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園子温監督の新作「エッシャー通りの赤いポスト」の胸震える予告編

アクターズ・ヴィジョン代表のマツガエです。

僕は著名映画監督に無名俳優を出会わせるワークショップを2005年からやっているから16年もやっていることになるんですが、最初っから「無名俳優を抜擢する場所を作る」なんて高尚な夢を持ってたわけじゃありません。自分自身が「脚本家として何とかなるほう」が優先だったし、他人の夢を応援するヒマなんてないと思っていたし、僕は銀行に勤めていた時間が6年もあってこの世界に入ったのが遅かったから焦っていたし、他人どころじゃなかった。

2003年に那須博之監督に出会って師と呼べる人が現れたと思いました。那須さんのことが大好きになり、もはや自分の夢なんてどうでもよくなって那須さんの映画作りに力を尽くせることが喜びでした。だから演劇作品を作るのも那須さんに見せるためで、だから那須さんが癌で亡くなった2005年、僕は自分が誰のために何をすればいいか分からなくなってしまった。そんなときに、プロデューサーの木村俊樹さんが「ワークショップでもやれば?」と言ってくれて、はじめたのがこのワークショップでした。

とはいえ、長く続けていれば人脈は広がるし、僕のワークショップに集まってくれる売れない俳優たちにもいつしか情が湧く。俳優たちの夢や人生をサポートしてやりたいと思うようになる。それも、はじめは何をどうすればいいかわからなかったが、試行錯誤を重ねるうちに、ちょっとづつ、俳優が実力を伸ばしたり、魅力を伸ばしたり、頭角を現すやり方もわかってきて、力を貸すことが出来てきて、打率も上がってきて、気が付いたら、自分の夢を追うのと同様に、他人=俳優たちの夢を応援するのも、面白いと思える自分になっていた、というわけです。

というか、そもそもプロデューサーというのは「監督や俳優たちの夢を実現するために金を集めてくる」という変な職業で、いやいやプロデューサーは「金儲け」のためにやってるでしょと思われるかもしれないが、日本で本当に金を儲けしたいなら映画なんか作るより、もっと別のことをしたほうがいいわけで、だから日本においては金を儲けるために映画を作っているプロデューサが本気でいるとは思えない。他人の夢の実現のために金を持ってこれる奇特な人。それが日本にいる映画プロデューサーな気がする。それは言い過ぎかもしれないが映画芸術を成立させることに金儲け以上の思いを持っていなければ続けられない職業に違いない。

アクターズ・ヴィジョンで最初に作った映画「空の瞳とカタツムリ」はいろんな意味で可哀そうな映画であるが、僕はこれを愛す。いろんなことがバラバラだった。しかし、確実に俳優たちは輝いているし、言葉は光っているし、俳優たちの真実を引き出す斉藤久志監督の腕は優れている。「愛し合う二人はセックスをするのが当たり前」という観念に疑問を投げかける。これまでにない映画であるが、そう理解されずに終わった。しかし、ワークショップから主演に抜擢された縄田カノン中神円藤原隆介はみなこれ以上ない美しさで映画の中に残っている。

アクターズ・ヴィジョン第2作の映画「ミセス・ノイズィ」はわかりやすく、意図せずにヒットした。天野千尋監督の明るさが一番重要なポイントだろう。彼女の明るさなくしてこの映画はない。かねてより気になっていた俳優、大高洋子を世に出せたことが嬉しい。

そして、ついにアクターズ・ヴィジョン第3作。

園子温監督によって作られた映画「エッシャー通りの赤いポスト」が2021年12月25日より、渋谷ユーロスペースほかで全国公開となる。

まずは予告編が出来上がったので見てほしい。

現代の人間は「体制」や「大人の都合」や「矛盾」と折り合いをつけ、長いものに巻かれていくことが上手になってきている。反論したり、抵抗するよりも、この歪んだシステムのなかで、個別にうまくやって方が楽だし、痛みも少ない。だが、そう人々が思うから、歪んだシステムは変わらずに温存され、弱い者たちを傷つけ続ける。唯一の平和的方法である選挙でさえも何も変わらずに、腐敗した世界は保たれる。

この悪しき流れを食い止めるには「立ち上がる」しかないのだ。立ち上がり、連帯し、爆破するしかない。この映画はそれを描いている。

世界の悪しき流れに抵抗するレジスタンス。それがこの映画である。

この映画で胸躍らせることができたなら、レジスタンスの資格は十分だ。ともに立ち上がろう。世界をあきらめるにはまだ早すぎる。まだ我々にはやれることがある!!!

「エッシャー通りの赤いポスト」上映劇場

渋谷・ユーロスペース  12月25日(土)から
名古屋・シネマテーク  近日
十三・第七藝術劇場   12月25日(土)から
アップリンク京都    12月25日(土)から
シネマ尾道       近日
kino cinéma天神    12月25日(土)から

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