フォローしませんか?
シェア
大通りには、水の中を歩くような重い足取りの人が何人もいる。 「あの人たちは何であんな歩…
「あっ、危ないよ!」 背後からネズ婆さんの呼ぶ声。僕の頭は勢いよく、開いたドアにぶつか…
実際には十秒も経っていなかったが、数十分揺れていたような感覚だった。幾度となく経験して…
「こんにちは」入江田と目が合ったからなのか、楽しくもなさそうな明るい声で、その女性は入江…
入江田は、一瞬何の話をしているのか分からなかったが、すぐにアンバーの事だと思い至った。…
マテオは自分の首の後を入江田にみせながら言った。そこには黒い筋のような血管が網目のよう…
入江田は、クアオルトの窓ガラスに目をやった。平面的な虚像にボコボコした山肌が映っていた。 「佐吉」 入江田は昨日の記憶を辿った。それは奇妙な遠近感のような気がした。実体のない時間が圧縮されていると言いかえる事もできる。ここが「何処」なのかわからなくなる感覚と同じだった。 「佐吉」 アンバーの声が、入江田の名前を二度呼んだ。彼女が移動する音を入江田は聞き逃さないようにしたが、振り向くと彼女はすぐそばに立っていた。 「神足通だよ。マテオ・クティもできるよ」 アンバーは入江
食堂にはマテオがいた。彼は、テーブルの上にトレイを置いて食事をしていた。入江田達が近づ…
「第二十五歩兵師団」男が口を開いた。 「今、何と言った?」 「イリエダと私が所属していた師…
「大丈夫です」と入江田は答えた。そして、彼女が自分から目を離さないことに彼は気がついた…
「あぁ。大丈夫です。少し休めば良くなると思います」 「それならいいんですけど。無理しない…
やはり何も起こらなかった。入江田が食堂に戻ると、すでに清掃員の姿はなく、食器類は全て片…
「あの、単刀直入に聞くんですけど」 「はい」 「入江田さんは、軍人さんですか?」 「えぇ。…
中に入っていたのは、一冊のノートと小さなペンライトだけだった。ノートの表紙には『日記』と書かれているだけで、表紙の隅っこに小さく日付が書かれているだけだった。入江田はページを開いていくと、そこにはこんな事が書かれていた。 九月八日(木) ここに来て三日目の夜になる。今日は妙なことがあった。俺が住んでいる部屋に、見知らぬ女が現れたのだ。そいつは白いTシャツを着ていて、顔は見えなかった。ただ長いブロンドの髪だけが印象的だった。彼女は、部屋の真ん中に立っていて「お前は誰だ?