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屋久島こそできるリジェネラティブツーリズム(再生型観光)!!

1、はじめに

鹿児島からプロペラ機で40分、屋久島は神聖で特別な島である。以前からリジェネラティブツーリズム(再生型観光)で日本でどこがオススメかと質問を受けたら、自分は屋久島と回答してきた。今回、あいだラボ(Ecological Memes https://www.ecologicalmemes.me/ ) のツアーで、仮説が確信に変わった。本論では、まずリジェネラティブツーリズムは何かを説明し、なぜ屋久島こそできるかを説明し、どのようにしたら良いか提案します。尚、この島の電気は99%は再生可能エネルギーだそう(注0)で只者ではない島です。
(注0)  ハフポスト(2023 ) 「屋久島の電気は99%が「再生可能エネルギー」。サステナブルな島を巡ってみた」2023年12月13日付更新、 2024年3月28日に参照
 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65700629e4b0f96b99d913ed

2、リジェネラティブツーリズムとは

リジェネラティブツーリズム(再生型観光)とは、旅行者が滞在することでよくするツーリズムである。これは、観光が特定業者だけが儲けて地域に貢献しないこと、観光客が集中することの弊害としてのオーバーツーリズムやジェンティフィケーションに対する反省から、サスティナブルツーリズムの発展形として生まれた。自分は、旅行者のウェルネスだけでなく、地元、地球、そして事業者の「4方良し」のツーリズムと定義している。北欧やNZ・豪州でリジェネラティブツーリズムを推進している地域もあるが、屋久島がフォローすべきなのは同じ島嶼部のハワイの動きである。ハワイ観光局はリジェネラティブツーリズムに大きく舵を切ったが、その発想"Malama Hawai”  

 

ハワイ観光局(2022) 作成ビデオ「マラマハワイ~この星のための合言葉~」 日本語 )(注1)は屋久島と共通点も多いと思う。ハワイ大学の研究(注2)ではリジェネラティブツーリズムは地元住民にも旅行者にも前向きの回答を得ている。

注1:Hawai 州政府(2024) "MALAMA HAWAI‘I " Department of Land and Nature Resources ホームページ 令和6年3月26日閲覧   https://dlnr.hawaii.gov/malamahawaii/

注2:ハワイ大学(2022) "‘Regenerative’ tourism makes visitors more attractive to residents". ハワイ大学ニュース https://www.hawaii.edu/news/2022/07/11/regenerative-tourism-visitors/

3、なぜ屋久島こそできるか

屋久島こそ再生=>リジェレーションした島であるからである。屋久島は戦前から林業が盛んで大伐採がすすんでいたが、兵頭昌明さん達が提唱した「屋久島標準」の伐採反対運動が実を結び、国が1982年に原生林の伐採中止を決定した。これが1993年の世界自然遺産登録につながるのである。
参考:MBC南日本放送(2021)「兵頭昌明さん」 やくしまじかん・あまみじかんのメッセージ https://youtu.be/NsulegQ9-vc?si=Ey2_k_8aWREttlL-

もう一つのコンテキストが屋久島エコツーリズムである。屋久島エコツアーのYNACクラシックは昨年30周年を迎えた(注3)が、屋久島こそ日本そして世界のエコツアーをリードしてきた歴史がある。屋久島公認ガイドは、登録は現在のべ151人である(注4)。高低差があって、生物の多様性が確保されているこそのネイチャーツアーである。

注3:YNACホームページ. https://www.ynac.com/
注4:屋久島公認ガイドホームページ http://www.yakushima-eco.com/

4、あと何ができるか

屋久島の観光客数は2007年の40万人をピークに、2007年30万人を切り、2019年は25万人を切り、2020年のコロナ禍は15万人まで落ち込み、2023年は20万人に漸く回復した(注5)。苔むす森に今月自分が行った感覚では、日本人の学生団体客を除けば、インバウンド観光客が半分近くいたようであるが、彼らも必ずしも地元ガイドを利用していないように思えた。(自分がお願いした地元ガイド30年のベテランは、違うグループの地元ガイドにすれ違う際に必ず挨拶する。)

就いては、インバウンド観光客向けに高付加価値型のリジェネラティブツーリズムを追加していくべきではないのか。
理由の第一は、環境負荷の軽減である。これから急速に観光客が回復していった場合の懸念である。
環境省(2011) 作成ビデオ「エコツーリズム実践例屋久島編(2/2)」

第二に高付加価値化である。苔むす森では観光客は、インバウンド観光客を含めてガイドをつけていないグループも結構いたことは述べた。ついては、従来のエコツーリズムに加えて、ガイドが必要なリトリートや環境改善フィールドワークを加えた方が地元の人が付加価値をつけられるのではないか。

第三に近隣との差別化である。沖縄はアドベンチャーツーリズムやブルーゾンに力を入れており、奄美は「手つかずの自然が色濃く残る癒しの島」を謳っている。高低差があって多様な生態系があるのが屋久島の強みであり、上記のコンテキストを踏まえればリジェネラティブツーリズムと相性が良いように思われる。

第四に、リジェネラティブツーリズムは客を選ぶので、観光客のマナーは比較的良く、それほど豪華な施設を必要としない。まだ世界的にプロダクトサイクルでは導入期に相当するリジェネラティブツーリズムは、今後の伸びが期待できる。また、自然への意識が高い屋久島の住民と相性が良いのでないかと思われる。

注5:松本毅(2023) 「YNAC30年を振り返って」
「屋久島エコツーリズムの軌跡」内 屋久島野外活動センター  

5、リジェネラティブツーリズムを育てる

屋久島は着地型ツアーとしてリジェネラティブツーリズムをやる人材がいるようだ。また、Sumu Yakushima (注6)など環境再生建築の施設もできてきている。英語/仏語/中国語の地元観光サイトYES Yakushimaもある。 山道改善などの環境のフィールドワーク、森林浴などの「山のリトリート」と海亀見学やカヤックなどの「海のリトリート」を組み合わせれば、個人のウェルネス、地元と地球と業者の4者がネットポジティブとなるリジェネラティブツーリズム企画ができるのではないか。

環境改善などのフィールドワークはないようだが、「deep森林浴」のカレイドフォレストhttps://kaleidosc.com/ さんは、森林をリスペクトする本格的な森林浴などのウェルネスプログラムを日本語・英語で提供している。グローバル基準のプレミアム森林浴である。

カレイドフォレストさんのツアーは安くはないが、 提供するコンテンツを勘案すれば高くはないし、国際価格では安いと思った。      以上
(注6)AXIS(2023)  「屋久島でリジェネラティブ建築を実践した
tonoが設計した「Sumu Yakushima」」AXIS WEB MAGAZINE 2023年12月21日付、2024年3月28日閲覧  https://www.axismag.jp/posts/2023/12/571108.html

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