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いわゆるMBTIと「16パーソナリティズ」の違い

今年は若い人の間でMBTI®(注)が流行りました。
韓国の人気アーティストの動画がきっかけとなって広がったそうです。

(注)MBTI is a registered trademark of the Myers&Briggs Foundation in the United States and other countries.

ところで,インターネットで「MBTI」と検索すると,まず先頭に表示されるのが「16personalities®」というものです。これは,イギリスのNERIS Analytics 社が提供している心理検査のようです。

性格タイプをアルファベット4文字で表示するところなど,MBTIに類似していることも多いのですが,それぞれのツール設計の根源的なところに大きな違いがあります。すなわち,16personalities=MBTI【ではない】のです。

【1】そもそも16personalitiesに,MyersもBriggsも関わっていない

MBTIは略称で,正式には「Myers‐Briggs Type Indicator®」と言います。
このメソッドを開発したKatharine Cook Briggsと娘のIsabel Briggs Myersの名前が入っています。

16personalitiesのサイトを見ると,「©2011-2023 NERIS Analytics Limited」と書かれています。つまりこの検査が公開されたのは2011年になりますが,キャサリンもイザベルも40年以上前に亡くなっていますから,16personalitiesの開発に関われたとは思えません。二人が開発者でないのなら,16personalitiesがMBTIであるはずがないのです。

実際,NERIS Analytics 社も「16personalities=MBTI」と言っているわけではなさそうですし,むしろ16personalitiesの特徴や独自性をアピールする方が,16personalitesを広めるためには有効であるはずです。このあたりについて,NERIS Analytics 社の見解を明確に述べている資料をご存じの方はお知らせください。参考にさせていただきます。

【2】16personalitiesは「personality」をアセスメントするもの

16personalitiesは,名前の通り「personality」をアセスメントするものです。このpersonalityは,ロングマン現代英英辞典(をネットで検索したもの)によると「someone’s character, especially the way they behave towards other people」という字義が第1項に出てきます。characterの中でも,他人に対する態度をpersonalityというと説明されているわけです。

すなわちpersonalityは,その人の言動をもとに判断される性格であり,他人からでも見えるものになります。(上記の英英辞典は,その後「the qualities of character that make someone interesting or enjoyable to be with」,「someone who has a very strong character and is very different from other people」,「the qualities which make a place or thing different and interesting」と書かれています。いずれの字義を見ても,その人のpersonalityは,他者との違いや他者との関係の中で定義づけられるものとして示されているのです。)

16personalitiesは,SD法による回答を求めています。SD法(セマンテック・ディファレンシャル法)とは,反対の意味をもつ一対の言葉を両端におき,5段階や7段階の評価尺度を用いて対象を評定してもらう方法です。実際,16personalitiesのサイトにある「性格診断テスト」の最初の設問は「定期的に新しい友達を作る 同意する 同意しない」となっており,7つの回答欄を設けて自分自身を評価する,という方法を取っています。これも,16personalitiesが,他者との違いや他者との関係の中で定義づけられる「personality」を測定しようとしていることの表れと言えるでしょう。

【3】MBTIは「character」をアセスメントしようとする

これに対して,MBTIはcharacterをアセスメントしようとします。こちらもロングマン英英辞典(をネットで検索したもの)によると,characterは「the particular combination of qualities that makes someone a particular type of person」(ある人を特定のタイプの人にする特定の資質の組み合わせ)が第一義となります。この語義には,「他者との違い」や「他者との関係」という視点はありません。その人の本来持っている固有の資質というニュアンスの言葉,それがcharacterとなります。

(もっとも,characterにも「the particular combination of features and qualities that makes a thing or place different from all others」(他のすべてのものとは違うものにする特徴や資質の特定の組み合わせ)という意味があります。これは他者との関係の中で定義づけられる「性格」という意味ではないかともとらえられます。しかし,他のものと違う「固有の」というニュアンスをより強調しているのではないかとも思えます。)

その人固有の,本来の性格characterをアセスメントしようとすることが,MBTI(質問紙とその結果を受けてのエクササイズ)が追求する目的・ねらいということになります。

人は,理性があるので,自分の本来の気持ちや衝動をそのまま言葉や行動に移すとは限りません。職場であれば職場にふさわしい言動をしますし,家庭の中で職場のような言動をされると違和感がありますよね。このように人は,様々な「顔」を使い分けながら社会に適応して生きています。心理学用語ではこれを「ペルソナpersona」と呼びます。そしてpersonaは,personalityの語源と言われているのです。MBTIは,このpersonaを取り払った,その人本来の性格についてアセスメントしようとしているわけです。

【4】まとめ

16personalitiesはpersonalityをアセスメントする。MBTIはcharacterをアセスメントする。これは,この二つの心理アセスメントツールの本質的な違いを示しています。どちらが良いとか悪いとかいうことではなく,(信頼性や妥当性をしっかり検証されているものであれば)目的に応じて使い分けていくことで,より自己理解を深める助けになるかもしれません。

そこで,16personalitiesを受検された方にも,MBTIを受検していただくことをおススメします。日本MBTI協会や協会の認定ユーザーに連絡してみてください。

もし,16personalitiesの結果とMBTIの結果が一致して,その結果に本人が納得できるなら,それはおそらく自分らしさを活かして社会の中で生きていけるのだから,それはそれで幸せなことです。

もし,16personalitiesとMBTIの結果が一致しなくても,どちらかが本来の「自分らしさ」だということに納得できるのなら,それは自分らしさはありつつも,社会にうまく適応して生きていけているのだから,それもそれで幸せなことではないでしょうか。

【おまけ】日本語の「パーソナリティ」と「キャラクター(キャラ)」

この記事は,英語のpersonalityとcharacterの語義の違いに注目して私見を述べました。しかし,日本語の「パーソナリティ」と「キャラクター」は,英語のニュアンスとひっくり返っているように思います。例えば「キャラを演じる」「キャラが立つ」という言い方をするときの「キャラ(キャラクター)」は,「周りの人に見せる自分」であり,それも自在に作り変えることができることが前提になっています。

こういう言い方はここ20年くらいで広まった言い方になりますが,ここでの「キャラクター」は,「漫画・アニメ・ゲームの登場人物」としてのキャラクターという意味から派生したと考えられます。漫画やアニメやゲームの登場人物は,人が創造するものなのですから,自由自在に作る・作り変えることができるというわけです。

したがって,今回のこの記事は,読みにくかったかもしれません。ご質問があれば,遠慮なくお知らせください。


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