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イトー君

[2453文字] #小説 #短編

ぃと・・・
伊藤君?
伊藤君かな…?

ぁのォ~ っちょっと失礼しま・・
ぉぉおお~っ! 伊藤君じゃないか!!
やっぱ伊藤君だ!
そうだと思ったんだよ
こんな所で会うとはなぁ!
元気にしてたのか?
見た感じあんまり変わったように見えないが
・・ずいぶん苦労もしたみたいだなぁ
でもまぁまぁ元気そうで良かった!
ぁそうだ時間あるかい?
立ち話もなんだから
ちょっとそこらに寄って行かないか
昔みたいに飲ろうや な な
近所によく行く店があるんだ
大丈夫だろ? な な
さぁ行こ行こ!

え~っと生? 生でいい? あっそ
ちょっとお兄さん!
こっち とりあえず生中二つね
そ 二つ
急いでよ!
ははは 愛想ない店なんだけどさ
ここの焼き鳥はゼッピンなんだよ
あははは

しかしホントに久しぶりだよなぁ
今までどこ行ってたんだ君はぁ
懐かしいなぁ
オレか?
オレは平凡な人生さ
なんだ・・敬語なんか使ってぇ
相変わらず堅っくるしいなぁ伊藤君は
38年生まれだろ?
ぅんうん まぁ確かにオレの方が先輩だけどサ
もうこの歳になったら
1級ぐらいは先輩も後輩もないだろ
実はオレも早生まれの38年なんだわ
1年も違わないんだからさ
もぅ先輩はやめてくれ
ぁ~いいんだいいんだ
・・・え?
まぁ 今更名前じゃ呼びにくいわな
んじゃぁ~好きに呼んでくれたらいい
ぁああ気にしないよ ぅんうん・・
ぉぉお来た来た
ホント早かったね・・
さぁ何はともあれ先ずは乾杯だ
久々の再開を祝して
乾杯〜!

ックゥ〜!この一口目がたまんないね〜
ところで伊藤君
いつ振りだい?
え~っと
あれは僕らが確か
19歳の冬だったっんだから
え”~~~っ
30年前!!
・・・
ぁは はは 懐かしい筈だよなぁ
そうか
もうそんなに経っちゃったか・・
互いに歳取ったよなぁ

あの頃はさ
オレたちったら輝いてたよなぁ
あっ ぃやぃや
君はオレなんかと違って非常に優秀だったよね
いやいや謙遜なんかする必要はないんだよ
事実は事実として胸を張りゃいいんだ
大きな声じゃ言えないんだけどね
・・正直君の後に来た夏目君
ありゃひどかったよ~
え? ぁあ まぁ・・
そりゃ美味しい思いもさせてもらったけどさ
ジャパンマネーとか言われてね
調子こいちゃったんだな
ずいぶん金満な生活してたようでね
また趣味が悪いんだ・・
やれ高級外車だ やれ派手に海外旅行だ ってね
羽振りは良かったよォ
っていうか
良過ぎたんだなぁ
みんなもうずっとこのままだって
勘違いしちゃったんだよな
夢見たっ ・・て言うかな
夏目君は強がってただけだったんだよね
強がってる根拠が無かったんだよね
土地に手を出した辺りから
おかしくなって来ちゃってさ
あっちこっちにいい顔だけしちゃって
とうとうケツに火がついちゃったって訳だ
気の毒ッちゃあ気の毒だけど
ありゃ酷かった・・

あれ?
冷や奴 たのんだの伊藤君?
いいねぇ 気が合うねぇ
俺も奴は好きなんだよ
ちょっと貰っていい?
メインの焼き鳥もたのまないとな
お兄さん お兄さん!
ネギマね え~っと あとはカワ
2本ずつね 塩で
それから生中おかわり2つ
以上
またたのむから とりあえずね
またたのむから

しかし変わらないなぁ伊藤君は
こっちゃ苦労だらけで
コノザマだよ
なんとか食えてるけどさ
どうも危なかっしいね
ま オレだけなら反省も出来るけどさぁ
日本中がこのテイタラクだもん
反省のしようがないよな
知ってるかい?
アイツだよ アイツのせい
そう! 野口の野郎だよ
アイツにはホントがっかりだよ
アイツになってからさ
ろくでもねぇんだよな
全然ダメ!
まだ夏目の野郎の方がマシだったよ
野口はダメだ
いやいいんだいいんだ
ビールってのはキューっと飲むから
旨いんじゃないの
まだある?
んじゃオレだけ・・
お兄さん おにいさん!
生中ね
ひとつね
ぉお なんだこれ?
あそっか 焼き鳥たのんでたんだ
あははは
もう酔っちゃったかな
早! 
早っ!って最近の若けぇもんは言うよな
旨っ! とか凄っ!とかさ
野口も言うんだよ
あれっ!?とかヤベっ!!とか
ちょっと違う? 違った?
あは あはははは
っつうか
あれっ!?とかヤベっ!!って言いたいのは
こっちだっ!!
・・・
ま いいや

もぅね伊藤君のような実力者は
今後出ないのかなぁ
なんか伊藤君の時代はさぁ
先が明るかったよなぁ
やった分だけさ
やっただけの見返りがあったよ
未来があった
君はすごいヤツだったよな
いやすごいヤツなんだよ
何を照れる必要があるよ
本当のことだ
アリガトな
アリガト
ありがと・・・
え?もう帰っちゃうの
まだもうちょっといいじゃない
待ち合わせ?
そうか じゃあ仕方ないな
聖徳君と!
そうかまだ付き合いがあるんだねぇ
いいコンビだったもんね二人は
いやぁ彼も立派だったよ
なんせ彼の功績ったら・・・
え?
そう・・時間が無い
そうだよね
ん~でも…
また会えるよな
そうだFBとかやってる?
連絡先をさ・・
あ やってない…
あぁ 名刺でね
そりゃ間違いない
ぁどうもどうも
わたくし こういう者でございます
んじゃここに連絡するよ
また会ってくれるよね
またさ
あの頃のようにさ
楽しもう!
ね?
えっ!
払ってくれるの!?
いやいやいいよ
ここは先輩がさ・・
そぅお? なんか悪いね
じゃ今度はオレがおごっちゃうからさ
あぁオレはもうちょっと飲っていくから
ぃやぁその分は自分でバンバンしますよ
アハハハハ~
古いね 古っ! ってね
ぁ 行っちゃう?
そぅ行っちゃうか
そぅ・・
んじゃ またね
アリガトね~!
聖徳君にもヨロシクぅ~!
うん うん じゃあ・・
気を付けてねぇ~
またね~!!!
見捨てないでね~~!!!
オレも頑張るからさぁ~!!!