EPOCHMAN「夢ぞろぞろ」観劇記:「夢」の対義語は「現実」…だけじゃない、のかもしれない。

「見る夢」は過去の組み合わせで、「夢見る」のは未来の計画で。
だから「夢」の対義語は、過去でも未来でもない「現実」に、なる。
だけど、「見る夢」は覚めたら忘れてしまうことが多い。
だとしたら「夢」の対義語は「記憶」にもなるのでは?
そして「夢見る」人は叶わないことを恐れる。
だとしたら「夢」の対義語は「不安」にもなるのでは?
「夢」から覚めることに怯えたり、「夢」の前で立ちすくんだり、
そんな二人が出会ったのは、誰も立ち止まらない、ホームの売店。

…そんな感じの、でもこれは「コメディ劇」に分類される…でいいのかな?
私が敬愛するEPOCHMAN(小沢道成くんのプロジェクト)の最新作は、
小沢くんがメインで関わる芝居としては3年ぶり(「巣穴で祈る遭難者」以来)、
EPOCHMANとしては「みんなの宅配便」以来4年ぶり!
個人的にも去年の「メタルマクベス」出演や、大傑作「Brand new OZAWA mermaid!」を経ての二人芝居、期待しないわけがない。
というわけでそそくさと前売り販売イベントでチケットを2日分確保し、
当日楽しみにしてシアター711に入場したわけですが…。

実を言うと、当初の想像していたストーリー展開とは全然違っておりまして。
「ある事情でホームの売店にやってきた青年に、昔の想いを重ねるおばちゃんの話」
だと思ってました。
…いやまぁ、たしかにそういう話だったのですが、もっとおばちゃんを中心に話が動いていくものというか、「おばちゃんが物語に動かされていく」話だと思ってたんですわ。最近のEPOCHMANって、そういうお話の傾向が強かった(と思ってた)ので。

でも蓋開けてみたらおばちゃんは割と狂言回し的というか、おばちゃんが積極的に物語を動かしていく、それに巻き込まれる青年と言う構図だったのにちょっと驚いたというか。
実はこの構図は「みんなの宅配便」もほぼ同様なのですが、おばちゃんと青年の間の関係性はもっとドライというか、青年は「きっかけ」に過ぎない、「おばちゃんが話を回すのに青年が必要だっただけ」と言う感じだったのが、予想外だったのです。

だから、小沢道成くんは(過去と現在と言う区分けはあれど)おばちゃん(田中夢子さん)だけしか演じなかったのに対して、共演の田中穂先くんは青年を含む全く別の3役を演じわけたのは特徴的だったし、穂先くんは演じ分けが素晴らしくまさにベストな共演だったなと。

で、「おばちゃん」が過去と現在を巧みに切り替えながら、青年を巻き込んでどんどん話を進めていくのだけど、割と雑談的な(コレもEPOCHMANには珍しい)話が多い前半から、「夢」というキーワードが表面化して急展開していく後半へのセリフと演出の発想というか、構成力が実に良かったのです。みっちー、ホントに上手くなったなぁ。

「夢」を前にして(文字通り)立ちすくむ青年に対して、自分の過去を話して慰める…ようなふりをして、むしろおばちゃんの方が青年を使って自分の夢を再現する。おばちゃんの「夢」は、実は何十年も前から止まって、おばちゃんの「記憶」の中で繰り返されているだけだった。
二人の「夢」は実は決して重ならないし、交わらない。でも、お互いの話をすることで、なにかのきっかけが生まれる…ということもない。
80分の芝居の中で、実は何も変わってない。おばちゃんも、「売店(そこ)」にいる理由はわかる。けど、語って再現したけど、何も変わることなくやっぱりそのまま続いていく。
だからこそ、おばちゃんの「最後のセリフ」が絶妙に効いてくる。

「コメディ劇」として楽しめる構成をとっておきながら、私には「かなりハードな物語」として幕を閉じるように感じて、
1回観ただけでは戸惑いと疑問符ばかり浮かんできて、なかなか消化することができず、
千秋楽に2回めの観劇ができたからこそ、ようやく噛みしめて飲み込むことができたな、と。
EPOCHMANは、小沢道成くんは、ニコニコの笑顔で相変わらずハードなパンチを叩き込んでくれたな、と。
きっちり進化して、新たな展開を提示して、
これはひょっとしたら「EPOCHMANフェーズ2」?…と感じた作品でした。

そして今回もまた舞台セットが非常に凝っていて、小沢くんもパンフの中で記しておりましたが、
前作が上下左右、舞台全体を余すとこなく利用したのに対して、
今回はあくまで舞台中心に据え置かれた「駅の売店」の装置のみ。
仕掛けも非常にシンプルに効果的に使って(最後に「なるほどそう見立てるのか!」という「らしい」驚きも加えつつ)、
二人のお芝居に重点を置くように作られていたのが特徴的でした。

…が、これもこのセット作るのめっちゃ大変だっただろうし、
また再演しづらいセット作ったなぁ…と(;^ω^)

ただやはりできれば再演をしてほしい、もっと沢山の人にこの「小沢道成」という役者の本領を観てほしいと思うから、
今回公演数が決して多くなかったこともあるので、いずれ再演してほしいなと願っております。
(なので、あまり深いところに入った感想は避けてこのくらいで)

さぁて、すでに次のEPOCHMANの舞台が発表されましたが、
次は年明け早々、駅前劇場に小沢道成くんがたった一人で立ち向かう、
私も大好きな演目、「鶴かもしれない2020」!

初演、再演とも傑作ではありましたし、ある意味小沢道成くんの原点ともいうべき
この作品をつかって、単純に一人芝居をやるには絶対手に余る「駅前劇場」と言う舞台をみっちーがどのように料理し、遊び、楽しませてくれるのか?!
小沢道成くんの次の「夢」に対しては、私はもう「ワクワク」しか感じておりません。
みんなで盛り上げて、2020年の「初夢」を楽しんでいきたいな、と!!

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