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勾配日記 017 陰と陽

 勾配の上に建つ巨大な建物に光が差し輝きを放っている反面、その足元の勾配及びそれに沿って並ぶ家々は陰の中に沈んでいる。

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 写真のなかのこの巨大な壁のような建物は中に病院を擁している。

 陰った緩やかな勾配の途中からこの写真を撮っている最中、そんな自分の横を電動式自転車で颯爽と勾配を駆け上がり、件の巨大な建物入り口脇に自転車を停めて、そそくさとその中へと消えて行った中年の女性がいた。

 その恰好から判断して、彼女はこの建物内の病院で働く看護師だったのだろう。

 おそらく彼女はこの勾配を自転車で、これまで何百回と往復しているに違いない。

 そんな彼女にとってこの写真の中の光景が、もう関心外のものなのか、それともそれ以上にうんざりに感じているものなのかどうかは計り知れない。が、彼女ほどにはこの地に馴染みのない自分にしてみれば、この時間のこの場の光景はとても美しいと思えるものだった。

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