2021年ベスト・アルバム20


 2020年よりもアジアのポップ・ミュージックを聴いた2021年でした。いまやグローバルな注目を集める韓国はもちろん、タイも興味深いと思える作品が多かったです。イギリスもどんどんおもしろい音楽が生まれてますし、奇しくも私が長年追っている国の音楽シーンから新たな胎動を感じる年でもありました。

 選考の対象になっているのは、フル・アルバム、ミニ・アルバム、EPです。作品名を〈『』〉で括っているのがフル・アルバム、〈「」〉はEPとミニ・アルバムでございます。ブログやWebマガジンで評した作品は、タイトルにリンクを貼っております。こちらもぜひ読んでください。



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20 Ocean Wisdom『Stay Sane

 イギリスのラッパーによる力作は、これまでよりもシリアスな批評眼を打ちだしている。高速ラップが得意なおもしろラッパーという色物的扱いを受けることも多かったが、そうした括りを打ち破るだけのエネルギーでいっぱいだ。



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19 Ghetts『Conflict Of Interest

 グライム・レジェンドが作りあげた傑作。生活と社会を描くのみならず、その2つに対するゲッツなりの返答を明確にしているのが素晴らしい。男性視点ばかりでない言葉選びも光る。



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18 BIBI「Life is a Bi…(인생은 나쁜X)

 スウィートな毒々しさが際立つシンガーソングライターのEP。常に前向きで優等生的な立ち居振る舞いを求められがちなK-POP界において、稀有なオルタナティヴ性を放っている。



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17 The Volunteers『The Volunteers

 ペク・イェリン率いるロック・バンドのアルバム。ライオット・ガールの視座に通じる歌詞と性急なグルーヴが交わる内容に魅せられた。



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16 Kojaque『Town's Dead

 アイルランドのラッパーは、最新作で現地の厳しさを描いた。それでいて、自身のコミュニテイーを尊ぶポジティヴさを忘れない姿勢はザ・ストリーツ的だ。



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15 Yaw Tog「TIME

 ガーナのドリル・シーン(アサカーと呼ばれているそうだ)が生みだした新たな才能ここにあり。若くしてスキルが飛びぬけているところも含め、デイヴを想起させるラッパーだ。



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FYI Chris『Earth Scum

 サウス・ロンドンのダンス・ミュージック・シーンで活躍するユニットによるアルバム。厳しい世情に抗うためのビートが鳴り響いている。



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13 Yu Su『Yellow River Blue

 中国生まれのアーティストが発表した最新作。多彩なエフェクト使いやリズム・パターンといった高いアレンジ力が光るエレクトロニック・ミュージックを楽しみたい方はぜひ。



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12 Shaybo『Queen Of The South』

 サウス・ロンドンのルイシャムから現れたラッパーの作品。ジョルジャ・スミスが参加し、女性の連帯を誘う視点もある“My Sister”の歌詞は必聴。



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11 Julien Baker 『Little Oblivions』

 もともと定評があったストーリーテリング力はさらなる高みに到達し、ジュリアンのヴォーカルはこれまで以上に多様な感情の機微を表現している。丹念な内省を経たことで得られた深い言葉の数々は聴きごたえたっぷり。



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10 Ayra Starr『19 & Dangerous』

 ナイジェリアのシンガーソングライターが発表したデビュー・アルバム。窮屈な規範を強いる世界に対する反骨心から、愛やメンタルヘルスといった個人的事柄まで、自らの脳内をぶちまけたような熱量に惹かれた。



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9 Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams

 流麗かつ平易な言葉で人々の呼気や街の匂いを描いた作品。。“Hope”の歌詞は、デヴィッド・ボウイの名曲“Rock' N' Roll Suicide”を想起させる。



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8 Lava La Rue「Butter-Fly

 イギリスのクリエイティヴ集団NiNE8を創設したアーティストによるEPは、世の規範とされているものへの反骨心でいっぱいだ。女性差別や過剰な資本主義への疑問を示しつつ、自分を受けいれてくれたロンドンという街への愛情も目立つサウンドが鳴り響いている。



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7 TangBadVoice『Not A Rapper

 タイのラッパーが発表したファースト・フル・アルバム。社会に向けられた批評眼は驚くほど鋭利だ。音数に頼らない適材適所なプロダクションもハイレヴェル。



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6 Jorja Smith「Be Right Back

 『Lost & Found』に続くフル・アルバムの前菜的作品。洞察力が増した歌詞は滋味で溢れ、生活とその背景にある社会の匂いを漂わせる。



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5 Salamanda『Sphere』

 韓国のDJ/プロデューサーデュオによるアルバムは、スティーヴ・ライヒにインスパイアされたサウンドが特徴だ。聴き手の想像力を花開かせる極上のアンビエント。



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4 (G)I-DLE「I Burn

 韓国の人気グループによるEPは、先鋭さと親しみやすさが共立している。ワルツの3拍子を鳴らす“한(寒) (HANN (Alone In Winter))”など、随所でおもしろいアレンジが顔を覗かせる。



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3 John Glacier『SHILOH: Lost For Words』

 ロンドンのハックニーが生んだラッパーによるアルバム。自らの人生をどう生きたいかという想いが込められた言葉はとてもパーソナルでありながら、多くの人が共鳴できるであろう視座が色濃い。



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2 DaveWe’re All Alone In This Together

 UKラップに留まらず、イギリスの音楽シーンを代表するスターとなったラッパーの最新アルバム。UKラップの音楽性がいかに多様かを示すだけでなく、生活と社会を克明に描きだす言葉選びの進化も際立つ。



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1 IU『LILAC

 2021年を代表する1枚を挙げるなら、迷いなしにこのアルバムだ。さまざまな想いを背負う者だけが表現できる情感で満たされている。









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