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SF小説「Tea-ZONE」(ティー・ゾーン)

私たちは訳あって別々の惑星に移り住むこととなった。嘆いていても仕方がないと思いつつ、ここまでの経緯経過を振り返ると後悔が先に立ってしまう。考えすぎてはイケナイ。前を見ないと…。


2☓☓☓年、私の父が開拓移民としてやってきた頃の惑星〝グリーン〟は、その名とは程遠いほど、見渡す限りの荒野だったという。その辺からの苦労は私が幼い頃に散々聞かされたが、その甲斐もあり、同じ開拓移民としてやってきた母と出会い娘である私と弟の二人の子宝に恵まれて、私たちの家族は出来あがっていった。


私が物心ついた頃の惑星〝グリーン〟は、ぽつぽつと緑が出来てきたが、まだいわゆるインフラも整っていなかったので、他の惑星へ〝ロケットバス〟で母と弟とで買い出しに行ったりしていたものだ。

そうそう、父が自家用の〝シャトル〟を買ってからは〝海の見える惑星〟へと連れていってくれた。そこには普段私たちの生活に欠かせない水が見渡す限りあったので私はそれだけで物凄く感激した。その時、弟も一緒にいたのだが、父に

「父ちゃん!水がこれだけあふれてて、もったいないよ!」

と、のたまい、しばらく家族の笑いの種となった。


そんな一見、ちょっとした平和な家族だったが、ある悲劇が起こった。私たちの惑星〝グリーン〟は前述の通り荒野の惑星だったが、今の今まで父の世代より前の世代の人たちの苦労があって緑化やインフラが進んだりして住み心地の良い惑星として発展したのだが、最近になり〝地下に莫大なエネルギー資源が眠っている〟という話が〝先進惑星〟の間で持ちきりとなり、その〝利権〟とやらが〝ケンカ〟の火種となったようだ。

そして、惑星〝グリーン〟はそのエネルギー資源を目当てに争う拠点となり、不法地帯と化した。


私たち家族は命からがら父のつてを頼り知人のいる他の惑星へと移住することになった。

しばらく、その知人の世話になっていたが、いつまでもそんな生活にも限界があると思い父は慣れない宮仕えをしてデスクワークや営業をして回って、なんとかなってきたが…。

それでも〝グリーン〟への想いは父は忘れがたいのだろう。時々ポツリと母や私に

「帰りてぇよなぁ」

と少し同意を求めるがごとく、つぶやいていた。当の私も〝グリーン〟の大学へ通っていたが、コチラの大学へ通学するようになり新しい友達も出来つつある。そういう私も〝グリーン〟での友人たちのことを考えると眠れない時がある。弟など余計にそう考えたのだろう。進学を控えた高校生だっただけに…。


そして、弟や私の将来について私たちはちっさな家族会議をすることとなった。結論を先に書いておこう。父と母はコチラの惑星に残り二人で過ごす。弟は将来ジャーナリストになって、いつか〝グリーン〟へと取材したいと言った。私はその弟の学費を少しでも楽にしてやりたいと思い就活していたが父に

「自分の本当にやりたいことをやれ!」

と言われ大学を看護関係のあるところへと移りたいと言った。それには勿論私のバイト代、父母の収入もあって初めてまた違う惑星へと移り住まなければいけないという条件付きだ。

しかし、冒頭にも書いた通り私は前を向いていきたい。

そして、私たち家族はひとつの約束をした。

「いつか、また一緒に住もうね」

と。

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