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1級キャリアコンサルティング技能検定の「理論的立場」について

今年のキャリアコンサルティング技能検定(1級)の試験要項が発表になりましたね。

今年から実技(論述)の試験形式が変更されるということで,受検界隈では少し話題となっています。

さて,1級キャリアコンサルティング技能検定の実技(面接)試験の実施要項には,次のように記載されています。
詳細は,キャリアコンサルティング協議会のホームページをご参照ください。

https://www.career-kentei.org/about/

最初に受検者(事例指導者)から自己紹介(ご自身の専門領域や理論的な立場などについて1 分程度で説明)し、事例相談者に対し事例内容についての説明を求めてください。

上記ホームページ「合格に求められるレベル 評価区分とその内容 PDF」より
https://www.career-kentei.org/wordpress/wp-content/uploads/grade1_jitsugi20230803.pdf

面接の最初に,「自分の専門領域や理論的な立場」を自己紹介の中で説明することが求められているのです。

受検の時には,いろんな方と面接練習をしてきましたが,「来談者中心療法」と「システマティックアプローチ」を自分の拠って立つ理論である(理論的立場である)と自己紹介されている方が大多数だったように思います。

もちろん,どの理論をベースに自分のキャリアコンサルティング(キャリアカウンセリング)を実施するかは,その人の専門性によりますし,「この理論でなければ受からない」ということではないはずです。

しかし「システマティックアプロ―チ」の背景にある理論はどうも来談者中心療法ではありません。

「キャリアコンサルティング理論と実際 6訂版」で,木村周先生から著作を引き継がれた下村英雄先生のご講義を,3か月ほど前に聞かせていただく機会に恵まれました。

下村先生によると,「我が国のシステマティックアプローチは,Bezanson&Decoffが示したものがもとになっているが,Decoffは『行動アプローチ』の人なので,システマティックアプローチは,基本的には行動アプローチ(行動療法的カウンセリング)のはずである」というのです。

すなわち,システマティックアプローチは,行動療法的アプローチが土台になっているというのです。

一方で,「カウンセリング・モデルとしては,システマティック・アプローチをとる。また,カウンセリング・アプローチとしては折衷的」というのが「キャリアカウンセリングの特徴」(木村・下村,2022)であるという点にもポイントです。

関係構築の段階では,ロジャーズの手法を用いてじっくり相談者の話を聞く。そして,どこかの段階で,相談者が行動できるレベルの目標を設定する。

これが,システマティックアプローチの肝の部分で,かつ来談者中心療法を理論的立場とする皆さんが苦労なさる部分だと思います。

ところでロジャーズは,それまで「来談者中心療法」と呼んできた自分のやり方を「パーソンセンタードアプローチ」と呼ぶようになりました。ただ,「私の拠って立つ理論は『パーソンセンタードアプローチ』です」というキャリアコンサルタントに,私自身はあまり出会ったことがありません。なぜなのでしょうか……。

……私の理論的立場ですか?
私はもともと教育分野のカウンセリング(教育カウンセリング)を学んだことが出発点なので,國分康孝先生のカウンセリングが土台にあります。
(そのように試験でも伝えました。)
そこで,あまり来談者中心療法は前面には出しません。

ただし,「分かろうとするな,直そうとせよ」「言葉尻をつかむな,感情をつかめ」ということは意識しています。

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