見出し画像

経理ピーポーは電卓の夢を見るか?(見る)

あれです、よくある「経理の仕事はAIないしMLに取って代わられるのか?」ってやつ。

まだまだ過渡期だなと思います。MLに任せるには恣意性というか独自性が大きすぎる。これは主に制度面の問題が大きいと思います。なんでこんなにアーティスティックでアクロバティックな分野になってしまったんだ。
最近SaaS分野の進出が著しい経費精算、債権消込あたりはパターンが比較的まとまってるし法制度もまともなのでMLと相性がいいんですよね。例外は「子どもだから知りませ~ん」って言える(SaaSって本来そういうもののはずなんだけどな)。

じゃ会計処理を全部MLに任せられるかっていうとだいぶ飛躍感があるんですよ。例えば固定資産の耐用年数をMLで判断できるかっていうと……8割くらいは当たりそうですけど、2割くらいは外しそうな気がする。そして2割の外れ値は監査的に許容されないな。
経費精算って正直1件あたりの金額は大したことないから2割外してもそこまで影響大きくないし(実際には9割7分くらいまで当てられそうな気はしている)、債権消込もまぁ条件さえ揃ってればそりゃ当たるよねって感じです。どちらもMLの得意分野だ。でも見積り系と税法系はとことん相性が悪い。固定資産の減損とか、繰延税金資産の回収可能性判断とか、負債性引当金の要否とか、MLでできる気がしない。

もしAIにできるようになるとしたら、そのときは制度そのものをAIが策定するようになるときなんだろうな。人間が作った制度をAIに解釈してもらうのはちょっと厳しいんじゃないだろうか。AIを人間に寄せるのかどうかっていう観点になりそうだけど、進化の余地を残すなら人間に寄せないほうがいいんじゃない?

とはいえ、見積り系と税法系がすべての企業にとって必須で重要かと言われると全然そんなことはなくて、おそらく一部業種の上場してるような大きめ企業に限られてくるんですよ。法人数で言えば大多数を占める中小の企業さんにはほとんど関係なかったりする。じゃ中小の企業さんの経理事務はMLで代替できてしまうのか?の問には、結構いいところまでいけるんじゃないかというのが現在地だと思っています。すごい時代になりましたね。

事業が小さいうちはほとんどの経理事務をSaaS系ソフトに任せられるから経理担当を雇わなくても回るが、事業が大きくなってくるとファンタスティックなところを判断できる人間が必要になる。でも実は経理って最初は誰でもできるような処理から入門したりするわけで……あれ、育成できなくないか?
難しいところだけが人類に残されても、それを判断できるような育成をする場がなくなってしまう可能性があるわけですね。これ怖いなーというのが最初に言った「過渡期」の理由です。一般企業で経理ピーポーの育成が困難になるという未来は割と近い。じゃどこから補給するかって監査法人かコンサルくらいしか思いつかないんだけど、どっちも同じように入門分野がMLに取って代わられちゃいそうなんだよな。

単純な判断をMLに委ねた結果、難しい判断をできる人間がいなくなってしまう。MLを業務委託とか派遣とかに置き換えると……おや、こんな時間に誰だろう?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?