２０２２年７月にイギリスのケンブリッジに渡り、賃貸のアパートを見つけて８月から住んでいたのですが、大家さんが（なぜか）私たちが住んでいる物件を売却することを決断し、そして新しく購入することにした人がそこに住む決断をしてしまったため、私たちは今住んでいる場所から引っ越さなくてはならなくなってしまいました。

この話をすると、みんな「それはとんだ災難だね」というリアクションをします。ケンブリッジの家探しはまさに災難であることは、皆の統一見解であるように思えます。その理由は、まず恐ろしいほどの物件の少なさ。ケンブリッジは自転車でどこにでも行けてしまうような小さな街ですので、賃貸に出される物件の数も必然的に限られます。次に借りようとする人の多さ。大学に関係する学生、ポスドク、訪問研究者に加え、ケンブリッジはシリコンフェンと言われるように IT/バイオ系の会社が数多く存在しており、そこで働く従業員が（常に）よりよい家を探しています。また、ロンドンの家賃の高さゆえに、また、自然や子育てしやすい環境を求めて、ロンドンに住むことを断念しケンブリッジの駅周辺に住み、そこから電車でロンドンに通うことを決めた人もいます。

そういうわけで、需要と供給のバランスがまったく取れておらず、賃貸に出される物件はとても早いスピードで無くなってしまいます。物件の告知が出て、２−３日後に内見、そして２−３日後にはもう借り手が決定、というようなタイミングです。他の物件をと比べてここにしようかな、あそこがいいかな、などと悩んでいる余裕は全くありません。とりあえず内見に申し込んで、とりあえず内見をして、とりあえずアプリケーションを出す、ということになります。ですが、アプリケーションはほぼ通りません。アプリケーションを出したとしても、大抵の場合、大家さんは別の借り手を選んでしまいます。一つの物件に対してアプリケーションは少なくとも数通は届くので、私が大家さんでも、「去年イギリスにやってきた外国人ファミリーに物件を貸すぐらいならば、イギリス人に貸しておいたほうが何かと無難かな」と考えると思います。去年やってきたポッと出の外国人ファミリーがアパートを借りるのには（目に見えない）相当なハードルがあるのかなと思います。そして、通らないアプリケーションに個人情報をたくさん乗せなければなりません。家族構成、連絡先、勤務先、年収、etc. もはや私たちの個人情報はケンブリッジでは漏れに漏れまくっていると思います。とても残念ですが。中には内見のアポイントメントを取る段階でこれらの情報を要求してくる会社もあります。

そんなこんなで、５月からアパート探しをしており、ビューイングも6ー7件くらい行きアプリケーションも出しているのですが、全くヒットしません。一つアプリケーションが通った物件もあったのですが、街中から離れていることと、家賃の割にあまりに部屋が狭かったので見送ることにしました。果たして住むところは見つかるのでしょうか・・・

追記
約30件以上の問い合わせ、20件以上のビューイングを得て、やっと住むところを見つけることができました。予算を200ポンド上げ、候補となるエリアも拡大し、かつ食洗機もついていない家ですが、それでもまあ許容範囲とします。２ベッドルームで探していたけれど、３ベッドルームにありつくことができました。来週、引っ越します。果たして・・・

学んだこと
・メールより電話
最初は Rightmove で物件を探し、よさそうなところに viewing 希望のメールを出していたのですが、エージェントによって電話をかけてきてくれるところ、完全スルーのところなど、対応にばらつきがあることがわかりました。希望する物件を絶対に viewing したいのならば、エージェントに即電話しましょう。英語で電話をかけるのはちょっと不安・・・とか言ってる場合じゃないです。慣れます。

・Rightmoveが全てではない
エージェントによっては、Rightmove に出していない物件もあったりします。もしくは、Rightmove に出す前に、自分達の顧客リストに情報を流し、少ししてからrightmove に出す、というようなことをしているエージェントもあります。ですので、よさそうなエージェントに問い合わせたりして rightmove よりも早く情報を得るようにすることは、する価値があると思います。

