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胡桃
2024年3月21日 13:22
編みかけの毛糸の靴下をとりだしたつま先を残してぱったりやめている毛糸を触りたくなる温度があるようだある日毛糸に触らなくなり秋日和のある日もぞもぞ編みだす編めば手が覚えている 毛糸を編む夏の日がおだやかに身体にたまっているなんて素敵な時間 でもふと生産性のないことをしているようなもっとお金になることをしなさい誰かにいわれているような 毛糸を編む
2024年1月5日 20:40
毛糸を編む 編みかけの毛糸の靴下をとりだしたつま先を残してぱったりやめている毛糸を触りたくなる温度があるようだある日毛糸に触らなくなり秋日和のある日もぞもぞ編みだす編めば手が覚えている 毛糸を編む夏の日がおだやかに身体にたまっているなんて素敵な時間 でもふと生産性のないことをしているようなもっとお金になることをしなさい誰かにいわれているような
2023年4月18日 05:55
あかない饅頭屋 胡桃枇杷の木が枯れた饅頭屋の前に植えられた枇杷の木冬に小さな米粒のような花を咲かせる去年の夏から枇杷の葉が枯れだしたガラス戸にひかれた白いカーテンはあかない 店はときどきあいていたその間隔がとおくなる クリスマスにはケーキを売ったいかにも手作り風で笑ってしまうケーキなかに餡子がはいっているのではとどき
2023年1月24日 08:44
はじめてあった人にだれかに「よく似ている」と言われるその方の友人にその方の学校時代の先生に「よくある顔だから」と言葉を返す アイヌの女性のユーカラを聞きにいくとそのアイヌの方にわたしが「そっくり」と友人が言ったそうかわたしにはアイヌの血もはいっていたのか 前にテレビで中国雲南省の映像が流れたとき店屋の前に座るおじいさんは、山形の死んだ祖父だった「おじいさん、そこで生きていた
2023年1月24日 08:37
雨があがる丘のうえの畑にきてまわりの山や牧草地を見わたす「雨のあとは、みどりがきれいだな」とつぶやくいつも畑にすわって草をぬいている通りかかるとキュウリをもぎ、大根をぬいて「けっから」というばっちゃんが娘のとき友達と二人で町へいった遊びすぎて帰りが遅くなり山道は暗くなったまだ、道路などなかった大きな木の下で、友達とひとばんすごした歌をうたいながら、はげましあった娘の顔
2023年1月24日 08:35
粉に少しずつ水をしみこませしとねていくぱさぱさな粉が耳たぶぐらいの固さにまとまる この手はしとねることができる手にしかできないこと子のため孫のためしとねつづけた まっ白い粉がかんたんに手に入るいい時代になったね疎開したこの白い国東京にいた母は焼け死に父は南の島から帰らなかった そのまま白い国で畑を耕し牛を飼いお米をつくって暮らした食べ物をつくることに
2023年1月24日 08:31
古い曲がり屋のくらがりににらみをきかす神がいた竈の火の神台所の神様だ朝も暗いうちにおんなが竈に火をつける家族が起きる前から凍える土間にたつ米が少なければ芋を入れる芋もなければうすいうすいお粥生まれた子を流さなくてはいけなかったこれ以上飯食うものはいらないと大黒柱がいった竈に薪をくべながら女は泣いた竈神はむっと口をむすんで涙をこらえた竈神が口をへの字にして耐えているのは
2023年1月3日 08:28
栞 栞がなくなる韓国土産の美しい布地にちいさな銀色の玉をつけた栞。裂き織の端布でつくった栞。どこでもらったか四葉のクローバーの押し葉をはった栞。なぜかなくなる。本にはさまれたまま栞は姿を消す。気に入った頁にうもれている。栞がなくなるからきれいな絵葉書をふたつに折って本にはさむ。それさえも足りなくなる。あんなに葉書を折ったのにどこへ行ったんだ。栞とかくと、