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「そこまでやるの?」を追求するIR戦略の立て方

こんにちは。ROBOT PAYMENT(4374)でIRを担当している新藤です。
上場して2年が経ち、他の中小型株IRの皆さんの例に漏れず、当社のIRの課題は出来高を安定的に向上させることです。
そこで、特に今年1年間で出来高向上のために何を考え、どう戦略立てて実行したのかを振り返ることで、IR担当の皆様に少しでも再現性のあるインサイトを伝えることができるのではと考え、恐れ多いと思いながら筆をとろうと思います。
また、投資家の皆さまにとっても、発行体が考えていることの一端が伝わることで、投資活動のヒントになりましたら幸いです。

※この記事はIR系アドベントカレンダー(IR系AC)に参加しています。


2022年の振り返りと反省

2022年の3月頃から本格的にIR活動をはじめ、とにかく右も左も分からないながらも諸先輩方の教えを元にとにかく積極的なIRを心がけ、1年間でセミナー出演11回、メディア出演数7回、リリース本数50本以上ととにかく露出を増やすことと認知度を高めることに注力していました。
※前提として、当社の株主構成は個人投資家が多く97%近くを占めています

しかし、その結果を見ても出来高・株価は大きく変わらず。

ヤフーファイナンスより当社の株価・出来高(株)推移

そこでとにかく会う人会う人(投資家、IR担当、証券会社、支援事業者・・・)みんなに「ロボペイの出来高を上げるにはどうしたらいいですか?」と聞きまくりました。

出来高が上がらない課題に対する要因としては、

  • そもそも当社の事業やビジネスモデルの強みが理解されていないのでは?

  • ニュース本数が多くても関心を持ってもらえていないのでは?

  • 業績が読みやすいビジネスモデルと出来高が増えやすい銘柄(サプライズがある、トレンドに乗っている等)と相性が合わないのでは?

と考えていました。

解決の方向性

そこで、社内で議論をし、一つの方向性を打ち出します。
それは、当社からみた理想の株主構成(ポートフォリオ)を目標として設定し、その姿を実現するためのターゲットを定め、打ち手やメッセージを企画する、という方針です。
というのも、当社のメインの投資家層である個人投資家に対する解像度がまだまだ粗く、安定株主=売買がないと決めつけてしまっていましたが、果たしてそうなのか?当社のビジネスモデルを好み、かつ売買を多くしてくださる投資家の方がいるのではないか?と考え、上記の方針を考えるに至りました。

また、当社の事業やビジネスモデルの強みがまだまだ伝わり切っていないのではと考え、22年通期決算説明資料内でその競争力の源泉を強く打ち出す資料を作成しました。
※2022年通期決算説明資料はこちら(PDF。成長戦略はP.43以降)

株主名簿を活用し、理想とする株主ポートフォリオを設定する

まず、四半期ごとの株主名簿を上場してから2年分、分析します。
(※株主名簿とは、信託銀行からもらえる各四半期末時点の株主名・保有株式数などが一覧で載っている名簿)
いくつかの分析を試した結果、当社の場合、株主の保有株式数のレンジ毎の傾向が変わることで出来高の変動に寄与しているのではという仮説を立てました。

例えば、
①大規模保有層:数千株以上保有している株主
②中規模保有層:数百~数千株保有している株主
③小規模保有層:数百株未満保有している株主
と定め、各四半期末毎の

