「もじょまじょ!」第2話
第1話
第2話
〇加恋の自宅アパート(昼)
アパート外観。「喪女」「死ね」等、壁に落書きがされている。
昼なのに部屋の電気を消し、ベッドで毛布にくるまり、静かに本(サバトで買った魔導書)を読んでいる加恋。
と、玄関チャイムが鳴り、ビクっと肩を震わす加恋。
警察の声「早乙女さ~ん! いないんですか?」
警察の声「おかしいな。ここに喪女が住んでるって、タレコミがあったのに」
足音が去っていくのを確認し、ベッドから這い出る加恋。
TVでは「本日の新規逮捕者数:1万2050人」と速報テロップが出ている。
<何やってんだろ、私……>
<こうしている間にも、何の罪もない仲間がどんどん捕まってく……>
加恋、魔法を使い、試しに指先に炎を灯してみる。
<魔法を使えば助けられるかも……だけど>
<それは自分が喪女魔女だって認めること>
× × ×
フラッシュ回想。
マギサ(回想)「魔法を使うごとに、喪女レベルが1上がるから」
× × ×
<これ以上魔法を使ったら、取り返しがつかなくなるかもしれない>
指先から炎を消し、うなだれる加恋。
<普通の幸せを諦めて、一生ひとりで生きていくなんて……そんなの嫌だ>
と、加恋のスマホが鳴り、見知らぬ男(ケイタ)からメッセージが届く。
ケイタ(メッセージ)「ちーす! ケイタっす」
ケイタ(メッセージ)「美咲から紹介されて連絡したよん(笑顔の顔文字)」
<そういえば、そんなことお願いしたっけ……>
無表情で画面をスクロールする加恋。
ケイタ(メッセージ)「とりま俺の自撮り送るね」
ケイタ(メッセージ)「(自撮り写真)」
<私にも送れってこと……?>
加恋、顔を引きつらせる。
<どうせ私の顔見たら、逃げ出すんでしょ?>
加恋、自虐的な気持ちで、わざと変顔をしている自撮り写真をケイタに送る。
ケイタ(メッセージ)「超ウケる! 加恋ちゃん、俺のタイプかも♡」
加恋「……!!」
思いがけないケイタの言葉に、顔を赤らめる加恋。
ケイタ(メッセージ)「今度デートしよ♪ いつ暇?」
ドキドキと高鳴る胸。喪女狩りの最中、不謹慎だと思いつつ、この機会を逃したらもう一生彼氏ができないかもしれない…と思った加恋、
<これが最後だから……>
と、祈る気持ちで、OKのスタンプを送る。
〇喫茶店・昼
窓際の席にケイタと向かい合って座り、お茶をする加恋。
ケイタ「やべー加恋ちゃん、超個性的! その服どこで買ってるの?(笑)」
加恋「はは……」
人目を気にして、キャスケットを深めに被り、マスク&眼鏡をつけてきた加恋。
服装だけは気を遣い、通販で買ったばかりの新しい花柄のワンピースを着てきたが、意味なかったようだ。
ケイタ「俺ってさ、◎△$♪だから、×¥●&って感じで、マジ%#?……」
ケイタの話を聞き流し、ふと窓の外に視線を遣ると、生垣の中から1匹の猫が現れる。
<あ、猫……>
<そういえばマギサ、あのあとどうしてるんだろう……>
ケイタ、加恋が上の空だと気づき、
ケイタ「どうしたの? 加恋ちゃん」
と聞いてくる。
加恋「ううん。何でもない」
と、慌てて繕う加恋。ケイタ、笑顔になって、
ケイタ「ところで加恋ちゃんて、副業に興味ある?」
加恋「え?」
ケイタ「俺の知り合いの社長さんが新しいビジネス始めたんだけどさ。これがすごい儲かるんだよ。化粧水売るだけで、なんと月200万!」
紙袋から化粧水の瓶を取り出し、テーブルの上に並べ始めるケイタ。
ケイタ「よかったら紹介するから、今度一緒に会いに行かない?」
ケイタの目的がマルチ商法の勧誘だと気づく加恋。
一気に現実に引き戻され、すん……とした顔になる。
<ま、現実ってこんなもんよね……>
色々と吹っ切れた加恋。
ケイタはなおも意気揚々とマルチの説明を続けている。
<私が馬鹿だった……>
ケイタ「加恋ちゃん? 加恋ちゃん、聞いてる?」
加恋「うっせえ! マルチは●ね!」
加恋、ケイタを魔法で爆破。
ケイタ「うわぁぁぁ!!」
客「きゃー!」
突然の爆発に混乱する店内。加恋、椅子から立ち上がり、
<もう何にも期待なんかしない>
<私は、私の力で、人生を切り開く!>
と拳を握る。
喫茶店に置かれたTVでは、保健所に連れて行かれる使い魔の姿が映っている。『喪女宅からの押収品』『近く殺処分へ』とテロップ。
