銘仙とは!

現在、着用の是非を最も問われている着物の一つであることは間違いありません。確かにかわいらしく、ほかの着物にはない雰囲気を持っているという点では、着物離れから救ってくれる存在という店もあるでしょう。しかし、街へ出て着てみれば、まだまだ否定的な意見が多い。銘仙は家で着る物、という定義がまかり通っているようです。でも、外出着として着たいという人も多いことでしょう。それを考察するには、一寸難しいテーマが用いられているようです。

目次

1、銘仙の定義

2、銘仙はどこで着るのか

3、銘仙をうまく着るコツ

1、銘仙の定義
めいせんと読みます。現在、賛否両論、物議を醸している着物の代表選手と言っても過言ではありません。インターネットではあまり否定的な意見は少ないのですが、私の経験から言いますと、コンサートや食事会の中で、「銘仙なんか着ていやね!」とか、「人前で銘仙なんて常識がない子ね!」など、多くしかられました。逆に若い人の間では、「銘仙って、個性的でかわいいな、私もほしい。」という人たちが多くみられました。一体これはどういう事だろうと思って、呉服屋さんなどに聞いてみたのですが、ある詳しい方の話によりますと、こういう話が得られました。
銘仙の定義は平織りの絹織物という事になるのですが、規則正しいはずの折り目を故意にずらしてしまうことによって、ウールにあるようなぼかしと似たような柄配置をすることができるのが大きな特徴です。これをほぐし織と言います。また、ほかの着物にはない、大きな花柄や、吉祥文様などを大胆に配置し、とてもけばけばしい原色を使うことも、銘仙ならではの大きな特徴になりますね。
で、その銘仙ですが、銘仙という名称は明治21年に三越がつけたもので、それまでこの着物は目専と呼ばれていました。この言葉には、自分で着物を作る人という意味の言葉であり、詰まるところ、差別的に扱われていた貧しい人を皮肉った言葉だったようです。つまり、銘仙というものは、道路で物乞いをするような貧しい人たちの着物、という定義があります。
まあ、こういうルーツがありますので、明治時代に銘仙として商品化されても、「銘仙は家で着るもの」という定義が、まかり通るようになってしまったのでしょう。そういう訳で、「人前で着るな」というルールが自然に出てきたんでしょうね。事実、銘仙は、ほかの着物に比べると順位が低く、最下位という文献も数多くあります。「パジャマとおなじ」とか、「ただの部屋着くらいしか価値はない」と主張する人も数多くおり、外出には着ることはできないというのが一般的な意見のようです。

2、銘仙はどこで着るのか

しかし、そういう訳だったとしても、家で着るものにしてはちょっと派手すぎるような気がしてしまいます。それだったら、おしゃれして、外出に使いたいと思いたくなる気持ちもわからないわけではありません。そのくらい、かわいらしいものが多いですから。若い人が着ると確かに映えると思いますし。
例えば、ヨーロッパでは、ロマ族のファッションを取り入れた洋服も販売されていますし、ヒップホップのジャンルでは、貧しい黒人の恰好をするアーティストも多くいます。ですから、それと一緒だ、とおもえばいいのではないか?と思います。海外に行くと、異民族と同居している国家は多いですが、少数民族の作った民芸品なんかが、百貨店で販売されたりしていますよね。日本は単一民族の国家なので、どうしても、そういう事は慣れていないから、銘仙は家で着るものになってしまうんでしょうが、ちょっとこういう事を真似したらどうでしょうか。つまり、異民族の柄をちょっと取り入れた着物だよ、くらいに考え直してほしいなという事です。
現在、令和の時代になり、「多様化」を受け入れることが一つの課題として挙げられていますが、銘仙を着物として認めることも、その課題の達成として挙げられることでしょう。

3、銘仙をうまく着るコツ

少々脱線しました。話を銘仙に戻しましょう。
基本的に銘仙の着物は、他のリサイクル着物より小さいサイズであることが多いですね。まあ昔の人のサイズですからそれは仕方ありません。ですが、ちょっと伊達襟をたっぷり出してみたり、褄下に布を縫い付けて身幅を出してみたり、あるいはおは処理を諦めて対丈にしてみたり、いろんな工夫をして着用している人は多くいます。どうしてもだめな場合は、洋服の上に重ねて着るとか、道中着にリメイクしてみるとか。そうやって新しいファッションにしてしまう人も増えています。ですから、こういう動きを大切にしていくことが、銘仙の着物にとっても、うれしいことなんじゃないかな、と思います。
銘仙には半幅帯で十分だという人が多いですが、名古屋帯などを使ってもいいのではないかと思います。半幅帯ですと、着物の派手さに負けてしまうのではないかと思われるので。あるいはしゃれ帯を使ってもいいですね。いずれにしても、着こなすときに、やすっぽい印象を与えないことが、着こなすコツなんだと思います。

たぶん、お年を召した方には、まだまだ偏見の強い着物ではないかと思われます。ですが、着物が気軽に入手できるようになった以上、銘仙を差別的に扱うことはやめた方がいいのではないかと思います。ちょっと雰囲気が違うけれど、これもまた着物だよ。と優しく伝えてやることができたなら、銘仙だけではなく、多様化を受け入れるという課題も、達成できるのではないでしょうか。


拝読有難うございます。何かの参考にしてくだされば嬉しくもいます。