日本のDXのゆくえ

2025年までに100%DX

  • 東京都庁の人が言っていました。都の仕事を2025年までに100%DX化するそうです。

  • 私は極めて懐疑的に見ています。その理由はアプローチが悪い。役人の発想なんでしょうかね、今やっている自分たちのことは正しい。そして他部署のやっていることには知らない縦割り体質。この二つの考え方を変えてやらないい限りうまくいかないでしょうね。

  • たとえて言うと、●●●局で〇〇〇の許可業務がありました。窓口にきて紙の様式を提出、それを都の職員がチェックして問題なければ許可したことを証明する帳票を郵送しているこういうプロセスをDX化しよう、という場合、ポイントになるのは来庁しなくてもよい、ということと、ペーパレス、です。

  • そしてその申請が年間1千件だとします。これをDX化すると、初期投資が1千万円、その後毎年保守費が2百万、かかと仮定します。

  • 普通に考えると、DX化のコストはこれまでの運用費用の上乗せではなく、引き算をしなくてはなりません。この●●●局が何人かでやっていて、年間1億円のコストがかかっています。人件費とかその他の固定費込々です。そうなるとシステムの初期は5年償却、プラス保守費がありますから、毎年その分は従来の固定費から引かなくてはなりません。そうでなければ今のままの方がコストがかからないということになり、いくら来庁が不要でペーパレスになったとしても、それために投資をしてよいのかというそもそもの議論が必要になります。来庁しない、ペーパレスで業務がスリム化するのが一般的には求められていることなので、これを実現した結果がコスト増では理屈にあいません。システム化の投資のメリットとしてそれよりも多くコストが削減できるという絵でも書かないと、そっくりそのDX化の請求書を書いているIT会社が儲かるだけとなります。

  • これもまたよく言うことですが、スケールメリットって考え方もありますね。先の例でいうと、千件の申請に1千万ですが、他にもいろいろ申請があるはずですから1万件の申請をハンドリングできるシステムを3千万で作る方法があるのではないかということも言えます。沢山の案件で使ってもらえるよう作れば、使ってもらえる範囲が広がる一方、機能を共通化するなどして開発コストは抑えられる、というストーリーは特別変わった発想ではないようにも思います。

  • つまりどういうことかというと、役人の仕事のやり方の根本を変えないまままかせていると、DX化したよ、という出来上がったものは組織体制になんらの変化を与えず、費用も変わらないものになるでしょう。

  • そこに留まるのであればそれはDXの失敗です。そう言われるでしょう。しかし今のままでやっていたら、それは評価されてしまいます。今のままの人材、組織をそのままにしておいて、ITインフラだけをそれらにあわせてやろうとするから固定費はそのまま、開発投資がかさむ、なんのためかって、そうやって無理くりやって工数が多くなるIT会社の売り上げのためとしか言えないものになります。

  • 固定費を減らすのがDX化である、という上流がないまま、現場が自分たちの体制を温存させて進めるDXは単なるコストをかけてやるだけのもので、全体の最適化にはなりません。都の話で言うなら、都がDX化で業務を効率化した影響が、民間にも波及しお互いが連動してプロセスが単純化されてコスト削減になる、という大きな絵を書いてリードしていかなければいけないはずの役人が自分の組織に張り付きっぱなしなのでうまくいくはずがありません。

  • というわけでこのようにやられているDX化推進が生産性を高めGDPを拡大させることになるはずがなく、インドにもドイツにも抜かれ、かつては世界第二位の経済大国は5位以下に没落するでしょう。すでに最低賃金は韓国に抜かれている。

  • ドイツのジョークに、勤勉だが無能な兵士どのように扱えば良いのか、というのがあります。今の日本はこの兵士だと思います。

  • ちなみに勤勉で有能な兵士は参謀に、勤勉ではないが優秀な兵士は前線のリーダーに、勤勉でもなく優秀でもない兵士は偵察に、ということです。勤勉という軸ですが、イノベーションへの意欲、と置き換えるとわかりやくなるかもしれません。まさにイノベーション意欲が旺盛で勤勉な人のイメージは起業して市場を作る人たちでしょう。それほど目標達成意識はないもののイノベーションに共感する人は戦略を正しく実行する人にはなるでしょう。どちらもない人は決められたルートを回り、適正なコストで期待どおりの成果があがる仕組みのなかで働くでしょう。

  • 勤勉だがイノベーションを解していない人というのは、一番困ったことになります。イノベーションがない、つまり生産性を向上させないために働けば働くほどその後にツケを回すような、ものを作り続けるわけです。心配ですね。

  • その勤勉だけどイノベーションがない、という人種が経営者に多いことがこの国の経済界では運が悪いことですね。30年前だったらそれでよかった。そういうことでは没落してしまうこの局面になっても、企業の経営が同じ。

  • 例えば赤字上場してくる、IT企業があるでしょ。あれでよくわかる。若くして起業し、ITで社会を変えるとか言って上場してくる。で、ずっと赤字のままで消えてゆく、そういう会社が多いこと、多いこと。イノベーションがないのに上場させると儲かる奴らがいるからね、あの人たちは本当に勤勉。高学歴というのは勤勉という意味しかないようなのです。まあ確かに勤勉でないと高学歴にならない日本の教育制度の結果ですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?