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#GAConfに参加して感じたこと~ましログらし7

1 はじめに


2023年4月24日から25日にかけて、ロンドンで、Game Accessibility Conference というイベントが開かれた。ロンドンで開催されたということでオフラインで参加したかったのだが、開催を知ったのが当日だったのと、チケットのお値段もかなり高かったので、オンラインで視聴した。


ウェブサイト:

https://www.gaconf.com/


このようなイベントに参加したのは初めてだが、ゲームアクセシビリティーが世界規模でどのように検討されているのかや、どのような情報があるのかについて、まだまだ勉強中の身として、理解するきっかけになった。今回の記事では、Game Accessibility Conference を視聴して感じたことを記しておきたい。ゲームにもアクセシビリティーにも素人なのでとんちんかんなことを書いてしまっているかもしれないが、率直に思ったことを書いてみようと思う。


2 イベントの全体的な印象


上にも書いたように、このイベントは、ゲームやアクセシビリティーに関して、2日間にわたり、情報をシェアしたり議論をしたりする場だ。対面参加の人はもちろん、オンラインで申し込むと、ディスコードサーバーに入ることもでき、オンラインでも議論をしたり交流を深めたりすることができる。


イベント中は、10分から30分程度のセッションがたくさん行われ、ゲーム会社、支援団体、大学などの研究機関、メディア、プレイヤー当事者など、ゲームアクセシビリティーにさまざまな形で関わっている人たちが、それぞれの立場から発表していた。全て英語での発表となったため真しろは、これも修行の一環と思って、字幕などに頼りながら興味のあるセッションを中心に視聴した。


3 真しろが選ぶInteresting Sessions Best 3


真しろはたくさんのセッションを視聴したのだが、その中でも特に関心を持ったり興味深いと感じたりした3つのセッションについて簡単に内容と感想を記す。ベスト3と書いたが、ランキング形式ではなく、行われた順番に記す。


No1. Understanding the Perception and Experiences of the Deafblind Community About Digital Games


一つめは、1日目の午前中に行われた、Understanding the Perception and Experiences of the Deafblind Community About Digital Gamesというプレゼンテーションだ。これは、バーミンガム大学の講師の方が行った物で、盲ろう者のゲーマーがデジタルゲームをプレーする上での課題についてインタビュー調査した研究結果に基づいた物だ。参考となる論文はこちら。


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35043736/#:~:text=Conclusions%3A%20We%20identified%20that%20a,interactions%20to%20players%20with%20deafblindness.


発表によると、盲ろう者の中で、そもそもデジタルゲームをよくプレーする人は少なく、どうしてもボードゲームなどの他のゲームをしがちになることが分った。ゲームをプレーする上で課題になるのが、音の情報と視覚情報がどちらも得にくいため、ほとんどの場合プレーを諦めてしまうようだ。そして、さまざまな情報にアクセスできたとしても、認知的不可が高すぎて疲れてしまうプレイヤーも多いようだ。さらに、プレーをサポートする特別な機器を別でそろえないと楽しめないので、お金もかかってしまい、経済的に厳しいプレイヤーにとっては大きな課題になっている。また、多くの盲ろう者が、手話や触手話などを使用していて、一般的な音声言語(英語)によるアクセシビリティーだけでは不十分であることも示唆された。


盲ろう者の方々は、ゲームにかかわらず、普段の生活のコミュニケーションを取るにもたくさんの課題がある。視覚障害のあるゲーマーたちも、さまざまな方法を駆使してゲームを楽しんでいるが、盲ろう者であってもゲームを楽しみたい人はいるはずだ。彼らがどんなことに困っていて、どんなゲームならしてみたいか、ニーズ分析をしっかりして、それに合ったアクセシビリティーを提供する必要があると考えられる。そのためにも、このような調査研究は今後も続けられるべきだ。


No2. Project Black Kat. Stealth System


2つ目は、2日目の夕方に行われたProject Black Kat. Stealth Systemだ。ウェブサイトはこちら。


https://www.projectblackkat.com/


このプロジェクトは、視覚障害のあるゲーマーがゲームをプレーする上での課題を解決するために、音声サポートを中心としたアクセシビリティ機能を提供することを目的に行われている物のようだ。プロジェクトでは、音声サポートなどのアクセシビリティーシステムを開発し、実際のゲームでそれを活用できるように、さまざまな見当が成されている。発表中は、視覚障害のあるゲーマーが、普段どのようにゲームをプレーしているか、スクリーンリーダーのスピード体験などを交えながら説明されていた。