  • ①~③の各レンジの株主数、平均保有株式数

  • ①~③の各レンジの株主が前四半期にはどのレンジにいたのか

  • ①~③の各レンジで、新規で保有した株主数、その平均保有株式数

  • ①~③の各レンジで、売却した株主数、その平均保有株式数

  • ①~③の各レンジ内で保有数が増加/減少した株主数、その平均保有株式数

など、調べられる限りの指標に分解し、推移を見ていきました。

その結果、①の大規模保有層がさらに買い増しを行った場合、または新規で①のレンジで保有した株主数が増えたときに、最も出来高が増えていたことがわかりました。
これは、私の予想と異なる結果でした。というのも、一定数以上保有する株主が増える、つまり安定株主もしくはその株式数が増えることで浮動株が減って出来高が減ってしまうのでは、考えていたからです。
実際にはそうではなく、大規模保有層の買い増しとそれに伴って生じる他の投資家の売買によって出来高が増えていたのです。
そこで、「安定志向の株主の買い増しが増えることで売買が積み重なり、出来高の厚みが増すのでは」という理想の形が見えてきました。
①~③の各レンジの目標とする比率・株主数を定め、どういう施策を行えばどの程度該当する株主数が増えるか予測し、定期的に進捗を確認していく形でアクションに落としていきます。
※留意点としては、あくまで四半期末時点でのデータであるため、すべての売買を捕捉しているわけではないこと、実際の出来高の構成はデイトレーダーのトレードなど含めて複合的な要因であることは付記しておきます

次に、より株主の志向性や行動特性の解像度を高めるため、株主の皆様へのアンケートを行いました。
アンケート項目としては、
・年齢/性別/職業/居住エリアなどのデモグラ情報
・株式の情報収集媒体/投資方針/好きな銘柄の特徴などの株式投資に関わる情報
・当社を知ったきっかけ/投資しようと思った理由/保有金額/保有方針などの当社に関する情報
・趣味/休日の過ごし方/日頃の悩み/家族構成/通勤時間/通勤手段
など、投資行動に関わる項目に加えて、直接関わらない項目についても調査することで当社の株主の人物像がよりクリアに見えてきました。

その結果、わかったこととしては、
・大規模保有層は、地方中核都市在住の経営者や、首都圏在住の高年収サラリーマンが多いということ(高年収サラリーマンは休日も仕事に充てることも多く、業務量が多いことが悩みだということ)
・中規模保有層は、兼業投資家が多く、SNSや投資仲間からの情報を信頼し投資判断をしていること
・小規模保有者は、10銘柄以上を保有し、投資判断のなかで株価の変動を重視すること
また、保有レンジに関わらず、「長期で保有してかつ今後買い増しをしたい」と答えた株主の方の傾向として、当社の株を買おうと思った理由は「安定的に業績が上がるビジネスモデル/競合優位性が築けており、解約率も低い/経営陣の株価を上げたい意識が伝わってくる」という項目が多く挙げられていました。

アンケート集計結果の例

以上を踏まえると、IR活動の方針として、
・まずは大規模保有層の買い増し/新規投資を増やしてもらうこと
・中規模保有層/小規模保有層を大規模保有層に引き上げること
・その結果として株価が変動し小規模保有層の売買も活性化すること
・メッセージとしてはビジネスモデルの特徴や競合優位性を資料やセミナーでしつこいくらいに伝え、株価への意識も社長メッセージに必ず盛り込む
などが考えられます。

また、具体的な施策レベルでは、アンケート結果を考慮すると、例えば個人投資家向けセミナーは
・平日19時以降開催のオンラインセミナーでアーカイブが残るもの(電車通勤時間に見てもらう想定)
・勉強会内のコミュニティが形成されていて口コミが拡がりやすいもの
などといった形で施策が決まっていきます。

LINE公式アカウントを活用し、情報を検知できる仕組みを作る

理想とする株主ポートフォリオとそれぞれの人物像(ペルソナ)、施策の方向性が決まったら、どう情報を伝えるか、どう気付いてもらうかを考えます。
証券アプリのウォッチリストなどにロボペイを登録してもらえていればいいのですが、そこまでは追えないので、LINE公式アカウントの友だち登録をしてもらうことにしました。
全てのリリースではないですが、当社の事業の特徴や業績変動要因が伝わるようなニュースはLINE公式アカウントで伝えていこうと考えています。
また、より事業やビジネスモデルの理解を深めてもらいたいため、問い合わせのハードルを下げることも目的です。
ご登録がまだの方はぜひ以下よりご登録お願いします!

