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ハマトンの幸福論

 ハマトンで有名なのが『知的生活』ですね。

 今回紹介するのは「幸福論」です。

 渡部昇一先生の訳です。

 フィリップ・ギルバート・ハマトンは、1834年にイギリスで生まれました。イギリスの最盛期を生きた人です。日本では、坂本龍馬が同じくらいに生まれていたので、明治維新の頃ですね。

 ハマトンは、はじめ画家を目指していたそうですが、美術雑誌の編集者になって大成功します。

 フランスの片田舎に住んで、偉人伝や随筆など数多くの著作を世に出しますが、主に、イギリスやアメリカで多く読まれたようです。

 日本でも明治の時代は教科書に使われていたようで、多くの学生たちに影響を与えていたんですね。

 全く忘れられていたのに、渡部昇一さんによって再ブレイクしました。

 渡部昇一さんも、ハマトンに影響を受けて、知的生活の方法を出版して大ベストセラーになりました。

 この「幸福論」は、ハマトンの遺作ですがとても素晴らしい本です。

 晩年、未完で死んでしまうのですが、妻が編纂し、世に出されることになりました。

 実はほとんど完成した文章を捨てて書き直したといいます。だから未完だったのです。

 それは何故か。

 ハマトンのひらめきがそうさせてしまいました。

 本を書いているとよくあるんですよね。

 書いているうちに、全く違う次元の発想が生まれるということが。

 ひらめきがくると、「おお!そういうことか!これは更にいい本になる!」と興奮するんです。

 きっと、ハマトンもそうだったにちがいありません。

 ではそのひらめきは何だったのでしょうか。

 それは、「積極的幸福と消極的幸福」です。

 この視点に従って話を展開することにこそ、心の幸福論が生まれると確信して、全部の書き直しをしたのだそうです。

「第3章 幸福の二面性」で、以下のように詳しく書かれています。

紹介いたしましょう。

 「積極的な幸福というのは、なにかをしたり、楽しんだりしている時に感ずる幸福で、とくに、めいめいが自分の基質に一番あったことを、したり楽しんだりしている時に味わう幸福です。
 生まれつき活発で、活動的な人が味わう幸福感であって、怠惰な人間や覇気のない人間は、多少の例外はあっても、めったに味わうことのない幸福感といえましょう。

 消極的な幸福というのは、他人の行為によって引き起こされた面倒事であれ、好ましからぬ状況によって引き起こされた面倒事であれ、ともかく、自分が厄介な面倒事に巻き込まれていないという幸福です。」

 ハマトンは、この積極的幸福と消極的幸福は、「人の性分と年齢によって、一人ひとり異なっている」といいます。

 気性が穏やかな人は、消極的幸福を求める傾向にあるけど、「精力的で血気盛んな人は、自分が単に厄介な目にあっていないということだけでは、決して満足することができない。たとえ、大きな災いがともなおうとも幸福を得るためには、喜んでその禍いに耐える」

と述べています。

 また「同一人物でも、一生を通して見ると、年令によって二つの心の持ち方が、交互に入れ替わって現れる」といいます。

 そういえば、僕も振り返ってみると、バリバリ仕事をしている時期と、穏やかに過ごす時期が交互にあったし、また、年々、一人の時間を大切にしてじっくりと考えたりしているから、一言で幸福と言っても、今と過去は違うし、もちろん、今と未来の自分が望む幸福は違うんだろうなと、この本を読んで感じました。

 自分にとって、消極的な幸福ってなんだろう、積極的な幸福ってなんだろうと考えるのもいいし、今自分はどっちの幸福を願っているのかを考えてみてもいいと思います。

 僕自身も、現在「幸福論」を執筆中ですが、ハマトンからの影響も大きいです。

 現在では、講談社学術文庫で購入することができます。

 僕が所有しているのは、1979年に出版されてハードカバーです。
 まだ古本で手に入るともいます。



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