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ワクチン接種2回が50%超え。渡航・移動制限に緩和の兆し。 週刊インバウンドニュースマガジン9月2週号

1.渡航・行動制限に変化の兆し。ワクチン接種条件に政府が検討

緊急事態宣言が9月末まで延長され、旅行業界には引き続き厳しい状況が続いています。しかし、状況は停滞しつつも、着実に前進しています。今週はそんな兆しを感じさせるニュースをいくつかご紹介します。

入国時の規制が9月にも緩和されるかもしれません。

日本政府は現在入国者に課されている2週間の待機措置について、ワクチン接種を条件に10日間に緩和することを検討しています。

わずか4日とも言えますが、とても大きな一歩です。規制緩和は段階的に行われると想定されます。

こちらは国内の移動・経済活動について。読売新聞による9月8日の独自報道です。

政府は10月以降に国内の行動制限を段階的に緩和していく方針とのこと。その際はワクチン接種が条件となり、県をまたぐ移動も認められます。

その他の経済活動再開も視野に入っており、10月に実証実験、11月に本格的な緩和が行われる見込みです。

ワクチン接種も着実に進んでいます。西村経済産業相は12日に出演したTV番組にて、ワクチンを2回接種した方の数が、TV出演時点で既に国民の5割を超えていると述べました。

9月10日時点では、英国が64.2%、フランスが62.5%、ドイツが61.5%、米国は52.9%の割合とのことで、当初出遅れていた日本がここに来て欧米に迫る勢いで接種率を伸ばしています。※統計についての詳細は、参考ニュースをご覧ください。

まもなくアメリカの接種率は超える公算で、希望者への接種(2回目)は11月初めには完了する見込みです。

その後は、1. 3回目の接種を行っていくのか2. 希望者への接種のみで感染拡大を抑えられるか3. そうでない場合は希望しない方への接種をどう考えるかが、議論のポイントになってくるでしょう。

なお、政府はすでに2022年以降に使用するワクチンの確保にも動いています。

ここからは海外の状況を示すニュースを2つご紹介します。1つ目はアメリカのニュースです。

9月9日、バイデン大統領が感染抑制のための新たな政策を発表しました。

学校への対面授業支援、検査キットの普及などいくつかの政策が含まれていますが、注目は企業へのワクチン接種要請でしょう。

従業員100名以上の企業を対象に、従業員へのワクチン接種か、週1回の陰性証明書提出を求めます。要請に従わない雇用主に対しては罰則も設けられる予定で、実質的なワクチン接種義務化とも考えられます。

ワクチン接種が伸び悩むアメリカですが、今回の発表には、そのような状況への焦りも感じられます。かなり強制性のある政策ですが、アメリカの決断が日本を含むその他の国へ波及することはあるのでしょうか?

最後にヨーロッパです。

EUが9日、不要不急の渡航を認めるリストから6カ国を除外。その中に日本も含まれていました

実際に渡航を制限するかどうかはEU加盟国各自の判断となりますが、ヨーロッパからの渡航者受け入れは一歩遠のいた形です。

2.HISが第3四半期決算発表。赤字幅は332億円に拡大

2021年10月期 第3四半期 決算補足説明資料 (HIS)

9月10日、旅行会社大手のHISが2020年11月〜2021年7月期の決算を発表しました。

売上高は前年同期比77.4%減の907億円。連結純損益は332億円の赤字でした。

前年同期は166億円の赤字なので、さらに赤字幅を増やした形となります。昨年同様主力の海外旅行の業績悪化は続いており、さらに今夏は緊急事態宣言で国内旅行にも大きなブレーキが掛かっています。

2021年10月期の連結業績の見通しについては、先行きの不透明感から未定としています。

感染者の増加にも落ち着きが見え、前述のように情勢にも変化の兆しが現れ始めています。HISに限らず旅行業界はいずれも厳しい状況下にありますが、もうしばらく耐え抜いていきましょう。

