見出し画像

2023年のIT業界人向けオススメ本10選

2023年に発売された本から、IT業界で働く人が読むと楽しめる本を10冊選びました。
選考基準はこんな感じです。

・2023年に私が読んだ218冊の本から選びました。
・タイトルに「ChatGPT」「生成AI」を含む本は今年だけで123冊発売しており、多すぎるので選考対象外です。
・幅広い読者にオススメすることを想定して、技術書は含まれません。
・Amazonアフィリエイトリンクはありません。

年末年始の読書にどうぞ!

創始者たち イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説 

PayPalの創業におけるイーロン・マスクとピーター・ティールの活躍を追った本です。
面白いですがコミケカタログ並みに分厚い鈍器なので、通勤電車で読むには向いてません(電子版にしましょう)。
分厚いだけあって当時の細かなやり取りまで調査されており、PayPalがいかに危機を乗り越え、身を粉にして働き、多くの人物の支援があり、運が良かったかがよくわかります。
20年以上前の熱量と狂気に包まれたシリコンバレーの空気が伝わってきます
あと意外だったのは、イーロン・マスクががWindows支持者だったこと。
なお、イーロン・マスクが新婚旅行中に社員がクーデターを起こして追放されるエピソードがありますが、まさか2023年ではOpenAIでも同じようにサム・アルトマンが追放されそうになるとは思いもしませんでした(4日で戻ってきましたが)。

BUILD: 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック 

iPodの責任者を務めて、iPhoneの開発にも関わった著者による本です。
プロダクト開発のみならず、形があってもなくても何かを作る人は一読してほしいです
今までに無いものを作ることの難しさと、それをどう乗り越えるかが詰まっています。
数兆円を売り上げて文字通り世界を変えたプロダクト開発のノウハウを、数千円で買える本はコスパが良すぎですね(それに比べて情報商材屋ときたら)。
詳しい内容は買って読んでください、後悔しません。
ちなみに著者がAppleから独立後に起業てGoogleに買収されますが、買収元をボロクソに貶すはスタートアップあるあるなのでしょうか。

プロダクトマネージャーのしごと 第2版

プロダクトマネージャーはもちろん、プロダクトマネージャーと一緒に働く人も読みましょう。
企業の規模はもちろん、製品やサービスも関係ありません。みんなで何かを作る人は必読です
昨今ではChatGPTの登場や生成AIの進化によって、見た目だけ派手な技術が話題になっていますが、大事なのはプロダクトとして社会に届けることです。
本書に加えて実例を交えたノウハウが豊富な「BUILD」と一緒に読めば、効果は10倍と言っても過言では無い気がします。

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 

AIガチ勢による未来予測と技術解説を元にしたSF小説です。
どれくらいガチ勢かと言えば「カーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの博士号取得」「AppleとMSに勤務してGoogleに転職」「Googleは採用のために15億円以上払った」という人です。
プロ驚き屋によるChatGPTと生成AIの薄っぺらい話題をSNSで追う暇があったら、ちゃんとした人の本を読みましょう。

The Work of the Future:AI 時代の「よい仕事」を創る

タイトルだけでは内容がわかりにくいですが、AIを含めた技術進化に適応した社会制度や政策や公共福祉や自治体のあり方を探る本です。
平たく言えば「AIのせいで失業者が増えたらどうするの?」という話です。
既にAIが失業者を生む懸念がある以上、技術以外の分野でやるべきことはたくさんあります。
IT業界は技術の進化が当たり前でむしろ喜ばしいものですが、社会全体では一方的な変化を受け入れられない人が圧倒的多数です。
あと、生成AI反対派(主にイラストレーター)の方々は、法律の本に加えて本書を読むと何をすべきか指針になると思います。

小山田圭吾の「いじめ」はいかにつくられたか 現代の災い「インフォデミック」を考える

文春砲のみならず、SNSや動画投稿サイトでは24時間365日誰かが叩かれています。
本書は東京オリンピック開会式におけるミュージシャンの小山田圭吾氏による過去のいじめ報道を追った本です。
騒動の発端を探り、いじめの過去がどのように作られ、世論が操作されたかをネットの海から探り続けた成果です。
ネットの情報は正しいのか、SNSの意見は正義なのか、時代に変化によって人間が人間を裁くことが新たな局面に至っています
今年も生成AIによる岸田総理の捏造動画が話題になりましたが、それ以前に人間の判断力は正しいのかと考えさせられます。
なお、類似の問題として韓国における先鋭化しすぎて地獄絵図のネット事情がありますが、それはまた別の話です。

