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011.『髪の毛コンプレックス』

ーーゲスト紹介ーー

坂本洋展(さかもとひろのぶ)
琉球大学。政治国際学を学んでいる。熊本県出身。2016年に起きた熊本での震災後、1年半休学し、ボランティアとして復興に努めた。被災地ではおもに地域の人々の話を聞く活動を行い、その経験から現在は「きく」ことについて勉強中。

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どんなコンプレックスだった?

物心ついてからずっと自分の髪が嫌いなんですよ、ぼく。直毛で剛毛で、人生で一度も納得のいく髪型になったことがなくて。高校生になると、みんなワックスを使う人が増えるじゃないですか。それを見ながら、みんなキマってていいなと羨ましく思ってました。ぼくはワックスを使わなくて良いように常に短く刈り込んでいたので、よく「角刈り」と言われてました。

話すのが下手とか顔とか、自分の嫌な部分はたくさんあるんですが、一番ぼくを形作ってるのは髪型だと思ってます。髪の毛への感情が自分に抱く感情になっているというか。「今日も納得のいく髪型にならないな」と思うことが、自分そのものを否定するような感覚なんですよね。自分は今日もダメだな、というような。

どうやって乗り越えた?

ぼく、熊本でボランティアをやっていたことがありまして。そこには髪が長い男性がけっこういました。だから、ふだん外出するときはとても気にする服装も髪型も、そこでは気にする余裕も必要もなくて。だんだんと髪を伸ばすハードルが下がってきたときに、美容師のボランティアの方が被災地にいらっしゃったんです。髪の毛のことを相談したところ「伸ばしてみたら?」という話になりまして、その方に切ってもらうのを最後に伸ばし始めることにしました。

最初は「邪魔だな」と思いながら、前髪をピンで留めたり帽子をかぶって中にしまったりしてましたが、伸びてくるとだんだんと心境の変化がありました。髪が長いと、風呂上がりに乾かすとき手つきが丁寧になったんですよ。がーっと頭をかきながら乾かすとボサボサになるので、頭を倒して髪をなでながら乾かす感じで。そうするとなんだか、髪に愛着がわいてきたんです。もともと長い髪の毛を触るのが好きだからなのもあるでしょうね。その後、だんだんとトリートメントなどの髪のケアをする時間を取るようになりまして。その結果、自分の髪を良しと認められるようになったのかなと思いますね。

とはいえ自分の髪型は、形としては気に入ってないです。でも結ぶだけでいいから楽だし、人に覚えてもらいやすいし、「清潔感がない」とは言われたことがないので、前まではどこに行くにも気にしてた髪が、今は気にならなくなったんだと思います。

今、自分の髪の毛に対してどう思いますか?

写真では伝わらないと思いますが、ちょっと上まで刈り上げすぎてるかなと思いますね(笑)あと好きか嫌いかで言えば、好き、かなと。あ、でも好き嫌いっていうよりは、たとえば朝、髪をセットしたとき「今日の髪型は比較的いい感じ」と感じてても、外に出て誰かと比べて「あの人の髪型似合ってていいなー。それに比べて自分は・・・」と思うことってあるじゃないですか。そう思うことが、ぼくはなくなったので、自分の髪の毛に対するコンプレックス的な要素が消えたんだろうなと感じてます。

最後に、同じコンプレックスを抱える方に向けてメッセージをお願いします。

ぼくは髪を伸ばしてコンプレックスを乗り越えた人なので、そういうメッセージをお伝えしますね。ぼくも髪についてはずいぶん悩みまして、ワックスをつけてみたりツーブロックにしてみたりと、チャレンジをしてみたことがあります。でもちょっとしたことでは解決に向かわないといいますか、深く根付いたコンプレックスを拭うことは難しいです。だからどこかのタイミングで、思い切って勇気のいるチャレンジをしてみてほしいなと思います。

とくに髪を長くするような、がっつり容姿を変えるときの心の負担は大きいですし、戸惑うことも多いです。でも髪を伸ばすと、今までと違う新しい自分に日々出会います。その過程で人がその姿に反応して、それに対して今までと違う反応をする自分もいます。そうすると、いろんな側面から自分を見れる楽しみができるんです。

もちろん容姿を変えると態度を変える人もいますが、多くの人は愛して受け止めてくれるはずです。むしろそこで態度を変える人との縁はすぐ切れるものだと思います。だから自分に嫌な部分があって、なんとかしたいという気持ちがあるなら、やけくそ精神をもってチャレンジしてみることをおすすめします。あ、でも『変わらなきゃいけない』なんてことはないので、そこは強くお伝えしておきますね。

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