このプロジェクトが開発したシステムをもし利用できれば、今まで遊べなかったゲームを、少ないストレス、もしくはノンストレスで遊べるようになるかもしれない。実際に、システムのデモを発表の最後に聞く機会があったが、全ての操作が音声で読み上げられ、とても期待できる状態になっていた。もちろん開発は英語で行われているようだが、世界中のブラインドゲーマーたちの光となろう。主催者の方のツイッターも載せておくので、ご関心のある方はぜひ。


https://twitter.com/CariWatterton


No3. Not Like This: Measuring Accessibility Success


3つ目は、今回のイベントの最後に行われた、Not Like This: Measuring Accessibility Successというプレゼンテーションだ。このプレゼンテーションは、いわゆる今回のイベントの総括のような感じで、アクセシビリティーが成功したことをどのように測定するのかについて多角的な視点で紹介されていた。アクセシビリティーの成功を測定するためにはまず、アクセシビリティーについての定義を明確にし、それをどのように実現するのか、どんなゲームで実現するのか、誰のために実現するのかなどの前提を明確にすることが大切だそうだ。そして、チェックリストを作成して、どの程度それに合致したアクセシビリティーが実現できているかを調べるのが効果的であることが示唆された。プレゼンテーションの後半では、測定したアクセシビリティーが、ビジネスやマーケティングの分野でどのように応用できるか、OKRやKPIなどの指標との関連性も踏まえながら論じられた。


このプレゼンテーションは大変専門的かつ情熱的で、真しろも全てを消化できていないが、1番考えさせられた発表でもある。アクセシビリティーとはどんな物で、なんのために、どのように、誰のために行うのか。考えることは山ほどあるし、技術だけが解決してくれる物でもないことがよく理解できた。最後に聞くのにふさわしいプレゼンテーションだったとおなかいっぱいになりながら考えた。


4 奥深いアクセシビリティーの世界


上で紹介したプレゼンテーションでもふれられていたが、アクセシビリティーという言葉は大変奥深い。真しろたちの日常では、アクセシビリティーやバリアフリー、ユニバーサルデザインなどの言葉が魔法のように使われていて、言葉だけが一人歩きしてしまうことも多い。それらの物事を実現するために、まずそもそもその言葉はどういう意味で、誰に対する物で、なぜ重要で、どうやってそれを実現するのかを考えなくては、それはただの言葉になってしまうかもしれない。そして、それを考える際には、実際にそのアクセシビリティーによって恩恵を受ける人たちの話を聞いたり、それを実現するために必要な物を作っている人たちの話を聞いたりして、今後しなければならないことを明確にする必要もあるだろう。アクセシビリティーを実現させるために、プレーをサポートしすぎれば、楽しいゲーム体験が失われたり、公平性がなくなったり、より複雑な操作に辟易としてしまったりするだろう。また、マジョリティーの視点で作られたアクセシビリティーによって、結局意味のないものになってしまっては元も子もないだろう。


こんな偉そうなことを書いているが、真しろはこの分野には正直あかるくない。少なくとも、技術面での改善策を提案したり、実際に何か自分でバリアを突破する技術を作ったりすることはできないので、多くを求めるのは分をわきまえねばなるまい。しかし、先ほども書いたように、アクセシビリティーは技術者やゲーマーだけの物ではなくて、むしろ、ゲームから今までほど遠かった人たちや、ゲームを楽しんでいる人たちを見たり応援したりする人たちにとっても大切なことだ。今回のイベントでは、上記に紹介したセッションに加え、例えばアクセシブルなゲームのデータベースの紹介や、ゲーム体験の共有方法についてのディスカッション、アクセシブルなゲームの開発事例など、他にもいくつも興味深いセッションがあった。このような機械を通して、奥深いアクセシビリティーの世界に踏み出して、そこで思ったことを伝えることから始めたいと思う。


5 これからできること


真しろは、2年前までは、コントローラーすらまともに握ったことのない、ゲームからほど遠い人間だった。それが、いろいろな縁に巡り会って、今では実際にゲームをプレーしたり、ゲーマーの方々と交流を持つ機会が増えるようになった。そんな、ゲームの世界、そしてアクセシビリティーの世界が、素人の真しろの思いとして、これからは、遊んでみたいゲームにたくさん挑戦して、どんなふうだったらもっと楽しいのか、そしてどんな体験が楽しかったのかをいろいろな人に伝えていきたい。そして、自分のゲーム体験だけではなく、さまざまな背景を持った人のゲーム体験をシェアして、一緒にゲームアクセシビリティーの世界を探っていきたい。一緒にゲームで遊んでみるもよし、研究してみるもよし、感想を書いてみるもよし……。きっとこれからできることはたくさんある。


6 おわりに


このようなイベントに参加する機会は今までなかったので、思ったことを思うままに書いてしまった。しかし今後もこのようなイベントに参加して、ますます知識や交流を深めていきたい。以下のURLからアーカイブが視聴できるので、ご関心のある方はぜひ。



Day1: https://www.youtube.com/live/g4_I-6n3Fuc?feature=share


Day2:https://www.youtube.com/watch?v=LJTGgrcCgTY





秋にはシアトルで同じようなイベントが開催されるようなので、またオンラインで視聴したい。


それでは今日はこのへんで。Have a nice day!

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