見出し画像

道しるべ

2020年11月27日、トニー・シェイが46歳の若さで、この世を去った。如何に彼が偉大な起業家だったかというのは、以下の記事を見てほしい。

20代前半で約200億円のエクジット後、10年後には、アマゾンへザッポスを約1200億円で売却する。その後も経営者として独特の経営方針を打ち出し、ラスベガスの旧市街の復興など、社会への貢献も惜しまず続けた。

実は、彼は高校時代の二つ上の先輩であり、彼の弟とは親友であり、同級生であり、今でも不定期に連絡を取り合うほどの親しいファミリーだった。悲報をニュースで知った際は、もの凄くショックで、身体の力が抜けてしまうような虚無感を感じたが、その時は、なぜそこまでショックを受けたのかが理解できなかった。

数日前に家族のお別れ会がオンラインであり、参加させて頂いた時にふと自分の虚無感の理由がわかった気がした。

お別れ会の内容は、公開しないという条件のもと参加させて頂いたこともあり、内容については詳しく触れることはできないが、お別れ会では、彼の人生を振り返り、たくさんの方々が彼の功績をたたえ、社会にとっての大きな損失を悲しんだ。

僕にとってのトニー・シェイ

サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡って2、30分ぐらいのところにある一学年80人で構成されるユダヤ系の高校がある。アジア系は数人程度しかいない学校だった。トニーは、二学年上の先輩だった。ただアメリカの場合は、あまり先輩後輩でわかれるというよりは、どのクラスを取るかなどで学年が違う生徒も同じクラスを取ることもあり、僕は彼とはコンピューター・ラボでよく一緒になることが多かった。当時は、Pascalという言語を勉強していたり、低速ネットで様々な通信を駆使して、いろんなことを実験していた。ただ彼は常に別格で、横目に本当に賢い人っているんだなーという印象しかなかった。でもこういう人が取り組むならば、これからは、コンピューターの時代が来るんだろうな、と感じていた。

その後、彼はハーバード大学に進学し、賢い人はハーバードに行くんだなーと。そして、200億で会社を売却…そして投資した会社の社長になってアマゾンに1200億…。ああ、賢い人は、会社を売却とかしちゃうんだな…。投資とかしちゃうんだな、そして、地域創生までしちゃうのか…。よく考えると、僕にITの可能性を自覚させたのも、ハーバード大学の存在を教えてくれたのも、事業が凄い金額でEXITできることも、投資から経営に参画できることも、地域創生や文化貢献が大事だということも、全部、トニーが見せてくれたことだ。4年間、同じ環境で育った人間が為し得たことだ。

間違っても自分とトニーを同列なんて思ってもいないし、彼と比べたら自分なんて、鼻毛のさきっぽぐらいの実績しかないと思っている。ただ僕も結果的にハーバードに進学し、会社を立ち上げ、IPOや事業売却を経験し、今では地域創生をテーマに宮崎県宮崎市のアドバイザーを務め、アートや文化活動の支援をさせて頂いている。同じアジアのヘリテージを持つ人間として、僕はきっと彼を尊敬し、彼を道しるべとして、追っていたのだろう。だから彼を失うことで、あんなに虚無感に襲われたんだと思う。僕は道しるべを失った。

今もまだ自分の中にある感謝と悲しみを乗り越えきれていないし、心の落としどころを見つけることができないままだ。そして、つきなみ程度の言葉しか浮かんでこないが、僕がこれからできることは、彼が進んで行ったであろう道を切り開いていくことなんだろうと思う。ありがとう、トニー、R.I.P.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?