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ティム・バートン「エド・ウッド('94米)」

「史上最低の映画王」と言えば、メジャーに進出したジョン・ウォーターズではなくエド・ウッドでしょう。80年代のカルト映画ブームの時は、レンタルビデオ店にエド・ウッドの「外宇宙からの第九計画」や「死霊の盆踊り」などが並んで人気を博していました。

誰がどう見ても超低予算で脚本も撮影もいい加減な映画が、「カルト」という言葉を冠すれば何故か売れてしまった良き時代があったのです。

数あるC級映画の中でも、エド・ウッドの存在感は群を抜いていて、「どうしてここまで酷い映画を作れたんだ?」「こんなに酷いのに、どうして映画館で公開できたんだ?」と不思議に思うほどです。エド・ウッドには「映画の才能はゼロだが映画を作る才能だけはあった」としか言いようがありません。

作品が酷すぎて歴史に名を残したエド・ウッドの生涯を、ティム・バートンが「愛を込めて」映画化しましたが、この企画は最初、ジョン・ウォーターズにオファーされました。しかしウォーターズは「せっかくオレが努力してメジャー進出を果たしたのに、また振り出しに戻れというのか!」と激怒して監督を断ったそうですが、その尻の穴の小ささにウォーターズにはガッカリしました。

この映画の見どころは、50年代の超低予算映画をハリウッドの最新の技術で再現したところです。あそこまでの酷い画面を、大金をかけて忠実に再現したのには感動しました。

映画からはエド・ウッドの、誰にも負けない映画愛と情熱がこれでもかと迸っていますが、なんでこんなに才能がないのか? と呆れるところも含めてこの映画にはティム・バートンの愛情が迸っています。

ところでチャップリンの晩年の作に「ニューヨークの王様」がありますが、ここでニューヨークの町の映画館に入った王様が、「男か女か?」というトランスジェンダーをテーマにした映画を観て呆れ返るシーンがあるのですが、製作時期から考えて、これは間違いなくエド・ウッドの「グレンとグレンダ」のパロディだと思います。チャップリンはたまたま「グレンとグレンダ」を観て呆れ返ったのだと思いますが、映画史上最高の映画監督が、映画史上最低の映画監督の作品を作中に出すのはかなり面白かったです。

映画にはチャップリンの逸話は登場せず、代わりに映画作りに悩んだエド・ウッドが、ふと立ち寄った酒場でオーソン・ウェルズに遭遇して「自分の信念を貫け」と励まされる場面があります。

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