サンドワーム ロシア最恐のハッカー部隊

ロシアによるウクライナ侵攻も、いまやイスラエルとハマスに注目が移りました。
そこで改めてロシアによるサイバー攻撃という視点で、侵攻について考えてみましょう。
サイバー攻撃は世界共通の問題でもあり、日本でもランサムウェアの被害が増加しています。
何年もパッチ適用を放置されているお粗末セキリティ対策を見直すきっかけになる示唆も多いです。
それにしても外国の新聞社やジャーナリストは、良く言えば骨太(悪く言えば金にならない)問題のために、何年も取材できるのが羨ましいです。

半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防

TSMCの熊本工場建設やラピダスなど、半導体が話題になりました。
本書は半導体の歴史と重要性について、誕生の経緯から現在に至るまで幅広く解説されています。
初心者が1から産業としての半導体を学ぶには十分なので、まずはこれを読んでおきましょう。
ところで半導体の本が多く出版されたものの、「TSMCは産業スパイ!(ソースはYouTube)」とか「私が考える日の丸半導体の復活計画(根拠は怪しい)」といった、偏った知識や古い経験で書かれたアレな本が増えた気がします。
きっと現在の半導体をきちんと理解している人は、本を書くヒマなどないのでしょう。

スタートアップ的人生(キャリア)戦略

キャリア系SNSの元祖であるLinkdInの創業者による本です。もちろんポジショントークはありません。
去年も今年もそして来年も、SNSではキャリアの話題(含む年収)で盛り上がるでしょう。
しかしキャリアに正解はないわけで、結局自分が納得するしかありません
キャリアの悩みはだいたい本書に書いてるので、これを読めばムダにSNSのキャリア論で消耗することもなさそうです。

漫画村の真相 出過ぎた杭は打たれない

漫画村の創設者である星野ロミ氏が、設立から逮捕に至るまでの経緯について、報道されなかった点を含めて赤裸々に語っています。
著者の行為に対する是非と対法された本人のみが書いた内容の信ぴょう性はさておき、IT業界の人間として感情を差し引いて読んでほしいです。
著者はITエンジニアであり起業家として、海賊版へのリンク(リーチサイト)という法的に明確な解釈が難しい分野で利益を得ました。
このようなスキマを狙った戦略や明確な法規制がない分野への進出は、技術開発や法整備において度々話題になります
コンピュータを制御するプログラミングは「0か1」「正しいか間違い」という二元論の世界ですが、現実世界を制御する法律や倫理は曖昧でグレーです。
逮捕された背景は出版という市場規模が大きく被害金額がわかりやすい業界に加えて、マンガに関わる人々の感情を動かしたのも要因なのでしょうか。
社会とITの関わりについて考えさせられる一冊です

番外編:システムを作らせる技術

発売は2021年7月ですが、「2023年にTwitter(X)で話題になった気がする本」として選出しました。SIer的なシステム開発において重要なことは、本書に凝縮されてます。
むしろ開発する側よりも、発注する側が読むべき本です。働き方改革やリモートワークやDXで内製化と言った話題を越えて、未だにクソすぎるシステム開発プロジェクトは蔓延しており、SIerがディスられる要因になってます(SIerが悪いわけではないのに)。
数年前に発売した本でも良い本は良い本なので、この機会に一読ください。

終わりに

IT業界という視点、AI、VC(ベンチャーキャピタル)、企業、インターネット、SNS、システム開発、キャリア、プロダクト開発、伝記、半導体、セキュリティ、社会制度、倫理などから幅広く選びました。
今年はChatGPTと生成AIとイーロン・マスクの話題ばかりでしたが、色々あるものです。
本を読むことで視野を広げて、2024年に向けてより良いものにするきっかけになればと思います。

追記:2023年に読んだけどクソつまらなかったワースト本は、諸事情で紹介できません。
ちなみにその本はジュンク堂池袋本店で、発売から1ヶ月で2冊しか売れてませんでした(検索機で在庫数が表示されるので客でも売れ行きがわかる)。

さらに追記:2024年発売のオススメ本は「仕事で使えるChatGPT」です!
なぜかって?私書いた本だからだよ!


note記事が気に入ったら、Twitterアカウントをフォローしてください! Twitter : https://twitter.com/maskedanl