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映画「ドライブ・マイ・カー」を観て

本当に他人を見たいなら、自分自身を深くまっすぐに見つめるしかないんです。

ドライブ・マイ・カー

3日前に新型コロナ陽性が判明。実家帰省前でセーフ。自宅待機突入です。そんな中、Amazon Primeのトップページにドライブ・マイ・カーのタイトルがアップされていました。

3時間弱? 見る、見る!待機期間中で時間は両手に余るほどあるぜ!

その結果、、
ドライブ・マイ・カー、自分史上最高の邦画でした。

どんなに愛していて、心の奥深くで繋がっていて、大切な人でも、その人のすべてを覗き知ることはできない。覗き知ったことを知られてしまうと、離れていってしまうかもしれない。そんな思いを胸に自分に正直になれなかった主人公、
家福。

寡黙な中に壮絶な過去を内に秘めながら、その過去を冷静に見つめて、言の葉にして紡ぎ、家福の過去と繋がりを持ったドライバー、
みさき。

空虚な自分を何かで満たすために、自暴自棄になり、分別の無い行動に走しる若手俳優、
高槻
(空虚であるが故に音や家福の芯の部分を引き出す器の役割をしていたと思う)。

悲しい現在や過去を持つ人々の中で、淡々と、そしてしっかりと自分や周りの人々もガイドする灯台のような存在のコーディネーター、
ユンス。

そして、映画の中心にある「ワーニャ伯父さん」。私はワーニャ伯父さんについて知らなかったですが、これがメタファーとして主軸にして見るとよくわかるみたいです。

キャラクターと同様に複層的な見方がありながら、どんな悲しく、つらい過去でも受け入れて自分自身を正直に真っすぐ見つめることを一本のテーマとして描き切った映画に思えました。

作り手側と鑑賞者の距離感が絶妙というか、無理で過度な演出がなく、淡々としながら、鑑賞者のそれぞれの思いに委ねられた物語の起伏。まったく3時間という時間を感じさせない丁寧なストーリー作り、どこかノスタルジックで、自身が移入してしまうフィルムワーク。

私が見た邦画の中でベストと言える切なくとも希望の詰まった美しい映画です。

西島さんの発する「あぁ」が、とてもつもなくカッコいいです。西島さんと村上春樹の描く少し陰のあるけど、ついつい気になってしまう、放っておけない男性像の相性もぴったりでした。

「うん」とか「そう」とか「はい」ではなく、
自然に低めの声で「あぁ」と言える大人になりたい。

2022年の年末に、Amazon Primeで良い映画を鑑賞できました。

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