・viewing を viewing と思うな
ビューイングにアテンドしてくれるエージェントの人は、その物件についてほとんど知識がない、と思って間違いないです。最初の方は、（日本のノリで）この窓はどっちの方角を向いてるの？などと聞いていましたが、答えが100%返ってこないということに途中から気づきました。そもそも、その物件について詳しく知ろうと思っても時間の無駄です。詳しく知って好きになったところで、その物件に入れる保証はどこにもないのですから。むしろ、テナントに選ばれるまでにしなければならない、一種の通過儀礼だと考えましょう。入れる保証もないのに、平日に時間を見つけてビューイングに行く、気に入った物件に個人情報のたくさん入ったアプリケーションを送る。そしてその後一切連絡が無い。あったとしても、「ランドロードが別の人に決めてしまいました」、というお祈りメール。これが普通です。

・子連れはつらい
子供 NG という理由で viewing にすら進めない物件がいくつかありました。日本で子連れで物件探しをしたことがなかったので日本の常識がわからないのですが、ちびっこNGというこんなに大家さんがいるんだな、というのは少し驚きでした。大抵、viewing の予約をする段階で子供の有無とペットの有無を確認されます。"Do you have children or pets?" という質問を１回されたことがあります。pet を我が子のように可愛がる国だったらOKな表現なのでしょうか。私なんかは、children を pets と同様に扱わないでほしい・・・と少し悲しくなってしまいました。

・Trumpington は人気
同じ金額の家賃を払うとしても、Trumpington は Cambridge の街中およびその周辺に比べて、広めで新しめの物件が多くあります。私たちも、そこがいいなと思っていたのですが、物件の競争がとても激しく、アプリケーションを出しても選ばれることは最後までありませんでした。私たちが選ばれなかったとある物件では、１５件のアプリケーションが届いた、とエージェントから教えてもらいました。最初の方は、なんでこんなにも選ばれないんだろう、と思っていましたが、大家さんが１５件のアプリケーションの中から選ぶとなれば、自分達が選ばれなかったのも納得がいきました。

・生産性は全くない
新しい引越先を見つけるまでに、とても多くの時間を捨てることになります。Rightmove でよさそうな物件を吟味し、電話をかけてビューイングの予約を取り、その時間に仕事を休んでビューイングに行き、そしてアプリケーションに毎回個人情報をたっぷり記入し、それを送る。そして、アプリケーションは選ばれることなく、振り出しに戻る。このプロセスの連続は、子供が生まれてからただでさえ自分達の時間が少なくなっている私たちにとって、正直こたえました。仕事もやらないといけないし、他のことにも時間を使いたい。夏の間に１週間の休みを取って旅行にも行きたかったのですが、全てこの不毛なプロセスに時間を割くことになってしまいました。

戦績（随時更新）：

1. Fowler Avenue, Trumpington

2. Ainsworth Street Cambridge

3. Coldhams Lane

4. Victoria Road

5. Cromwell Road: 

6. Cambridge Road の家: 内見を申し込んだけど反応なし

7. Whittle Avenue: 内見を申し込んだけど、6ヶ月間しか借りることができない、とのこと。なので見送り。

8. Hampden Gardens: 木曜日に内見に行った。毎回ベビーカーを２階まで持ってあがらないと行けないので厳しい。今回は見送り。

9. Albert Street の家: 内見希望メールを出したところ翌日には借り手が決まってしまいました、とのこと。

10. Newmarket Road にあるアパート: 土曜に内見に行く。ちょっと高いかな・・・。内見に行ったところ、綺麗で気にいったので内見の１５分後にアプリケーションを送りたいというメールを送信したところ、もう借り手が決まりました、との返信。じゃあいったいあの内見はなんだったんだという気持ち。時間と手間を返してほしい。こんな無茶苦茶なことが許される街、それがケンブリッジ。

11. Scholars walk にあるアパート: 次の日には "Let Agreed" になっていた。広告が出る前から借り手が決まっていたのでは・・・

12. Spring Drive, Trumpington にあるアパート: 内見希望メールを送ったところビデオが送られてきた。再度内見希望メールを返信。翌日、内見は全て埋まってしまいましたとのメール。なんなん・・・

13. Glenalmond Avenue にあるアパート：内見希望メールを送ったが、内見の予約は全て埋まってしまいました、とのこと。

14. Bishops court にあるアパート：内見希望メールを送ったところまたビデオが送られてきた。即内見希望メールを返信。

etc. ..