3.訪日ラボがインバウンド事業者アンケート。GoTo再開希望80%超えも、準備済は33.9%

訪日ラボを運営する株式会社movが、自社メディアの読者向けに行ったアンケート結果を発表しました。

質問はGoToトラベル等政府施策の実施や、そのための課題に関する内容が中心です。

結果のダイジェストは以下のとおり。
 ・「GoTo」再開希望80.5%。うち7割が“年内“に実施を希望
 ・「GoTo」準備不足は全体の66.1%。課題は「口コミ対策」「リアルタイムの情報更新」に
 ・政府に求める3大要求は「消費喚起策」「支援金」「移動制限解除」
 ・社内のインバウンド推進への機運、昨年9月の調査より上昇

旅行業界関係者が多いであろう訪日ラボの読者アンケートですから、GoTo再開希望が大きいことは想像に難くありません。

注目は以下の2つの質問でしょう。
Q3. 今後GoToが再開した場合にそなえて、準備はできていますか?
Q4. 前回のGoToで直面した課題はなんですか?

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回答者の大半がGoToトラベル等の政府支援策実施を希望しているものの、実施された場合の準備はできていません。

また、実際昨年GoToトラベルが実施された際も、時期・範囲についての制度変更が直前に行われ、各事業者は対応に追われました。その際の混乱も回答内容に現れています。

先述のように、日本政府は段階的な制限解除に向けて動き出しています。どのような形になるのかは分かりませんが、何らかの支援も行われる可能性が高いと考えます。

制度が流動的に変化した場合でも対応できるよう、社内体制・商品設計・人材教育・情報発信等の準備を行っておくのが肝要でしょう。

4.多様な人材が活躍できる組織づくりとは?DMOの人材問題をディスカッションするトークセッションを公開

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Facebookグループ「今だからこそできるインバウンド観光対策」にて毎週水曜日に開催しているトークセッション。

その模様をMATCHAではYouTubeにアップしています。今回は先週9月8日(水曜日)に行われた「今、DMOに必要な組織づくりと採用活動」をご紹介します。

自走する観光地域を作っていくため、重要な役割を期待されているDMO

観光という総合産業を扱うだけに、DMOには様々なバックグラウンドを持つ方が集まります。だからこそユニークな組織が出来上がるわけですが、その分、組織づくりが大きな課題となります。

どのような人材をどのように採用すべきなのか、組織内でどのように人材を育成すべきなのか。スポーツ、スタートアップ、政府系の人材支援の経験を持つ田蔵大地氏をお迎えして、活発な議論を交わしています。

組織づくりで課題を感じている方に、ぜひご覧頂きたいセッションです。

映像は、上記の画像をクリックしていただくか、以下のリンクからご覧ください。

今、DMOに必要な組織づくりと採用活動 - 田蔵大地氏×村松知木氏×萩本良秀氏×青木優
https://youtu.be/yjpN7ZWFx5A

5.あとがき

高付加価値化」という言葉をここ1年でよく目にするようになりました。

既存の、または隠れた観光資源を商品化したり、より価値のある形に磨き上げることを指します(おそらく)。

このキーワードを知ってから、出張先や旅先で「この体験は安売りしすぎじゃないかな?」「この資源を高付加価値化させるならどうすればいいのかな?」と考えるようになりました。

例えば先日は青森県青森市に行く機会を頂いたのですが、駅前の温浴施設や市場で上記のようなことを考えました。

青森市の駅前にある「まちなか温泉」利用料450円東京ならば利用に2000円くらいかかりそうなスーパー銭湯です。

おなじく駅前にある「新鮮市場」は、築地のように小さな魚屋さんが立ち並んだ魚市場

浴場の方は、費用が安いからかたくさんお客は居るのですが、設備がところどころ老朽化しており、使えない蛇口などもありました。地元の方が利用されているので値上げはできないのだと思いますが、観光客向けの高級なプランを作ることで施設の維持管理にも役立つように思います。

新鮮市場は、歩いているだけで楽しいのですが、大きな魚を買うのは保存のことを考えたり、持ち運びのことを考えると旅行者は躊躇してしまいます。

それなら、自分で選んで買った魚を捌いて料理してくれるようなシェフサービスを使えば、課題の解決だけでなく、体験コンテンツに昇華できそうです。

どちらも素人の的外れな思いつきだとは思いますが、このように考えるテーマがあると、ただの出張ももっと楽しくなりますね。

ぜひ皆様も、知らない土地に行くときは「高付加価値化」という観点で地域を見て回ってみてください。きっと観光マーケティングのよい練習になると思います。

今週もお読みいただきありがとうございました。

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