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言葉のアパルトマン

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詩や散文、頭に浮かんだ言葉を書いています。
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記事一覧

三行詩:インソムニア

ユートピア シャングリラ アルカディア たどり着くのは無理だろうか 命の頁を途中で閉じてしまったら 消えてしまいたいと願う心の宿痾 周囲の視線はこの上なく激しいtorture 街が動き出す朝が近づいてきたら 重力とロープで私らしい最期の描写

三行詩:選挙

苦しむ人たちの怒りがこの上なく沸き上がりついに堤が切れた 何をしても変わらないから無駄だと諦めていた「放棄」が 健やかな未来を私たち自身で決めるための「蜂起」に変わる瞬間

三行詩:矩形の海

情報が溢れる溟海を漂い続け いつまでも除去される事のない機雷名「差別」 時が経っても人を傷つけ命を奪う

三行詩:臨終

病床に横たわる痩躯 もうすぐ空に消えるのがわかる この上なく透き通った明けの三日月

三行詩:経年

時の流れで色が深まり 傷もまた味わいとなる 革手帳のような人になりたい

三行詩:矛盾

効率良くやろうと考えすぎて時間を使ってしまう 執着を手放す事にいつの間にか執着している 自分らしく生きる事にこだわりすぎて己を見失う

三行詩:本

本を読むと心に水が湧き それが池に川に湖に 果てしなく広がる海になる 頁をめくるたびに心がほぐされ 水と空気が奥深くまで入ってくる 本とは私を豊かに育てるための耕耘機

刺繍/詩集

言葉という様々な色や形のビーズ 毎日の暮らしで見つけたものを そっと心の中にしまっておき ふとした時に糸を通してみる 並べる順番をあれこれ考えても また次の日にはやり直したくなる それを繰り返しているうちに わからなくなって千切ってしまう 散らばった飾り玉が偶然に重なって 今までとは違う色彩が生まれる その輝きが消えないうちに すぐにまた糸を通して形にする 悩みながら 誰かを想いながら 時に呪いながら これからも作っていく

三行詩:政治家

放縦と専横が交差する どす黒い点に存在する者 それは居丈高で厚顔無恥な政治家 誠実である、命や生活を大切にする、想像する力を持つ 言葉の重さを知り、人々の役に立つために正しく使う それができない人は政治をやってはいけない

三行詩:信念

凍えるような世界の中にいても 暖流が流れる島のように 小さな花を咲かせていたい

三行詩:嘘

嘘をつき続けるのは、靴の中に小石が入った感覚。 歩けないわけではないけれど、 たまに痛く、そしてずっと気になる。

三行詩:表面張力

若い頃は表面張力が強かったのか 己という器の限界より少しだけ無理をしても 決してこぼれなかったのに今はもう

三行詩:矯角殺牛

「あなたの"ため"に言っている」 その"ため"は"矯め"ではないか ただ自分の思い通りの形にしたいだけ

言葉のアパルトマン 2023-06

・砕けるほどに歯を食いしばって必死に生きてきた、そんな人の顔を見て醜悪だと笑い罵る者 ・ゆっくりと琥珀ができるようには待ってくれない今のこの世界 ・まっすぐに空に伸びるマストが、揺れる水面では蛇のようにうねっている。どこを見るかで感じ方がまるで違う ・人の欠点を探して餌にする、ネットの海でしか生きられない貧弱で醜悪な生物 ・死んで砂になって波打ち際で遊ぶあなたに近づきたい。足の指の間にとどまりたい ・傘がきかない。下から上に雨が降るようなこの時代では、今までの考えで