に適応できなかった」という欠落が自分の中に刻まれてしまっている。

肯定も否定もしない、けど、苦しかったなあ、でいい気がする。
それも無かったことにしてしまうと、苦しくても頑張っていた当時の自分に不誠実な気がする。
欠落を埋めていくのはこれからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?