31日目 おしゃべりは喉もと押さえて

「おはようございます」「変わりないですか」「しっかり指動かしてください」整形外科の先生約10名による朝の回診。いつもどおり10秒ほどで終わる。

昨日の夜、胃瘻の管を抜いた。穴からご飯粒でてくるかも、なんて先生に脅かされていたが、そんなことなくて安心する。救急科の朝の回診も3~6人程で来てくれた。胃瘻穴のガーゼを確認して、問題なしと宣告してくれる。新しい分厚いガーゼを貼りなおす。

その流れで、気管チューブ(スピーチカニューレ)どうしようか?という話になる。予定では骨盤の手術の有無次第で抜くか抜かないかを決めるときいているけれど・・・。「抜けるなら」と答えると「抜きましょう」と即決。(え、いいの?)

のどの穴にささっているチューブをキュンっと抜いてガーゼで蓋をする。ハイ、おしまい。尿管カテーテルの時といい、昨日の胃瘻チューブといい、気管チューブといい、抜くときはいつも一瞬だ。

女医さんによると「しばらく空気もれるから、声かすれるかも」とのこと。

念願の、のど、フリー。ハッピー!

劇的な変化の20分後、いつもどおりのリハビリ開始。言語聴覚療法士(ST)さんが来てくれて、パズルのようなテストで頭のチェックをする。複数の模様をみて、法則をみつけて空白を埋める。

お昼ご飯のあと、お隣ベッドの奥様からゆでたトウモロコシと干し芋、アイスの実をもらった。奥様はびわ収獲時に転落してしまったようだ。昨日ははすむかいのベッドの奥様からお菓子をいただいた。こちらの奥様はバイクでの事故とのこと。顔をあわせる時はいつも微笑みかけてくれる。私がこの病室に来た時にはすでにいらっしゃった。先輩だ。看護師さんと仲が良い。フレンドリーで、元気をもらう。

作業療法士(OT)さんが迎えに来てくれたので、車椅子に乗り換えリハビリテーションルームへ。今日は、スプリントをつくる。今のギプスよりも軽く、肘の動きは自由になり、自分で取り外しができるものだ。60℃くらいになるとフニャフニャになるプラスチックのような素材を、切ったりとかしたりして目の前でつくってくれる。点々と小さな穴が空いているのは変形しやすいようにするためだろうか。板上の素材を熱すると白から半透明に変わり、変形できるようになる。それを左腕にあてて形を作っていく。

スプリントには、手の甲側につける背側型と、手のひら側につける掌側型がある。手術した場所や金属プレートの向きによって医師からの指示が変わるらしく、私の場合は背側型だ。私は、明日から背側型スプリントユーザーになるのだ。このスプリントを固定するのは包帯ではなく、マジックテープ二本。これで右手で軽々取り外しができる。明日が楽しみだ。

↑ この装具とは 明日お別れするのだ

↑ 手首の手術痕 骨折した箇所に金属プレートを入れるために切ったもの

今朝スピーチカニューレを抜いたが、あとにのこる穴は、人にもよるけれどだいたい1,2週間かけてゆっくり塞がるらしい。胃瘻の穴は一日で塞がるのに。場所や大きさ、体質によっても変わるとのこと。

のどに穴が空いている状態で話をすると、どうなるか。ガーゼでふさいでいるとはいえ、そこから空気漏れがおきるので、話をするたびにガーゼがフカフカ動く。くしゃみをしようものなら、ガーゼがふっとぶ。面白いけど、そのたびガーゼが外れるのは困るので、しゃべる時はのどの穴を右手でおさえることにしよう。


20時半ごろ、久しぶりに口腔外科の先生がやってきた。口内をチェックする。来週、下の歯の歯茎を縫っている糸を抜いてくれることになった。いずれ溶ける糸とはいえ、2カ月ほどかかるらしいのだ。とっていいものはどんどんとってもらいたい。よろしくお願いします。

でもとりあえず嬉しかったのは、口腔外科の先生が私を見てすぐ、「前髪、切ったんですね」と言ってくれたこと。そのひとことが、なぜか、嬉しかった。




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