ファンミーティングを実施し、株主のファン化を図る

株主ポートフォリオ目標から逆算し、当社の事業特性やビジネスモデルの特徴に加え、経営陣のキャラクターや事業成長の背景を深く知ってもらうことで株主の皆様に当社のファンになっていただき、買い増しや長期保有に繋げてもらいたいという意図でファンミーティングと題して、リアルの場でのセミナー兼懇親会を企画しました。
おかげさまで大盛況で、ファンミーティングをきっかけにファンになったというお声もたくさんいただきました。
(ファンミーティングの報告記事は別途あげようと思っています。遅くなりすみません。。。)

ファンミーティングの様子

結果

上記含めた複数のアクションを行ったところ、23年9月末時点での株主名簿を調査・分析した結果、目標に定めた大規模保有層の株主比率が増えており、ある程度意図した結果となりました。
また、売買代金も8月には月間平均で1億円/日を超え、上場後半年たった22年3月以降はじめての水準まで戻すことができました。

ポートフォリオ目標毎に施策を考え、週次で進捗をウォッチしています(社内資料より一部加工)

もちろん、株価や出来高は業績によるところが大きいと考えていますし、外的要因含めた様々な要素が絡むので一概には言えないと思いますが、当初立てたポートフォリオ目標の仮説は大きくは間違ってはいなかったと言えるでしょう。(なお、こちらを執筆している23年12月段階では出来高が減ってしまっているので、継続的に出来高を向上させるということは引き続き課題です)

さいごに

すべてのプロセスは社長はじめCFOや事業管掌役員などのIRに関わる経営陣と議論をし合意を取りながら分析・検証し結論を出しているため、属人的ではなく、IR施策の平準化にも寄与していると考えています。

また、目標を決め数値化することでアクションプランを立て、PDCAサイクルを回すことができます。また、振り返りから次のアクションを策定することもできます。例えば、「なんとなく機関投資家にもアプローチした方がいいかー」といった思い付きベースのアクションではなく、一定数以上の株式を保有する株主の買い増しが出来高に寄与することがわかったので、機関投資家へのアプローチが次の一手に入ってくる、とった根拠を持った施策として取り組むことができます。また、そのときに例えば、5,000株以上保有しかつ四半期~1年単位で買い増しを行う可能性がある機関投資家、と規定ができるので、アプローチすべき機関投資家をバイネームでリストアップすることも可能です。

一見すると数値化できなそうなことや誰も手を付けなそうなものでも、「そこまでやるの?」と思われるレベルまで数値化にこだわり、アクションを細かく設定することで見えてくるものがある、ということが私の最大の学びでした。代表の清久が長年決済事業を運営する中で築いた、営業数字の読みの高いレベルでのこだわりや、事業リスクを最小限に抑えるために磨き続けたオペレーションなど、言語化しづらいロボペイらしさがIRにも表れたのではないかと考えます。

もちろん会社のビジネスモデルや事業特性により、取りうる方針と施策は異なると思いますが、少なくとも理想とする株主ポートフォリオ目標を定めることで、各社の特性に合うIR方針・施策が定義できるのでは?というのが私が提唱したいことです。
少しでも皆さんのお役に立てたなら幸いですし、微力ながらIR全体のレベルの向上と資本市場のさらなる活性化の一助になれましたら幸いです。

明日12/24クリスマスイブのキリンさんにバトンタッチします!

ディスクレイマー
※すべてのプロセスは当社顧問弁護士と相談しつつ、株主平等原則に反しないか、投資勧誘に当たらないかなどを慎重に確認しながら進めております
※個人情報は厳重に管理し、当社のIR戦略策定のための分析及び運営のための用途以外には使用しておりません
※文字数の関係や社外に出せない情報の関係上、かなり簡略化して記載しています

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