彼と初めて出会ったのは、私が年少の頃。

地元のローカルファミレスチェーン店、ジョイフルのドリンクバーコーナーに彼は居た。

「マウンテンデュー」という不思議な名前、緑を基調としたかっこいいデザイン、そして爽やかな飲み口と甘さ……。

当時、ドリンクバーにある全てを混ぜてニコニコしている程度のクソガキだった私でも、そうした彼の存在がとても印象的だったことを覚えている。

しかし、いつの間にか彼はドリンクバーのラインナップから忽然と姿を消していた。ネットで調べた感じだと、どうやら2010年前後にはジョイフルでの取り扱いが無くなってしまったらしい。

ジョイフルでの戯れ以降、マウンテンデューを飲む機会は数年以上無かったと思う。無理もない、ドリンクバーのラインナップから消滅しただけでなく、彼は「自販機限定」という謎の鎖に縛り付けられ、田舎住みの少年にとってはなかなかお目にかかれない存在となっていたのだった。

高校時代のある日。偶然、地元の自販機にて彼と再会することができた。

懐かしさから購入した久しぶりのマウンテンデュー。

うまい。

しっかりと甘いが、ライム系のフレーバーでコーラほどベタつくことなく爽やかだ。ジョイフルで出会った時は全てのドリンクを調合するのに夢中で気がつかなかったが、こんなに美味しい清涼飲料水だったとは。

幸せを感じながら、マウンテンデューの現状について調べる。

調べていくうちに、私は怒りに震えていることに気がついた。

自販機限定？350ml缶のみ？とっくの昔にドリンクバーから消滅？

こんなに美味しいのに。

許せん。

俺に、マウンテンデューを飲ませろ。

日本でマウンテンデューの商品展開が積極的になされていないという現状に、私は憤慨したのである。

自販機限定。そんな鎖に縛り付けて、彼をどうしようというのか。ラインナップも350ml缶のみというのも馬鹿げている。もっと飲ませろ。1Lペットで出せとは言わない、500ml缶でいいから出してくれ。

このしょっぱい商品展開のままではいつのまにか終売していた、なんて未来も遠くないのではないか。

そもそも、何故こんなにも日本で人気がないのか。私には理解不能だ。

コーラという飲料は明らかに過大評価なように思える。コーラ好きを公言する人間に私は今までに1人しか出会ったことがなく、むしろ周りの人間はコーラに対して苦手意識を持つ人が大半だ。

もしかすると、マウンテンデューという存在はコーラ党にとって邪魔な存在なのではないか。何か、陰謀のようなものを感じずにはいられない。

まあ、コーラも美味しいけど。

ちなみにマウンテンデューのカフェインの含有量は100mlあたり20mg。これって結構すごいことだ。

少し調べてみると、コカコーラは100mlあたり8mg、モンスターエナジー緑缶は100mlあたり40mgのカフェインが入っているらしい。これらと比較してみると、マウンテンデューにはエナジードリンクとしての素質があることが伺える。500ml飲めばモンエナ緑缶355mlといい勝負ができるのだから、コスパの面でも互角と言えるだろう。

こうした点も考慮すると、近年のエナジー系飲料ブームに乗っかって、マウンテンデューが再評価される日も近いのではないか。

2021年現在。私はSUNTORY系列自販機の側で住居を借りて生活している。もちろん、マウンテンデューがそこにいる。

（左：マウンテンデュー　右：筆者）

amazonでまとめ買いはしない。何故ならば、あればあるだけ飲んでしまう性格である筆者はおそらく秒で糖尿病患者になってしまうからだ。

自販機の定価でちまちま買う。これが私にとってのささやかな幸せ、そしてマウンテンデューへの支援。

今現在、国内では聖火リレーが行われているらしい。そんなもん、クソどうでもいい。

マウンテンデューの火を絶やしてはならない。絶対に。

余談

どうやら聞くところによると、コストコにはフードコート内にドリンクバーがあるらしく、そのラインナップにマウンテンデューがあるらしい。なんてこった。とっくの昔にジョイフルでの取り扱いが無くなり、無限にマウンテンデューが飲めるスポットは滅びたと思っていたのだが……。

情勢が落ち着いたら、苦手としている自動車の運転、また異常に高い年会費も甘んじて受け入れ、コストコへとレンタカーを走らせる所存である。