ショート・ショート「ヤッカイくん」
おれは、とある実験室に来ていた。
しかし、しかしだ。多額の報酬とやらにまんまと話を乗せられてモニターになったのは、良かったものの…。
とほほほほほほ。
何でこんなことになっちゃったんだろ…。を~!
おれはその日もスマホを見ていた。
と言っても特別な用事があって見ていたわけではない。
大学生になったおれだったが、こんな御時勢だもんでオンライン授業と通学の半々な状況で思い描いていたキャンパスライフとやらには程遠い現実。
面白いわけがない現実を目の前にしていたのだが、それは別におれに限ったことではない。
と自分に言い聞かせつつもオンライン授業の合間にスマホを見ていたというわけ。
そんな時だ。スマホの画面にこんな文字がデカデカと踊っていた。
〝退屈なおうち時間ともオサラバ!おうちにいるだけで、た~っぷりのバイトになって何と多額の報酬を頂けちゃうんです!!ど~です?あなたもぜひ!〟
と、いかにも怪しい文言だとさすがのおれも判断したのだが、何のはずみか〝バイトに応募する〟というところをタップしまっていた。
すると、
〝ありがとうございま~す!それではあなたの元に一度だけお伺いさせて頂くので…〟というメッセージを見たのも束の間突然チャイムが鳴った。
「こんにちは!こんな時の大学生のあなたのためにお届けに参りました!」
と部屋をロックし忘れたのが、いけなかったのか配達員か営業マンらしき男がズカズカと入ってきて
「と言うのはですね!今回あるモニターになって頂きたくサンプルをお持ちしました!」
と、こっちの口をはさむ間もなくゼイゼイと汗をかいている男だったので、さすがにおれのほうも情にほだせれて水を一杯差し出すと
「ありがとうございます!遠慮なく頂きますので、それではお礼にコレを…」
と言ってソレを飲んだ瞬間…。
薬になってしまった。
それからというもの、そのまま、とある実験室で保管されている。
こんなものになったおれのせめてもの願いは
〝ヒトを助ける薬だと良いんだが…〟
〝いや…まさか?おれ自体、次のモニターが飲む薬になるんじゃないだろうな…!?〟
悪い予感は当たり、おれが薬として使われる時、それはまさしく次のターゲット…おっと、モニターに飲まされた。
そして、そのモニターの体の中で溶ける時こう思った。
〝薬にならないでくれよ…〟
しかし、悪循環は続くらしい。くそ…こんなにも実験して…み~んな薬にして…どうするつもり…。薄れゆく意識の中おれにできることは…もう…な~んにもなかった…!?
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