19日目 君は、今までどこにいたの

疲れている。精神的に。私は自分では嘔吐恐怖症だと思っているので、なおさら辛い。朝食も少ししか手をつけられなかった。胃瘻から入れる栄養剤300㎖もいつもよりゆっくり入れてもらう。栄養をとらないと、怪我も治らない。回復を妨げないでくれ、私の消化器官。

食後吐き気があったので、昼食は食事も栄養剤もスキップすることにした。

しかし、やはりやってきた、吐き気。我慢するのを諦めてオエオエしていたら、のどの奥に違和感が。

なにか ある。

とりたくて、その物体の端を指でつかみ、どうにかこうにか外に取り出した。正体はガーゼのようなもの。君は、どこから来たの?いつからいたの?

たまたま近くにいた看護師Nさんに目の前で起きたことを伝えると、でてきたガーゼをナースステーションに持ち帰って審議にかけてくれた。苦しみからの解放に立ち会ってくれるNさんは、幸運の看護師さんに思えた。

ガーゼ事件は謎だらけだった。いつどこで入ったものか。担当研修医さんが、まだ何か異物がお腹に入っていないか調べてみましょうか、と提案した。異物が、ここ最近の吐き気の原因ならば、解決する可能性があるなばと、胃カメラに同意した。(あとから、胃カメラの苦しさをネットで調べて、同意を即答したことを後悔した。)

消化器系の先生の話によると、ガーゼくらいならば胃で溶けてしまうはず。胃にあったとは考えにくい。怪我直後の鼻血をとめる時に鼻にガーゼをつめたのが怪しい。だからまずは、鼻から喉を調べてみましょう。ということで、気管支鏡検査をすることになった。胃カメラを回避できてほっとした。

検査室に移動する。座ったまま上を向き、鼻にすこし苦い麻酔ゼリーを数種類垂らし入れる。ごくんとせず、垂れ流しにするよう指示される。息を整える。そこに細長い管をするりと入れていく。モニターにピンク色をした私ののどが現れた。結果、異物も異常もない。「何もないねぇ」「胃カメラやってみますか!」とすすめられたが、私は怖くて首を横に振る。胃カメラは、ちょっと・・・。やめときます。(声を出せないので身振りで伝える)

病室に戻り、研修医さんと食事についてお話しをする。もともと食事に対して恐怖を覚えるシーンがあったりする。量が多いものを目の前に出されると怖気づく。気持ちの問題もあると思うけれど、少しずつ食べられるようになりたい。研修医さんは若くて笑顔が素敵な女性。大学時代の先輩に似ていた。これまでも、身体中の抜糸をしてくれたり、質問や要望にも丁寧にこたえてくれ、信頼している。話をしたことで、少し安心した。

そろそろご飯をおいしく食べてもいいんじゃないかな、私の身体よ。元気になるためにも。どうか、どうか。


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