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ハリウッド大手エージェンシー、アシスタントの時給引き上げ。平均$24/hに。

ハリウッドの重役たちがどんな雰囲気かは、映画などで描かれている様子からなんとなく日本でも伝わっているんじゃないかなと思いますが、そこに行くつくずっと前、新卒レベルの社会人になりたての若者たちが、ハリウッドでどのようなキャリアの形成をしていくのかはあまり知られていません。

ハリウッド映画のプロデューサーになるためには(監督や編集、その他の職種はまた別のルートを通ります)、多くがマネージメント会社やエージェンシーと呼ばれる、監督や脚本家、俳優たちの代理人やマネージメントを行なっている会社でアシスタントを数年勤め、その後さらに製作会社やメジャースタジオなどでアシスタントを数年勤め上げた経験が求められるケースが多く、その後にやっとジュニアエグゼクティブと呼ばれる肩書きを手にすることができ、ここまでくると自分のオフィスとアシスタントを持つことができるのが通常です。この時点でだいたい20代後半〜30代前半ということが多いですが、そこからやっと晴れてハリウッドのプロデューサーとして大御所の監督とディナーをしたり、華々しくプレミアに駆けつけたりする立場になるわけです。

ところがこのマネージメント会社やエージェントと呼ばれる会社でのアシスタントというのが非常に曲者で、多くがまずメールルームという郵便物を振り分けて各デスクに届けるという下っ端の仕事からはじめ、その後特定のエージェントやマネージャーのアシスタントに配属という流れなのですが、何を隠そうエージェントたちが非常に恐ろしい(らしい)。らしいというのは、僕自身はそういうハリウッドでのアシスタント業務をちょっとかじった程度で、主にエージェンシーでの仕事を数年こなした友人たちに聞いた話だからなのですが。怒鳴られたり深夜残業なんかは日常茶飯事で、それはそれは惨めな時間なのだとか。

なのでそこに留まって将来はエージェントになりたいという猛者以外は、ひたすら耐えて1〜2年働いた後はさっさと辞めてしまうようですが、なにせパンパンの業務量で2年間ハリウッドの情報の交差点みたいなところで働いていたのだから、今後ハリウッドでやっていくための基礎が、徹底的に鍛えられるというわけです。

前置きが長くなりましたが、ハリウッドでは4大エージェンシーとしてUTA, CAA, ICM, WMEという4社が知られているのですが、今回は、今をときめくTimothee ChalametやChris Prattなども所属するUTAが、アシスタントたちの時給を$22ドルに引き上げる決定をしたとのことで、他の諸々を考慮すると平均$24/h、これは4大エージェンシーの中でもっとも高い時給らしいです。

そうなんです、エージェントのアシスタントは年俸制ではなく時給制なんですよね。だから場合によってはジュニアエグゼクティブになって年俸制になった時よりもアシスタントの時の方が給料がよかったとかいう声も聞いたことがありますが、どんだけアシスタント働いてるんだという話。ただ逆に、生活費が高いロサンゼルスだとこの給料では低すぎて生活が成り立たないということも聞きました。そうなると結局彼らは経済的な独立ができないため、ハリウッドという夢を諦める若者が続出し、経済的に余裕のある家庭で育った若者しかハリウッドの仕事につけない、という由々しき事態が発生しています。

そういったこともあって、UTAは今年7月に$18.50へと時給を上げた後、その数ヶ月後にさらに大きく引き上げを行ったというわけです。ちなみに他のエージェンシーはというと、CAAとWMEは$15/hから$18/hに引き上げ、ICMは$20/hに設定しています。待遇面でいうとUTAがもっとも高い賃金の設定です。

記事の中ではエントリーレベルの若者にとって、エージェンシーへの門戸がより広く開かれる事になると書いていますが、どうでしょうか。コロナ禍でエージェント達を大量に解雇したエージェンシーのニュースも数ヶ月前に見かけましたが、映画業界にとっては決して楽な時代ではないですね。ともあれ今回はいつもとはちょっと違った角度からのハリウッドの話でした。

元記事はこちら(英語記事です)

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