享楽的なグルーヴが渦巻く秘境 〜 Saagara『2』〜



 ポーランドのクラリネット奏者ヴァツワフ・ジンペルは、ジャズ好きの間では広く知られた存在だ。ザ・ライト、ヘラ、ザ・レゾナンス・アンサンブルといったプロジェクトに参加し、さらにソロでも『Lines』(2016)という良作を残している才人だ。


 そんなジンペルが中心となって結成されたバンド、サガラのニュー・アルバム『2』を聴いている。本作はサガラにとって2枚目のアルバムで、前作『Saagara』から約2年ぶりとなる。サガラはクラリネットにくわえ、ガタム、カンジーラ、パーカッション、ヴァイオリンで構成された5人組。ジャズはもちろんのこと、アンビエント、ミニマル・ミュージック、さらにインドの古典音楽であるカルナティック・ミュージックを混ぜ合わせたサウンドが特徴だ。


 その多彩の音楽性の中で特に耳を引くのは、フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒなどに通じるミニマル・ミュージックの要素だ。この側面を象徴するのが「Uprise」で、微細な変化でグルーヴを創出しようとするプロダクションは、もろにミニマル・ミュージックと言っていい。静謐ながらスリルに満ちたシンセ・フレーズも印象的だ。


 また、同じフレーズやリズムを反復させる手法がよく見られる点は、リカルド・ヴィラロボス的なミニマル・ハウスを連想させる。ようはダンス・ミュージックとして踊れる曲も多いということだ。そういった意味で、本作はとても享楽的な作品であり、頭よりも腰で聴いたほうがいい。秘境チックなサウンドスケープも含め、本作はあなたの意識を快楽の海へ飛ばしてくれる。

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