保健所の檻の中には、マギサの姿もある。
加恋「待ってて、マギサ……!」
加恋、店を出て走り出す。
〇保健所(夜)
けたたましく警報が鳴り、警備員たちが慌ただしく走っている。
警備員A「喪女だー! 喪女が襲ってきたぞ!」
警備員B「ぎゃー!!」
爆発し、吹き飛ぶ警備員と建物。(3連発ほど)
檻の中で寝ていたマギサ、物音に目を覚ます。
噴煙の中から、加恋のシルエットが現れる。
加恋「遅くなったわね、マギサ」
マギサ「加恋……!」
加恋、マギサを檻から解放する。仲間の喪女魔女たちの使い魔も同時に解放。
加恋「使い魔なら、ご主人様たちの居場所わかるわよね?」
頷く使い魔たち。
加恋「すぐに案内して! みんなを助けにいくわよ」
喪女魔女たちが捕まっている場所は秘匿されており、調べてもわからなかった。
マギサ「待って、加恋。その前に契約を……!」
加恋「そうね」
マギサ「私と契約すれば、魔力が増大し、変身できるようになる」
マギサ「晴れて正式な喪女魔女になるの! 覚悟はいい?」
加恋「望むところよ」
加恋、マギサとおでこを合わせ、手を重ねる。
すると、2人の周囲に光の帯が出現し、くるくると勢いよく回り始める。
マギサ「偉大なる喪女魔女神の御名に誓う。我、マギサ・アイエルーロスは、早乙女加恋を主とし、生涯を喪女の繁栄と安寧のために捧げ、主に幸多からんことを望む!」
マギサ「――契約はここに成った!」
「M」と書かれた光文字が加恋の額に刻まれ、吸収されて消える。
加恋の喪女レベル:62に上がる。
マギサ「さぁ、次は変身よ! 加恋、復唱して!」
加恋「ええ!」
マギサ、魔法ステッキの代わりに、サイリウムを加恋に手渡して、
マギサ&加恋「ブリブリキュンキュン☆喪女魔女メイクアッ~~プ!」
サイリウムで大きく弧を描きながら、呪文詠唱。
加恋の服が虹色の光に包まれ、周囲にキラキラした粉が飛ぶ。
魔法少女風の可愛い衣装に変身するのかと思いきや、白い靄が晴れて現れたのは赤い全身タイツを着た加恋の姿。
加恋「って、何これ~~~! ダサ~~~!!」
驚愕し、悲鳴を上げる加恋。
マギサ「文句言うんじゃない! それが喪女魔女の正式な戦闘服よ!」
マギサ、加恋のお尻を蹴って、仲間たちの救出へと向かわせる。
○強制収容所(夜)
建物のあちこちを爆発させ、喪女たちが捕まっている牢屋に侵入する加恋。
加恋「みんな無事!? 助けに来たよ!」
喪女魔女A&B「加恋さん~~~!(泣)」
加恋に抱きつく仲間たち。
加恋、彼女たちの手枷・足枷を外してやりながら、
加恋「いったい誰がこんなひどいことを……」
と、牢屋に看守たちが押し入ってくる。
看守A「いたぞ! 侵入者だ!」
看守B「喪女の好きにさせるか!」
看守たち、加恋に向かって銃を乱射。
加恋、魔法で盾を出現させ、銃弾を防ぐ。
看守A「なっ……化け物か!?」
看守B「ひるむな! 捕まえろー!」
今度は肉弾戦。加恋、肉体を魔法で強化し、鮮やかに看守たちを倒す。
だが、看守たちは仲間を呼び、無限に湧いてくる。
加恋「ったく、倒しても倒してもキリがない……!」
顎に滴る汗を拭う加恋。
加恋の喪女レベル:75に上がる。
マギサ「気を付けて、加恋! こいつらみんな正気を失ってる!」
加恋「そんなの、見りゃわかるわよ……!」
乱闘中、マギサと背中合わせになる加恋。
警帽が脱げた看守たちの頭には、小さなツノが生えている(ルッキズムに意識を乗っ取られた美咲の頭に生えたのと同じもの)
<きっとどこかにこいつらを洗脳した犯人がいるはず……!>
加恋、戦いながら注意深く周囲を見渡す。
看守たちをあらかた倒したところで、喪女魔女Aが加恋に告げる。
(喪女魔女Aは加恋が戦っている間、看守室から奪ったパソコンを解析していた)
喪女魔女A「加恋さん……! 解析完了しました」
喪女魔女A「今回の騒動の発端となったのは、このツイートです」
パソコン画面を加恋に見せる喪女魔女A。
そこには美咲のツイート(「最近つけあがってるブス多すぎ」)が表示されている。
加恋「これって……」
信じられない気持ちで眉をひそめる加恋。
第3話
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